宮崎隆司●翻訳 translation by Takashi Miyazakii
photo by AFLO
第77号(2008年9月3日)【イタリア】Calcioの真実 Vol.11 ミランのエース・カカインタビュー〜戦国時代の新シーズンへ
――バロンドール受賞者の大半が直後のシーズンで不振に陥るというジンクス。これに君もハマり、昨季のミランは最低限の目標、チャンピオンズ・リーグ(CL)出場権獲得を逸したと言われている。そして今季、着実に戦力を増したミランにあって尚もエースである君の状態は?
Kaka’(以下K) この夏、『遂に』という感じで、まとまったバカンスを取らせてもらえたからね(笑)。まぁ冗談はともかく、僕はいつだって眼の前の状況を肯定的に捉えるようにしているんだ。だから、昨季の結果についても、そしてこの夏の難しかったコンディション調整についても、僕は努めてポジティブな側面を見出そうとしている。
夏の間の調整が思うように運ばなかったのは事実だけど、一方で久しぶりに、本当に久しぶりに家族との長い時間を持つことができたし、何よりも生まれて間もない子供との時間を多く持てたのは本当に幸運だった。これまでの僕に、立ち止まる時間はなかったからね。
ただ、その反面、ひとりのプロとしては重要な舞台(オリンピック、W杯予選)に立てなかったことを、それに今、開幕戦に臨もうとするミランの役に立てない現状を、すごく残念に思っているのも事実だけど。
――膝の状態は?
K 走れないことはない。ただ、まだほんの少しだけ痛みがあるんだ。復帰は9月の中旬ってところだね。
とにかく、今は悔しさで一杯だ。6月初旬の手術以降、リハビリは順調に進んでいたし、満を持してのキャンプインだった。事実、7月の時点で膝に痛みはまったくなかった。ところが、キャンプ開始からわずか数日で再び強烈な痛みを感じて、別メニューを強いられることになったんだ。例年にも増して難しいシーズンになるからこそ、できるだけ多くのエネルギーを蓄えておきたかったけど、その思惑がすべて狂ってしまった。それでも今、復帰へ向けて状態は確実にベストへと近づきつつあるよ。
――各クラブが軒並み充実した補強を行なった今季、『例年にも増して難しいシーズンになる』という君の見解を否定するつもりはない。だが、冒頭で触れた通り、ミランはCLに出場しない。昨日(8月28日)の抽選結果をみて抱いた率直な感想は?
K 僕がイタリアへ渡って来て以降、CLなしのシーズンは初めてだからね。悔しいというか……正直、あの舞台に立てないっていう事実を受け入れられないというか、本当に不思議に思ってしまう。今季の試合を観ることでさらに増すだろう悔しさを、余すことなく来季への糧にする。そうとしか言えないね。
――バルセロナからザンブロッタとロナウジーニョ、アーセナルからフラミニとセンデロスを獲り、若手FWボリエッロがレンタルから呼び戻され、そして遂にシェフチェンコが復帰。DF、MF、FWすべてが層を厚くした今夏、これだけの補強を行ったミランだからこそ、国内リーグ制覇はもとより、UEFA杯獲得もまた半ば義務として語られている。
K そうした声を僕も否定しない。そしてCLに関して、昨日の抽選を観ながら、ボードに並ぶチーム名を眼にしながら、その誰にも今季のミランが劣っていないことを僕は改めて確信したんだ。この思いを具現化できるチャンスを手にしなければならない。だからこそ、君が言うように、僕らはUEFA杯を半ば義務として獲りにいく。1年後の欧州スーパカップ、モンテカルロで行われるCL覇者対UEFA杯覇者の一戦、これに何としてでも勝ってみせるためにね。
だけど、それはあくまでも1年後の話。今はひとつひとつの試合に、国内でもUEFA杯でも、目の前の試合だけに全力を尽くしていく。たとえば国内でいえば、今季はミランとインテル、ユベントスとローマ、そしてフィオレンティーナという5チームが、ほぼ横一線に並ぶ戦力を持つ。気の抜けない試合の連続になる。高いクオリティーを求めながら、同時に抜け目のない、確実に勝ち点をモノにできるサッカーを追求していく。ただ華やかなだけでは、それを本物のプロのサッカーとは言えないからね。
とにかく、ここイタリアでは所謂“プロビンチャ(地方)”にも難敵が揃ってる。その守備とカウンターのスキルは本当にレベルが高いんだ。言うまでもなく、彼らを倒すには周到な準備が求められる。
――特にシーズン終盤で取りこぼさないためには選手個々の疲労を可能な限り軽減させておく必要がある。その意味でも、この夏のミランは実に的を得た補強を実現させたと言われているが。
K その通り。この夏の欧州全土を見渡しても、ミランほどメルカートを成功させたクラブは他にないと思う。
例えばフラミニ。彼は重要な役割を果たすはずだ。去年のCL、今でも鮮明に覚えている対アーセナル戦(決勝T1回戦)の記憶がそう僕に言わせるんだ。2試合とも、彼を前にして僕は思うようなプレイをさせてもらえなかった。まさに“ことごとく”ボールを寸前でカットされてしまったし、それだけでなく彼は技術レベルも高くて、加えて遠い位置からのシュートも素晴らしかった。これほど心強いMFはそう多くはいない。
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