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山本美智子●文 text by Michiko Yamamoto
photo by Atsushi Tomura/AFLO SPORT
第35号(2006年9月8日)
新生レアル・マドリード〜カペッロ体制の評判

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 ワールドカップドイツ大会でスペイン代表が華々しく負けたのも、今は昔。ユーロ2008予選に向けて、W杯で敗退したのと同じ顔ぶれのメンバーを招集したのも、W杯前の約束を守らず、アラゴネス代表監督が辞任しないのも、全てきれいに水に流して、代表戦より、ずっと楽しいスペインリーグが今年も開幕した。

 今季、もっとも補強しているのは、アトレティコ・マドリードだが、注目度が高いのはなんといってもその宿敵、レアル・マドリードだ。ロナウドが移籍するかどうかは、殆ど、夏のワイドショーネタでも扱われているくらいだし、鬼軍曹の異名をとるカペッロに、レアルファンからは久々に期待が高まっている。なんといっても、ファン・ニステルローイやカンナヴァーロ、エメルソンにディアラと、補強しているメンバーが華やか。さらにアーセナルのスペイン代表FWレジェスがバティスタとトレードレンタル移籍なるシステムで、1年契約でレアルに来ることが決まった。

 一時は、バルセロナがもてあましているFWサビオラに、レアルが触手とあって国内マスコミはどっと沸いたが、さすがにそれは現実とならなかった。ちなみに、どんなにゴールを決めようが、問題発言をせずにじっと黙っていい子にしていようが、ライカールト監督にも、会長にも愛されないかわいそうなサビオラも、結局バルセロナ残留が決まった。契約期間はあと1年。今、売らなければ、ただで手放すことになるバルサは、四方八方手を尽くしたが、もう2年連続でレンタルに出されているサビオラは、とうとう首を縦に振らず、それにクラブ側もさじを投げた。とはいえ、サビオラは、その報いにおそらく試合にも招集されず、ひたすらトレーニングを積むのみで1年を通し、バルサの試合をテレビで見る羽目に陥ることだろう。グジョンセン、エトー、メッシとジュリの4人が揃って負傷でもしない限り、サビオラの出番はなく、クラブ側からのお仕置きが続くのは目に見えている。

 もとい、レアル・マドリードに話を戻そう。カペッロが一番手に入れたかったのは、カンナヴァーロの女房役になるCBだったが、その希望は今回は叶わぬまま終わった。状況によっては1月の補強を狙うことになるだろう。それまでのスタメンはセルヒオ・ラモス、控えはエルゲラとパボンということになりそうだ。一時、スペイン国内で流行った「ジダネスとパボネス」ということばの源になっているパボン。ジダン級の選手を外から集め、パボンのようなユース出身の選手を引き上げ、その融合でレアル・マドリードを作る、というフロレンティーノ・ペレス元会長が作り出したキャッチコピーだが、そのパボンもお茶を挽く運命に甘んじて長い。本人いわく「まだ監督(カペッロ)とは話していない」そうである。カペッロが就任し、トレーニングが始まったのは7月……。毎日、顔をつき合わせていて、来季に向けてひと言ももらっていないということ自体が、パボンの来季を象徴しているようだ。

 一方、放出か残留かと今季も騒がれ、結局、再び残留が決まったロナウド。毎年、レアルのお騒がせ男と化しているのは、それだけ、ロナウドがレアルに満足していない状況があるからだ。ロナウドが来て、憂き目を見たのはラウルやグティだった。だが、今回のファン・ニステルローイのマドリード到着で、ロナウドはスタメン落ちすると見られている。カペッロから「体重を落とせ指令」が出されているその体重はすでに90キロ。だが、本人は、体重を落とすことがプレイスタイル崩壊につながると、一部に告白したことが暴露されている。

 アンチレアルのカラーを打ち出している国内紙「スポルト」紙は、ロナウドが彼女と別れたことを報じたが、そのタイトルは「彼女は消えても、皮下脂肪は消えない」。完全にお笑いキャラとして定着している。常に話題を提供してくれる有難い選手でもあるが。

 反面、昔の師であるカペッロ先生が来たことで張り切っているのがカッサーノ。ロナウドと競っていた皮下脂肪も姿を消し、イタリア代表にも久々に招集された。カペッロは、バティスタをアーセナルへ追い出し、ロナウド、ロビーニョ、シシーニョをベンチに置き、昨季までのブラジルカラーを一掃している。スタメンで起用されているブラジル人選手はロベルト・カルロスとエメルソンだけだ。

 そんなカペッロの新生レアルの評判はというと、これが実はすこぶる悪い。それも、レアルファンから悪評なのだ。ベルナベウで行なわれた初戦でも、スタジアムの観客はカペッロに対して激しいブーイングで応えた。マドリードファンにとって、ジダンの華麗なプレイをベルナベウで見ていたファンにとって、リーガ・エスパニョーラを見慣れている観客にとって、カペッロのサッカーは余りにも守備的で、余りにも魅力がなく、ひと言でいえば、余りにもカルチョなのだ。

 とはいえ、結果が全て。結果さえ出れば、周囲は黙るだろうが、チームが機能するにはしばらく時間がかかりそうな気配だ。初戦もホームでスコアレスドロー。ゴールのひとつも見ることができないのでは、ファンはチケット代返せ、と言いたくもなるだろう。もちろん、4年間崩壊しきっていたチームを再生させるのだから、時間がかかるのは当然なのだが……。

「スペイン人はイタリア人が来るまでサッカーの何たるかを知らなかった」と過去に豪語し、その傲慢ぶりに一部から猛反発を食らったカペッロ先生。それでは、マエストロのお手並みを今季はじっくり拝見させて頂きましょう。
プロフィール
山本美智子

リーガ・エスパニョーラだけでなく、ポルトガルリーグなどの取材も精力的に行なっているバルセロナ在住のライター。また、新聞社の通信員としても取材活動を行なっている。


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