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第69号(2008年4月15日)【イタリア】純血か、ビジネスか〜岐路に立つローマ
ローマを欧州ベスト8の位置まで持ち上げたのはルチアーノ・スパッレッティの功績だ。
前シーズン4監督が入れ替わった嵐吹くローマに2005年就任。トッティら選手やサポーターがゼーマン復帰を望む中、大歓迎されたわけでは決してなかった。
そのスパッレッティが真っ先に行なったのは、あらゆる意味でチームの“ドン”、フランチェスコ・トッティ(写真)と良好な関係を築くこと。これがローマを掌握するための最短かつ最良の方法だからである。またローマ子飼いの選手たち、中でもすでに台頭著しかったデロッシやまだあどけなさの残るアクイラーニら“ローマっ子”たちを大切に扱った。
チームに大きな影響を与えるサポーターたちへの配慮も忘れなかった。彼は事あるごとに彼らへ感謝の言葉を捧げ、外部からのバッシングには真っ先に反論した。
こうしてローマをコントロール下に置いたスパッレッティにとっての最大の難題は彼らのサッカーに対するアプローチの改善にあった。選手たちはゴールを決めるよりヒールキックやフェイントに熱心なことしばしばだったからだ。
ローマの町が“トンネル”や“またぎ”を決めた選手をヒーローに祭り上げるのだから当然の成り行き。少々退屈なサッカーをしても勝ちさえすればサポーターに喜んでもらえる北部チームの環境とは大違いなのである。結果は求められているのにオーナー、センシファミリーの経営危機により補強のために相応な金を使えないのも頭の痛いところだった。
そこでスパッレッティはピンポイントのカルチョメルカートを敢行する。フィジカルは強いがテクニックはいまひとつのパワー系は全て切り捨て、技術最重要視でチームを補強していったのだ。サッカースタイルは、ワンタッチのグラウンダーパスと激しいポジションチェンジで攻める本格的トータルフットボールを導入。大型ボンバー不在を補うため、得点力あるトッティのプレイ位置を一歩前に押し出した。
ローマの人々に喜ばれ、しかも勝てるサッカーを探求したスパレッティの知恵がローマの「ゼロトップシステム」を生んだのである。
ローマのゼロトップはスペクタクルで、かつ結果も伴ったから各方面で絶賛され、フロントにもサポーターにも歓迎された。
だがトータルフットボールには大きな弱点がある。このサッカーは莫大なエネルギーを要する。よって選手がトップコンディションにないと成立しないのだ。コンディションが多少悪くてもフィジカルでねじ伏せることのできるインテルやユベントスのようなサッカーをローマには期待できない。2チーム分の厚い選手層を持たない限り、トータルフットボールで複数のビッグタイトルを狙うのは危険な賭けなのだ。
このシステムのためだけに集められた戦力のため、システムをいじるとあっけなく崩れてしまうのもローマの弱み。ローマの戦術的バリエーションは乏しいどころか無に等しい。ただし、今季は著しい成熟が見られる。確実にこのシステムを身に着けたため、起用される選手が変わっても問題なく機能するようになったのである。またトッティの調子がいまひとつの試合でも着実に星を取れるようにもなった。
だが、トッティがピッチ上に不在となると話は別。「彼がいないと我々のサッカーは同じではなくなる」とスパッレッティも認めている。オランダのトータルサッカーがクライフいてこそ格別な超一級品になったように、ローマもトッティあってのものなのだ。トッティが欠けると敵にとって“読みやすい”サッカーになってしまうだけではない。
例えばローマの攻撃の中で最大の武器のひとつとなっているのがペロッタのエリア内への入り込みなのだが、これは敵を引き連れて一歩引くトッティ独特の動きが作るスペースがあってのものだ。
CL準々決勝の試合後、2年連続で欧州の舞台からジャッロロッシを葬ったマンチェスター・ユナイテッド(マンU)のGKファンデルサールは、「ローマにまだ不足しているものは何か?」と聞かれてこう言った。
「お金が足りないんじゃないのかな?」
2月に発表された欧州チームの収入番付でマンUは2位、ローマは10位でその稼ぎはマンUの半分。金欠は補強の足かせになるだけでなく、主力の流出も意味する。マンシーニは自分の年俸に不服を唱え、それがチームにとっても本人にとってもマイナスに働いているのが現実なのだ。
4月10日、イタルペトローリ(センシが経営する企業の持ち株会社)はかねてから噂されている買収話について、「オファーを受けていることは事実である」と明らかにした。マスコミ報道によるとローマにこの話を持ちかけているのはアメリカの投機家、ジョージ・ソロス。センシ側はソロスとの接触を否定し続けているが、10日のイタルペトローリの発表を受け、ローマの株価は一気に4.46%上昇した。
純血を守るか、それとも勝負とビジネスの世界で頂点に立つためプレミアのように外国人ボスを受け入れるのか。岐路に立つローマが選択する道は、ローマのみならず今後のカルチョ界全体の動向に大きな影響を及ぼすものとなるだろう。







