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第57号(2007年9月18日)【イタリア】「ドナドーニのアズーリ」の欠点と課題〜ユーロ2008予選
フランス、ウクライナと続いた9月の2連戦を1勝1分で終え、残すところ3試合となったユーロ予選。
現時点でイタリアはトップのスコットランドから勝ち点差1でグループBの2位につけている。おしなべて予選通過に楽観ムードといえるが、3位フランスの方が有利、と懐疑的な声もある。
「何事も良くない方へ考えるのはイタリア人の悪いクセだ」とドナドーニは言うが、原因はそれだけでもなさそうだ。第一に、“ドナドーニのアズーリ”のカラーがスタートから1年経った今もよくわからない。
「いまだにデルピエロやインザーギに頼らなければならないところにイタリアの問題がある」とボバンが指摘するように、代表から身を引いたトッティやネスタのような中核の後継者となれる逸材の見当たらないせいもある。
しかし、代表就任当時はアズーリの若返りを目標に掲げていたはずなのに、実際彼が招集するのはルカレッリ、ロッキら“ベテラン”が多く、今回も故障中のマテラッツィ欠場で空いた空席を埋めたのは3年以上ぶりに代表復帰となった34歳のパヌッチだった。
「調子の良い選手を招集する」という彼のポリシーは悪いものではないし、ウクライナ戦でのパヌッチの働きは文句のつけようがなかったが、調子次第でメンバーがコロコロ変わってはいつまでたってもひとつのチームにはなれない。イタリアサッカーはチームで戦ってこそ本領以上の力を発揮する。それをドイツW杯で証明したばかりなのだが…。
もちろんドナドーニにチーム作りのビジョンはある。システムは彼が得意とする4−3−3。不動のGKブッフォン+CBカンナバーロとマテラッツィを中心とした4ラインバック+ピルロとガットゥーゾによる中盤+CFトーニが攻撃的サイドを両翼に従える、というのが彼の描くベストフォーメーションといえよう。
しかしフランス戦でもウクライナ戦でもこの基本形で臨んだものの、フランス戦ではMFデロッシの位置が低すぎて、中盤の底からタクトをとるピルロやふたりのCBと近すぎたり、両翼のカモラネーシとデルピエロが引きすぎでインザーギが前線で孤立する状態となり、結果、システムは4−3−3というより4−3−2−1崩れと呼べるものだった。
続くウクライナ戦は、イエロー累積で出場停止のガットゥーゾに代わりアンブロジーニ、フランス戦で良くなかったデロッシ、デルピエロの代わりにペッロッタ、ディナターレを入れ、CFには故障欠場トーニの代役、イアクインタを起用したが、トーニやインザーギと違いイアクインタは中盤まで引いて仕事をする傾向にあり、結果、ゴールマウスへと放たれたシュートは前後半合わせて4本だけ。それで2点決めたのだから、確定率の高さを褒めるべきか、ラッキーと呼ぶべきか…。
ここで必然的にひとつの疑問にたどり着く。果たして現在の戦力は4−3−3に適しているのか?
もうひとつ気になったのが、2試合ともアズーリが非常に消極的なサッカーをしていたということだ。フランス戦後、カンナバーロは「勝たねばならない試合だったのに、僕らはあまりにも臆病だった」と自己反省していたが、それはウクライナ戦でも大差なく、中盤で積極的にボールを奪いにいくことなく、攻撃するより失点の心配がまさっていた。
しかしアズーリは欠点だらけなわけではない。ウクライナ戦の決勝点となったディナターレのゴールは、中盤でボールをカットしたアンブロジーニからのワンパスでディナターレが見事にゴールを割ったもの。このようなシンプルな速攻で敵をくじくのはイタリア伝統の名人芸で、アズーリのひとつの強みとなっている。
また、中盤がいい。5、6年前までイタリアは長らくMF不足に悩まされていたのだが、現在はミラン(ガットゥーゾ、ピルロ、アンブロジーニ)とローマ(デロッシ、ペロッタ、アクイラーニ)が優秀な人材を代表に供給している。特にトッティが代表から引退した今、高い技術とファンタジーでチームに色彩を与えるピルロはドナドーニのアズーリにとって不可欠な存在である。
イタリア代表の次の相手はグルジアだ。しかしマスコミもファンも関心はグルジアを飛び越えてその次のスコットランド戦にあり、この“直接対決”が予選通過を決めると誰もが確信している。
実は9月の予選が終わるまで、イタリアはフランスを過大評価していた。「フランスには勝てなくても仕方ない」という空気は終始流れていたし、「フランスがスコットランドに勝つに決まっている」と他のライバル潰しをフランスに頼っていた感も否めない。
だから、ウクライナ戦の勝利にアズーリが歓喜する中で届いた「フランス、ホームでスコットランドに黒星」の報はまさに青天の霹靂で、イタリアに冷水を浴びせるものだったのである。
スコットランド代表はホームゲームに強いことで有名だ。そしてアズーリは過去スコットランドの地で勝ったことがない(2分1敗)。8月末の時点で前代表監督マルチェッロ・リッピはスコットランドを欧州サッカーの台頭国として「要注意」と指摘していた。だが、彼らがフランスに勝つまで誰もそれに耳を傾けていなかった。
「フランスには勝っておくべきだったのだ」といまさら言っても後の祭り。イタリアは“格下”と見下していた国に生死をかけた戦いを挑まねばならぬ種を自らまいたのである。






