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アラン・トネッティ●文 text by Alan Tonetti
宮崎隆司●翻訳 translation by Takashi Miyazaki
アフロ●写真 photo by AFLO

第60号(2007年10月31日)【カルチョの真実 vol.4】イタリア人の狂熱的サッカー愛〜お金と愛

06年W杯ドイツ大会の覇者であり、W杯優勝は通算4度。07年バロンドール候補(善50名)に世界最多となる8名(トッティ、ブッフォン、インザーギ、マルディーニ、ガットゥーゾ、ピルロ、トーニ、カンナバーロ)を送り込む国、イタリア。

今年の受賞者はカカで決まりとは言え(12月2日発表予定)、なぜイタリアがこれだけの候補者数を記録できるのであろうか。その数、ブラジル人(同6)、イングランド(5)、アルゼンチン人プレイヤー(3)を凌ぎ、フランスとスペインの倍に及ぶ。なぜか? 南米選手には個人技で大きく見劣りし、対国内リーグ比較でもリーガ(スペイン)プレミアシップ(イングランド)に国際的な人気の面で後塵を拝すセリエAからなぜ……。

正直、この国に生を受けたひとりとしても首を傾げたくなる、というのが本音だ。

そこで、考えてみた。国内主要新聞各紙の記者たちと論議を重ね、外国人メディアとも意見を交わし、そして地元の仲間たちともピザを頬張りつつ話し合い、その結果(率直なところやや具体性に欠けるとも思うのだが……)、ひとつの答えを見出すに至った。というか、この国の誰もが心に宿す思いを改めて強く認識した、と書くべきだろうか。

すなわち、バロンドール候補8名の答えは、単に“我々イタリア人の狂熱的サッカー愛”。これを背景とする“底力”としか言えないのではないか、と。

「怠け者」(ストライキ大国)、「何をするにもいい加減」(時間通りに発着する列車は皆無)、そして「言い訳の天才」(例えば値段をボッたくる店員に一度でもクレームをつけてみれば分かる)。こう世界的に酷評されることの多いイタリア人。そして、当の我々もそうした批評を甘んじて受けるべきと思うが……。

しかし、反論が許されるとすれば、きっとこんな風に多くのイタリア人は口を揃えることだろう。「こと好きなことになると、俺たちは異常なまでの執着を見せるんだ。多分ドイツ人よりも真面目になるし、健気なまでに努力するのさ」と。

今シーズン、F1で世界を制したフェラーリがそうであるように、またはファッションや食に飽くなき情熱を注ぎ続けるように、我々のカルチョ愛もまた海よりも深く、そして山よりも遥かに高いと断言できる。

だからこそ、この国のサッカー文化は厚く、その土壌は時を経るごとに肥沃となり、(時にモッジ事件のような問題を頻発させながらも……)ジャンニ・リベラを、パオロ・ロッシを、そしてロベルト・バッジョ、ファビオ・カンナバーロといった偉人たちを輩出してきた。この4人、つまり歴代バロンドール受賞者を、イタリアは“我々のサッカー愛という肥料をふんだんに含む大地が育んだ才能”と呼び、その名を誇らしげに語り継ぐ。

では、我々イタリア人のサッカー愛とは具体的にどういうものなのか? 詳しい説明を、と思うが、それより、今イタリア各地で起きている、いくつかの出来事を紹介する方が遥かに的を得た説明となるはずだ。

以下に3項目を並べてみる。「バカなイタリア人だ……」と笑って頂いて大いに結構。だが、これが紛れもないイタリア的サッカー愛。その一つひとつであると言って間違いない――。

その一。「昨季のリーグ覇者、大胆ヌードカレンダー発売!」

それは、その圧倒的な強さから国内で“女性版インテル”と呼ばれる女子サッカークラブ、「リオッツェーゼ」にまつわる出来事。チームの主将、女子サッカー界のマテラッツィを自認するアドリアーナ・ヴォルペ(DF)はこう語った。

「今シーズンの登録に必要な資金、18万ユーロをクラブは用意できなかったの。それで練習中に選手全員の写真を撮ってもらったのよ。全裸ではないけど、セミヌードで。そして、その写真で来年のカレンダーを作ったってわけ」

