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アラン・トネッティ●取材・文 text by Alan Tonetti
宮崎隆司●翻訳 translation by Takashi Miyazakii
photo by AFLO

第66号(2008年2月18日)【イタリア】カルチョの真実 vol.5 「ローマの真実」〜スパレッティ監督インタビュー

この3シーズンでインテルが移籍市場に費やした資金は合計134万ユーロ。対して、ローマはその7割にも満たない額、88万ユーロに留まる。だが、第22節終了時で8ポイント差とはいえ、今季もローマは2位を堅持。首位インテルの背を懸命に追う。『金をかけずに勝てるチームを作る』とのプランが着実に遂行されている証だ。

果たしてそのコンセプトとはいかなるものか? 健闘するチームへの賞賛が周囲に溢れる一方、果たして抱える問題はないのか? CL決勝T1回戦、レアル・マドリードとの一戦を前に、指揮官ルチアーノ・スパッレッティが現在の「ローマの真実」を語った。

 

──05年夏から今日まで、およそ2年半に渡り進化が図られて来たローマの戦術。試合毎に周りの評価は増し、事実、昨季の大敗(06−07シーズンCL準々決勝、対マンU、1−7)で得た教訓を余すことなく活かしていると誰もが口を揃えます。

ルチアーノ・スパレッティ(以下、S) よって今回の対レアル戦でも必ずや結果を残す、と。

――ええ。ですが、ここにある幾つかのデータは、そうした周囲の言葉を裏付けているとは必ずしも言い難い。例えば今季の選手起用の内訳。第22節終了時、現有27選手の中で消化試合の半数に出場試合数が達しているのは16人。過密スケジュールの中、この数字はチーム全体の疲労につながるのではないでしょうか?

S その数字に間違いはない。だが、疲労が浮き彫りになるという指摘に対する私の答えは、明らかに『ノー』だ。なぜなら、君の言う状況をチームは開幕前から想定していたからだ。我々は周到な準備を行なってきた。非常に負荷の高いトレーニングを開幕前に行ない、スタートダッシュに不可欠なスタミナを十分に蓄え、燃料を満タンに搭載したマシンのごとく我々はシーズンに臨んだ。チームが一定の戦術における形を確保すべく、ある程度の固定化されたメンバーを当初から想定していたということだ。

――そして、その傾向はCLでも顕著です。グループリーグ6試合を終え、出場が4試合に達しているのはわずか14選手……。

S 試合数が少なく、しかし相手の技術レベルは国内リーグを上回る。よりベストに近い布陣で臨むのは監督としての義務。実にシンプルな論理故の結果だ。

――ですが、この流れは次第に変化している。

S シーズンは長く、だからこそチームは27人もの選手を有しているのだ。

――これまではベンチスタートだった選手がスタメンとしてプレイきるよう、新たな策をすでに準備している?

S 当然だ。そうでなければ私が今、こうしてセリエAの監督であることが許されるはずもない。

――例えば右のSB。先のメルカートで最も高価な買い物だったはずの選手・シシーニョが、現状では脇に追いやられたと言わざるを得ない……。

S たしかにシシーニョは途中出場が多かったが、かといって彼を脇に追いやったなどとは考えていない。

――これまで右SBはパヌッチをスタメンとして起用。なぜシシーニョではなくパヌッチなのか?

S ブラジル人プレイヤーが、スペインでのわずかな経験のみを経てイタリアに渡って来る。当然、我々が求める守備のクオリティに達するには相応の時間を要する。事実、彼にはまだ攻め上がった後の“戻り”に際して若干の甘さがある。無論、その点に関してパヌッチはひとつ上のレベルにある。彼の持つ経験則が、右SBだけでなく、周りのディフェンダーたちが露呈するかもしれない不用意なミスも事前に回避させる。よって、とりわけ攻撃的性格の強いチームを相手にする際、私はパヌッチを先発させてきたつもりだ。

――一方で、シシーニョにはパヌッチにない攻撃の資質がある。したがって……。

S そう。したがって試合の終盤、相手に疲れの色が見え始めたところで彼を投入する。この起用法は、それなりの効果はあったと自負しているんだが。

――おっしゃるとおりです。『新たな策をすでに準備している』という先ほどの話ですが、これは今後、右にシシーニョが入る形が増えてくることを指すと見ていいのでしょうか。

