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内海浩子●文 text by Hiroko Uchiumi
photo by Reuters/AFLO

第62号(2007年12月7日)【イタリア】ミラン、悲願のクラブワールドカップ優勝なるか〜インザーギとマルディーニの思い

ミランが待ち焦がれたFIFAクラブワールドカップがついにやってきた。

12月5日夜、ロッソネーリはマルペンサ空港を飛び立った。初戦1週間前に日本入りし、13日と16日の2試合のためだけに11日間日本で過ごす、という前代未聞のゆとりある日程からその意気込みが伝わってくる。

それは4年前の教訓からきていた。ミランが圧倒的有利と見られていた2003年のトヨタカップで時差呆けに苦しみ、ピッチで選手の体と頭が思うように動かなかったのである。

「チームドクターも内分泌専門医も時差回復には7日あれば十分と言っているのでね」とこの日程の意味をチーム副会長のガッリアーニは説明している。しかしそれだけでは不安のようで、時差対策の専門家ふたりを日本へ同行させる念の入れようである。

日本行きの飛行機には、五輪ブラジル代表に招集されたパトを除き、FIFAへ提出した23人のリストに載っていないファバッリらも含むミランの選手という選手が全員乗り込んだ。これは試合の24時間前まで登録選手の入れ替えが可能なためだが、ミランがチーム一丸でこの大会に挑む、という強い意思表示でもある。

23人のリストには10月末の半月版手術で公式戦から離れていたヤンクロフスキも含まれている。彼は13日の準決勝に間に合いそうだが、同じくリスト上のひとりながら果たして日本でプレイできるのかミランも本人もわからないのがロナウドだ。

ロナウドは7月31日に左太ももを故障。当初はセリエA開幕に間に合うと言われていたのだが、最初の診断にミスがあり復帰は9月から10月、10月から11月へと延び、ようやく登場かと言われた11月6日のシャフタール戦(CL)ではドネツクの気温が氷点下フタケタに近かったため持ち越し。続く11日のアタランタ戦(セリエA)ではウルトラスが暴れたため試合が前半7分で打ち切られ、そうこうするうちユーロ予選のためリーグ戦は休みとなり、結局、彼がピッチに立てたのは11月25日のセリエAカリアリ戦だった。

ところが続くベンフィカ戦(CL)試合前のウォーミングアップ中にふくらはぎの痛みを訴え欠場。MRI検査の結果、異常は見られずほっとしたのもつかの間、日本への出発前日の練習中、あちこちに不具合を訴えて話は振り出しに戻ってしまった。つまるところ、ロナウドが出場した今季の公式戦はセリエAの1試合だけなのである。

みながロナウド、ロナウドと騒ぐのはワケがある。セリエAにおけるミランの思わぬ低迷(8位)は、ロナウド不在が大きく影響していると言われているからだ。

「ミランの不調の原因はロナウドがいないからだと思う」と事あるごとに語っていたカカは、この影響を最も受けたひとりだろう。ロナウドはゴール前で勝負する他のミランFWと違い、起点がエリア外の選手だ。ロナウドがいないとカカはFWとの空間を埋めるため、システムが4−3−2−1だろうが4−3−1−2だろうが本来の位置より前でプレイしなければならない。

「僕はゴールまでの間のスペースが欲しいんだ。だからセカンドアタッカーではなくトップ下が理想のポジション」と打ち明ける。確かにギアチェンジによる加速でシュートまで持ち込むのがカカの大きな武器のひとつ。専門違いの役割もたまにならばいいのだろうが、いつもそうだとフラストレーションも溜まるだろう。

だが“得点”という論点では、ミランはロナウド抜きでもさほど心配していない。開幕から不調だったジラルディーノがゴール感覚を取り戻しているし、何といってもここ一番に強い“スーパーピッポ”インザーギがいつも以上に熱く燃えているからだ。

イタリアを出発する前夜、サンシーロで戦ったCLでインザーギは欧州での公式戦63ゴール目を決めた。この数字はゲルト・ミュラーを抜き歴代欧州カップ戦得点王を意味する。偉業達成に感動の涙を隠さなかった彼だが、その目はすぐさま前を見た。

「次はヨコハマでゴールを決める」

前身のインターコンチネンタル杯(トヨタカップ)も含め、クラブワールドカップはインザーギが唯一ゴールの足跡を残していない大会。もし横浜でゴールを決めれば、彼は欧州のクラブチームが出場できうる国際公式カップ戦の全てでゴールを決めた史上唯一の選手にもなる。スーパーピッポのテンションがいかに高いかは推して知るべし、だ。

しかしクラブワールドカップに賭ける思いの強さでは、主将でありミランのシンボル、マルディーニに優る選手はいないかもしれない。彼は開幕前から「今季最大の目標はクラブワールド杯優勝」と言い続けてきた。日本への出発前、優勝できればシーズン終了を待たずに来年1月で引退する考えまで示唆している。

的確かつエレガントに守るネスタ、長短のパスを自在に操り芸術的FKを披露するピルロ、何にでも噛み付くガットゥーゾらが日本でも一流のプレイを見せることだろう。だが彼らの目的はただひとつ。クラブワールドカップ優勝だ。このタイトルの獲得は、ミランの宿願なのである。


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