無論、ここはイタリア。フェラーリやファッション他、美しい女性への情熱でも世界ナンバー1の国だ。言うまでもなく、これは爆発的ヒットを呼び、瞬く間に完売。発売部数は何と10万。1部の価格は10ユーロ、よって100万ユーロ(約1億6千万円)の売り上げを記録するに至った。

アドリアーナは次のようにも語っている。「私たちには誇りがある。W杯覇者イタリア、その底辺の一部を担っているという誇り、自負があるの。だからフィールドに立ち続けたい。立ち続けなくちゃいけないって思ってるの。登録できなければ、プレイできなければ、そんな私たちの存在意義そのものが潰えてしまう。それだけは絶対に受け入れられなかったのよ。写真を撮られるのは恥ずかしかったけど、サッカーのためなら何だってするって、そう皆が心をひとつにした結果だと思っているわ」

その二。「驚愕スポンサー現わる!?」

オーストリア国境近く、イタリア最北部の街トレント(チーム名=トレンティーノ)での出来事。ここもまた、リオッツェーゼ同様資金難に陥り、新シーズンへの登録は辛うじて出来たものの、遠征費用他、諸経費の捻出に困窮。その打開をと、次のような策が講じられた。イタリアでは違法とされる、日本でいうところの風俗店(この場合、正しくは売春宿。経営には、もちろんマフィアが関与?)をメイン・スポンサーとして招聘しようとした。

同クラブのサイト上には“店名”がピンクを基調に華々しく飾り、12万ユーロ(約2000万円)の資金提供が約束されていたと言われる。だが、町の長老以下評議会が全会一致で同契約の締結に反対。バナーは即刻削除され、結果、国内サッカー史上初となるはずだった風俗店スポンサー登場は夢と潰れた。

ただし、この背景には(クラブ首脳関係者の)奥様方による猛烈な圧力があったと見られている。契約に際し、「試合に勝てば、お店の利用無料!」との条項が盛り込まれていたとされ、これを知った妻たちが町の長老へ、そして長老たちが評議会へ強硬に働きかけたというのだ。

チームの主将ステファノ・ベルトラーミは語る。「(バレたんじゃあ)仕方ない。でも、イタリアがダメだというならオーストリアのリーグに登録するっていう手もある。だってあそこでは(売春宿が)合法だからね(笑)。とにかく、また新たなアイデアを考えるまでさ。タマ蹴れるんだったら金の出所なんて何だっていい! フィールドに立つためなら手段は選ばないよ」

その三。「デルピエロに愛の手を!」

一方、こちらは桁の違う額の話。主役はユベントス主将、アレッサンドロ・デルピエロ。10月16日に契約更改(2年契約。1年目の年俸は400万、2年目は同370万ユーロ)を果たしたとはいえ、世代交代を推し進めようとするクラブと、年齢からくる衰えが顕著な主将は激しく対立し、開幕前と言われていた更改は、成立に3カ月もの時間を費やした。

その間、デルピエロをユーベの象徴と崇めるファンの不安はいつか「去らないでくれ!」という悲痛な叫びとなり、全国的な運動にまで発展。クラブ側が年俸カットを更改の条件としていたことから、首脳陣に対する痛烈な皮肉を込めて「足りない金は俺たちが出す!」と立ち上がったのだ。

全国から寄せられた“寄付金”は3万3000ユーロ(約530万円)。6億円強もの年俸を手にするデルピエロにとってごくわずかとはいえ、公的な機関でもない発起人(いちファングループ)を介してこれだけ集まるという事実は、周囲を、とりわけユーベ首脳陣を驚かせるには十分だった。

奇跡にも近いファンの愛が、契約更改成立を実現させた原動力と見る向きは少なくない。もちろん、身銭を切ったファンに対し、デルピエロ本人は深い感謝の意を公の場で繰り返し述べている。(ちなみに、集まった寄付金はユーベ側が受け取るようなことは当然なく、ユニセフに寄付された)。

これらは、イタリアの日常に見る出来事の一部に過ぎない。続きはまた次回。

 


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