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山本美智子●文 Text by Michiko Yamamoto
ラファ・ウエルタ●撮影 photo by Rafa Huerta

第44号(2008年6月6日)【スペイン】レアル&バルサの補強と会長選挙〜ユーロ2008どころではない!?

今週末からユーロが開幕する。が、相変わらず、スペインのスポーツ紙の一面は、代表で飾られることがない。国の体質というのは、一朝一夕に変わらないものである。

では、何が一面を飾っているのかといえば、相変わらず、レアル・マドリードとバルセロナだ。話題の方向性は見事に異なるが。

マドリード発の新聞は、レアル・マドリードのクリスティアーノ・ロナウド獲得について、マンチェスター・ユナイテッド(マンU)との争いを思い切りあおっている。その煽り方といったら、尋常ではない。

ある日は、C・ロナウド本人が、「自分の将来は後、48時間くらいで決まるだろう」と発言したことが一面となり、またある日は、C・ロナウドの家族を引っ張り出し、レアル・マドリードのユニフォームを手にしている写真を掲載し、「息子がマドリードでプレイしているところを見たいわ」と言っているお母さんのコメントを載せる。また、ある日はポルトガル代表監督、スコラーリが「マドリードに行くべきだ。こういったチャンスは、一度は訪れるが二度は訪れない」と移籍を勧めたという記事が一面に来る。

こういったマドリードの攻勢に怒髪天を突く状態なのが、マンUサイドだ。ファーガーソン監督に至っては、怒りに血が沸騰し、ただでさえ、赤い頬を更に赤くしているに違いない。FIFAにレアル・マドリードを訴えるだけでは飽き足らず、マンUのオーナーとも話をつけ、C・ロナウドの選手生命がだめになったところで、レアルにだけは意地でも売りつけない、という約束を取り付けた、と言われている。

もともと、移籍というのは、まず、クラブ間の合意があり、それからクラブ側が所有選手及び代理人に意向を聞き、選手側にもその意思があれば、そこで初めて交渉が発生する、というのが紳士協定としてある。ところが、レアルサイドはマンUと話す前に、すでにロナウドと話している。

もちろん、レアル側がその違法行為を認めるはずもないが、ベッカムをマンUから獲得した時も、古くはフィーゴをバルセロナから獲得した時も、同じ手を使っているので、仏の顔も三度まで。いまさら、レアルのご託を信じるものはいない。

マンU側は、優柔不断な態度を取っているC・ロナウド自身に対しても怒っており、ファーガーソン監督は「レアル・マドリードでプレイする前に、観客席に座らせてやる」と発言。要するに、クラブ側は、いくらスター選手といえども、売り出さないで、ついでにベンチにも入れてやらない権利があるんだ、ざまあみろ、と脅しているのである。

バルセロナもC・ロナウド獲得の意志があるという報道が流れ始めた。その背景には選挙戦が絡んでいる。

バルセロナは、ラポルタ会長リコール騒ぎが起きているのだ。クラブの成績不振に怒ったソシオ(会員)が立ち上がり、リコールの手続きをとったところ、その手続きを始めるのに必要な最小限のソシオのサインが、簡単に集まってしまった。というわけで、ここから手続きがスタートした。

現在は、そのサインが法的に合法かどうかのチェックを行なっている最中だ。それが終わったら、まず、再選挙をするかどうかの投票がソシオ間で行なわれ、可決されなければならないが、条件として、ソシオ全体の10%以上が投票する必要がある。これらの条件が満たされたところで、初めて会長及び幹部が解散し、再選挙となる。

その間、クラブは選手補強の獲得もできないし、逆に手持ちの選手を売ることもできない。だからといって、移籍期間は決まっている。つまり、思い切り、来季の選手構想に響くというわけだ。

ラポルタ会長が辞任に追い込まれた場合、ラポルタ陣営の中から、現在、副会長のフェラン・ソリアーノが出馬する予定だ。その対抗馬に立候補する予定なのが、ラポルタ会長が追い出した元副会長サンドロ・ロセル。このサンドロ・ロセル、もともと、スポーツメーカー畑で、彼の力でロナウジーニョ、デコ、マルケス、ベレッチ、エジミウソンといった一連の選手を連れてきたという経緯がある。彼はC・ロナウドとのコネもあり、それを選挙戦の目玉に使うこともできるのだ。

もっと言ってしまうと、バルサ帝国の崩壊は、ラポルタ独裁政権になってからで、ロセルがいた頃、ロナウジーニョやデコは、今のように問題児ではなかった。誰も大きな声では言わないが、バルサの最初の2年の成功はロセルによるもの、失敗した最後の2年はラポルタの手によるもの、という読みが地元には根強い。自身がリコールを叫び、会長になった経緯のあるラポルタが、同じ手で今、会長職から引き摺り下ろされようとしているとは、皮肉なものだ。

おかげで、スペインの代表番記者が一様に「代表に割くページがない」と嘆くハメになる。ユーロそっちのけで、レアル・マドリードやバルセロナが迎えているそれぞれの夏、だが、夏本番はこれからだ。


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