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山本美智子●取材・文 text by Michiko Yamamoto
photo by AFLO

第38号(2007年6月21日)「アディオス・ア・ラ・リーガ」〜レアル・マドリード4年ぶりのリーグ優勝

レアル・マドリードが1456日ぶりにリーグ優勝を手にした。タイトルを祝うときに集うシベレスの泉には、50万人もの人々が押しかけ、夜を徹して久々のタイトルに酔いしれた。

ただ、正直、今シーズンはレアル・マドリードにもバルセロナにも、リーグ優勝に値する精彩はなかったように感じる。両チームとも、圧倒的な強さや飛ぶ鳥を落とす勢いといった覇気に欠けていた。

アリーゴ・サッキは「今回のスペインリーグは、秀でたものがなく凡庸さが目立った。そして凡庸な状況にカペッロは強い」と皮肉にもとれる口調で話したが、実際、そう苦言を浴びても仕方がない、という出来だった。

リーグは、レアル・マドリードがバルセロナを押さえ込んで勝った、というよりは、バルセロナが自ら自分の首を絞めた、という印象が強く、ヨハン・クライフは今回の状況を「レアルの優勝はバルサのおかげだ」と一言で切り捨てた。

バルセロナが失敗した理由に、エトー、メッシの相次ぐ負傷を上げる声もあるが、それだけが理由だとは思えない。ラポルタ会長になってから、毎年、夏のプレシーズンにマーケティングを兼ねた親善試合をしに、アメリカ・メキシコと日本を含むアジアにツアーに出るのが習慣化したが、それがコンディションを十分に整えられない原因のひとつだと指摘されている。

たしかにツアーは、海外にいるファンにとっては、ふだん、テレビでしか見られないサッカーを生で観戦できる絶好の機会なのだが、昨年のようにワールドカップと重なったりすると、選手によっては、ほとんど休養する時間がなくなってしまう。

実際、プレシーズンでのツアーと、フィジカルコンディションの調整のまずさを指摘する声は、選手サイドからもあがっていた。マルケス、テュラム、グジョンセン、エジミウソン、デコ、と多くの選手が警告を発していた。だが、その度にクラブ側は、緘口令を敷いた。蓋をしたところで、においはもれるし、問題の根本解決にはなっていないにもかかわらず、だ。

また、選手達が夜、飲み歩きすぎて、自己管理ができていないからではないか、という非難もあった。こういった批判は、チームが勝っているうちは出てこない。だが、一度、選手の調子が落ちてくると、そういった生活態度にも厳しい目が向けられるようになり、ひいては、それを管理できない監督の能力も問題視される。

一昨年まで、レアル・マドリードの選手がその話題でかなり騒がれ、アジアツアー中にも警告を受けたことは、まだ記憶に新しい。そういった現場を厳しくコントロールできる監督を、ということで、新監督に任命されたのがファビオ・カペッロだった。

カペッロは、「夜の帝王」と名高かったロナウドを放出することにまず成功し、最終的にはリーグ優勝さえも掌中に入れた。だが、タイトルを獲得した翌日のスポーツ紙の裏一面に掲載されたコラムは、「出て行け、カペッロ!」。それは優勝の翌日であり、レアルびいきのスポーツ紙によるコラムだった。つまり、町にあふれ出した50万人の人々は、レアルがタイトルを獲得したことは喜んでいても、カペッロのやり方やスタイルには満足していなかったのだ。

実際、カペッロはロナウドをユースのチームに送り込んで練習させたり、チーム内で重鎮のエルゲラから背番号を奪い取ったり、ベッカムが今季限りでの退団を発表すると、ベンチにも入れなかったり、と厳しいといっても、それはやりすぎでは……という手段に訴えることも多かった。

それでも、ラウルなど主要選手はカペッロ続投を望んでいるが、カルデロン会長、マスメディア、ファンの大半は、監督の交代を希望している。カペッロ自身、「自分が来た初日から、流れに逆らって泳いでいる鮭のように感じていた」と話し、周囲からの信頼感がないと感じていることは明らかなため、続投はよっぽどの大逆転がない限り、難しいだろう。言い換えると、来季のレアル・マドリードは、再び、藪の中である。2部降格を争うクラブでもないのに、ここまで監督が落ち着かないチームも珍しい。

一方で、バルセロナは来季もフランク・ライカールト監督が続投すると話している。但し、選手獲得などに関する決定権は、チキ・ベギリンスタイン強化担当が全面的に握ることになりそうだ。責任の所在をはっきりさせ、仕事も明確化するのだろう。現リヴァプール監督のベニテスがバレンシアを率いていた時、「クラブ側が連れてくる選手を使って、いかにいいチームを作れるかが監督の裁量」だと話してくれたことがある。つまり、持ってこられた材料で上手に調理してこそ、プロなのだ、とベニテスは言うのである。

バルセロナはアーセナルからティエリ・アンリを獲得してこようとしている。その一方で、ロナウジーニョかエトーのどっちを放出するか、が日々の議論の焦点となっている。また、レアル・マドリードにサビオラが移籍する可能性もある。最終節にゴールを決めて、レアル・マドリードに優勝をもたらしたレジェスも、それを良き最後の思い出に放出される方向だし、カカを獲得できるかどうかにミヤトビッチ強化担当の首もかかっている。

多くの要素が絡み合いつつ、すでに来季に向けてクラブは動き始めている。どんな材料が出てくるのか。そして、各監督はそれをうまく調理できるのか。ただ、幾ら素材(選手)や調理法(戦術、監督)がよくても、台所の設備(クラブ側の準備)が整っていなければ、調理が限定されるのみならず、素材が死んでしまうこともある。

とはいえ、今季を終え、レアル・マドリードはイスラエルへ、バルセロナは南アフリカへ行き、親善試合をしてから休暇を取るというおなじみのボランティアの顔をしたマーケティング効果を狙うツアーへ出る。そんな両チームを見ていると、アンリが来ようが、カカが来ようが、台所の大きな改革は来季も期待できないだろう、と諦観せざるを得ないのである。束の間の「アディオス・ア・ラ・リーガ」。お茶の間劇場は続く。


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