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山本美智子●文 text by Michiko Yamamoto
ラファ・ウエルタ●撮影 photo by Rafa Huerta

第37号(2007年4月26日)ロナウジーニョフィーバー〜終盤の優勝争い激化

最近、バルセロナでこんなジョークが流行っている。

A:ロナウジーニョが熱出したんだって?
B:うん。病名知ってる?
A:なんていうの?
B:サタデー・ナイト・フィーバー……。

はい、くだらないジョークですみません。だが、火のないところに煙は立たないと言うように、この手のジョークがスポーツ紙の風刺コミックに載ったり、バールでの冗談に使われているのには、やはりそれなりの理由があるのだ。

発端はロナウジーニョが練習を頻繁に休んだことにある。そうはいっても、ジムトレーニングをしている分には、周囲も何も言わなかったし、マスコミも取り上げなかった。だが、ある日、練習に2日連続で来なかった日、記者がクラブ側にどうしたのか、と聞くと「中にはいるが、練習には出てこない」との解答があった。ところが、その後、実は家から出ていなかったことが発覚。

じゃあ、なんでわざわざクラブ側が嘘をつくのだろう? そこから、ロナウジーニョは本当に発熱しているのか? という疑惑が湧いて出たわけである。もうひとつ、デコと揃って出てこなかったのも疑惑を呼んだ。

デコとロナウジーニョはブラジル人同士、クラブ内外でも仲がいいのだが、ナイトライフが比較的好きなことでも知られている。といっても、かつてのマラドーナやロマーリオのように大虎になるほど飲む、というレベルではなく、ごく普通の青年が明日は休みという時に発散する程度のものだし、ごくごく控え目ではあるのだが、そこは有名人の悲しい性。前述のサタデー・ナイト・フィーバーなどのジョークが生まれてしまう所以である。

だが、ジョークですまなくなったのが先週だ。なんと、ロナウジーニョが唾液で感染するウイルス性の通称「キス病」にかかった、という報道が出てきたのだ。この病気は、扁桃腺のように腫れと発熱が特徴で、倦怠感、疲労感を伴うといったもので、完治に2〜3週間かかる。飲み物を口移しで飲んで伝染することもある、ということだが、子供がかかりやすい病気で成人がかかることは稀だ。さすがにこれにはロナウジーニョも激怒したようで、口には出さなかったが、練習場にも久々に姿を見せ、他の選手がグラウンドを上がっても、居残り練習をする熱の入れようだった。

「ロナウジーニョが太った」と報道された時も、彼はそんなマスコミに真っ向から口で文句を言うことはなく、試合後、わざとズボンをずり下げて、俺のどこが太っているのか言ってみろ、といわんばかりに、テレビ画面に自分の体を見せつけた。今回も同様に、俺のどこがそんな病人に見えるというんだ、言ってみろ、という彼なりのポーズに違いない。

最近、ロナウジーニョのミランへの移籍が取り沙汰されているが、それもこういった背景があってのことだ。今シーズン、不調と言われながらも17ゴールをマークし、エトーとメッシが負傷している最中のバルセロナを支えてきた主役にも関わらず、このように酷評されるのだから、多少嫌気が差してきているとしてもおかしくはない。

そこに来てスペインリーグの優勝争い激化である。バルサは首位をキープしているものの、もう1試合も負けることも許されない状況に立たされている。現在、2位に勝ち点1差でレアル・マドリードがつき、さらに2点差でセビージャが食いついてきている。

あと7節でシーズン終了というこの時期は、試合も心理合戦的要素がぐっと強くなる。そして、往々にして追う側の方が追われる側よりも、心理的に優位に立てることも多い。つまり、いつ逆転が起きてもおかしくない状況なのだ。極端な話、セビージャが来週勝って、レアルとバルサが負けて、そのまま後6週間突っ走れば、セビージャのリーグ優勝の可能性も十分あるということだ。

“ロナウジーニョフィーバー”の裏には、こういった心理合戦も含まれている。相手の足を引っ張る心理戦にクラブ側や選手、監督だけでなく、クラブ側に肩入れするマスコミも参戦するからだ。“ロナウジーニョフィーバー”を煽ったのは、レアル寄りのマスコミだった。

勝つためには手段を選ばず、とまでは言わないが、実際、これが現実なのだ。そして、こういったプレッシャーに負けるようでは、ビッグクラブにふさわしい選手にはなれない。クラブも同じで、チャンピオンを自認するなら、周囲の圧力を跳ね返し、打ち勝っていかねばならない。

専門家に「どこが優勝するだろう?」と聞いて、最初にセビージャが外される理由はそこにある。セビージャは、実力はあるが、その圧力に耐えて打ち勝つという経験が少ないからだ。一方、レアル・マドリードは違う。これだけシーズンを通して非難されようが、まだ上位に食い込んでくる。これこそが、チャンピオンの持つ実力というものだ。ロナウジーニョもまた、この厳しい状況下で、チームの救世主になれるかどうか、注目されている。スペインリーグの優勝をかけたラストスパートが今、始まる。


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