S それは何もシシーニョの出来、または成長に限って決まってくる話ではない。彼が自らの欠点を改めれば自動的に出場機会が増える、という類いの話でもない。それに、プレイの質、その水準を高めるよう課しているのは何もシシーニョだけではない。元々の特性を短期間で根本から変えるなど不可能だからだ。DFラインの取り方にスキルアップを求めるのは当然だが、同時に彼本来の特長を失わせるような真似は絶対にしない。我々はシシーニョを獲った意味を見失ってなどいないのだ。
あくまでも、活かすべきは彼の攻める力。とすれば、ポイントは彼が縦に上がった際の他の選手たち、とりわけMFたちのポジショニングにある。シシーニョの“クセ”をチームが知り、いかにして彼の立ち位置の変化に応じて正しい守備体系を作れるか。今、チーム全体として、その精度を重点的に高めているところだ。

――となると、シシーニョ起用の場合のMF陣は自ずと決まってきますね。マンシーニとジュリ、トッティがトレクアルティスタ、そこへヴチニッチがFWとして入る場合、シシーニョ起用はあり得ない。それは余りにもリスクが高い。

S ただでさえオフェンシブなチームが、それでは紛れもなくスーパーオフェンシブになってしまう(笑)。当然、チーム戦術のバランスを崩すような真似はしないよ。

――ですが、中盤の底にデ・ロッシがいる以上、トレクアルティスタ(トップ下)3人の中にペッロッタが入れば、攻め上がるシシーニョの背後が不用意に空くことはない。

S その答えは、後半戦のフィールド上で明らかにされるだろう。

――そして再び先ほどの話ですが、監督が言われる通り、相手を疲れさせた上での選手交代が功を奏している。これを裏付けるデータが、今季のローマに見る得点の時間帯です。

S 恐らく、総得点のうちの30%程が前半と後半の残り時間わずかというところで決められているはずだ。

――その通りです。試合の35〜45分、そして80〜90分の時間帯のゴールが、総得点40の内の実に13。その割合は凡そ33%。一方、総失点22の内、同時間帯に失ったのはわずか4ゴール。

S ある程度とはいえ、我々の意図した戦い方が実践されている証だと言っておこう。非常にエネルギーを費やすスタイルを持つローマだが、我々は今、それ以上に敵を疲弊させる策の確立を目指している。

――その中身は?

S もちろん、それを具体的には言えない(笑)。

――ではもうひとつ、これは決してネガティブなデータというわけではないのですが、ある特徴をローマの反則数に見て取れます。

S 正しくは『イエローカードの数』、だろう?

――そうです。例えば首位インテルと比べた場合、ファール総数に占める警告数が格段に多い。22節終了時で、ローマが受けた警告数はファール6.67回につき1(全340ファール中、警告51)。対して、インテルは8.53回につき1(全341ファール中、同40)。これは、特に中盤でのいわゆる“戦術的ファール”をローマが多用している証だと思われますが……。

S 正解だ。事実、攻撃の途中でボールを奪われ、敵チームのカウンターを受けたとき、またはポジショニングのミスなどからチームがバランスを崩したときなど、私は意図的なファールに行けと命じている。攻撃に割く人数が多い以上、必然的にリスクマネジメントとしての策は不可欠になる。だが、相手を傷つけるような悪質なファールは絶対にするな、とも私は繰り返し指示している。ただし、このデータは審判がローマに厳しく、逆にインテルには甘いということの証であるかもしれないが(笑)。

――とはいえ、ボールを取られてからの守備に今はまだ精度を欠く、との指摘も成り立つのではないでしょうか。

S 断っておくが、我々は何も中盤の守備を戦略的ファールだけに依存しているわけではない。あくまでもひとつの手段に過ぎないということ。もちろん、この数字を減らしていくことが今後の課題であることは否定しない。

――次にゴール数と被ゴール数に関して。昨季の同じ時期(第22節終了時)と比して、ゴール数ではマイナス6。対する被ゴール数ではプラス4。この数字をどう分析されますか?

S しかし獲得したポイントはわずかにマイナス1の48。インテルも同様にマイナス1であり、現状8ポイントの差があるとはいえ、我々は2位を堅持している。よって特別な分析を必要とするデータとは考えていない。

――最後に、対レアルについてひと言。

S 悪いが、それについて詳しいことは言えない。唯一、昨シーズンのような結果は繰り返さない、とだけ言っておこう。


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