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内海浩子●文 text by Hiroko Uchiumi
photo by AFLO

第56号(2007年8月24日)【イタリア】名門ユベントスの“立ち位置”〜開幕ダッシュの可能性

インテル、ローマ、ミランのような優勝を狙うビッグクラブも、リボルノ、シエナ、パルマのような残留争いに苦しむであろうローカルクラブも、ナポリ、ジェノアのような久々にセリエAに復帰した名門も、開幕直前の数日間はそれぞれの不安を抱えながらも“もしや今季のヒーローは我々かも”の期待に胸トキメキ心躍るひとときである。

だが、そんなムードにいまひとつ浸りきれないチームがある。Bでの幽閉生活を終えシャバに戻ってきたユベントスだ。原因は今シーズンの彼らの“立ち居地”がどこにあるのか、わかったようでわからないからだ。

「即、トップを争うチームとなる」が選手たちの偽わらざる気持ちだろう。またユベントス側から見れば“ぶんどられた”2年前のスクデットの仕返しをインテル相手に演じて欲しいと思っているファンは少なくない。

そんな周囲の空気を感じ取ってか、それともチームの名前を妄信してか、会長のコボッリ・ジッリは「チャンピオンズリーグ出場権(=4位以内)は取れるだろう」と、楽観的な発言を繰り返している。

しかし、プレイオフ9試合で2勝、という数字からも、ユーベらしからぬ失点ボロボロの甘い試合展開からも、その根拠が見えてこない。元ユベントス選手で現TV解説者のマッシモ・マウロは「今の守備と中盤ではUEFAカップ圏内を争うことすらギリギリ」と手厳しい。

つまり、客観的には「5位から8位」が妥当な“立ち位置”のはずなのだが、ユベントスはユベントスであるがゆえに、Bから上がってきたばかりで、メンバーも一新し、チームとして未完の状態であろうとも、スクデット争いにからむ“快挙”を成し遂げたとしてもそれは“当然”とみなされ、「中位を確保」などという目安には誰もときめかないのである。

今季のチームをセクション別に見ていくと、致命的心配材料が見当たらない唯一のポジションが前線だ。新しく入った血はイアクインタだけで、トレゼゲ、デルピエロ、ネドベド、カモラネーシといった名手たちの長年培ったコンビネーションは抜群。プレシーズンマッチでは、特にデルピエロとネドベドの全身からやる気がひしひしと伝わってきた。

昨シーズンはケースバイケースでCFやらサイドやらジョーカーとして重宝された若手パッラディーノも確実に伸びてきている。ゴールを狙うだけでなく、ためもでき、味方のためのスペースを作るのもうまい。監督のラニエリは彼をセカンドアタッカーとして見ており、デルピエロと使い分けてくるかもしれない。

核となるべき中盤に目を向けると、キャンプイン当時は新加入のアルミロンとチャゴのダブルボランチで決まり、のはずだった中盤の真ん中がどうなるのか、いまだにはっきりしていない。パウロ・ソウザの再来、と鳴り物入りで加入したチャゴはシャイな性格が災いしているのか、はたまたイタリアのハードなプレシーズンのフィジカルトレーニングを消化しきれていないのか、プレシーズンマッチではいいところがひとつもなかった。

そこで再認識されたのがザネッティだ。チャゴ入りによりベンチ要員と目されていたが、2年前まで監督だった名将カペッロが直々に指名しユーベに引っ張った選手で、ボランチとしての実力は折り紙付き。チーム全体のバランス取りに優れるだけでなく、トップ下出身という経歴が物語るように技術とアイディアもある。

ラニエリは「ザネッティはアルミロンともチャゴとも組める」と彼にレギュラーを託すかのような発言もしている。ただし決定的弱点は1シーズンを通してプレイしたことのない“ガラスの体”。果たして彼を軸にしても良いのか?

そんなジレンマの中、プレシーズンマッチの活躍で注目を集めたのが特に即戦力として期待されていたわけでもなかったノチェリーノだ。

武者修行先ピアチェンツァから戻ってきたばかりの若手で、当初は放出リストに入っていたのだが、ラニエリが頑としてそれを拒否しチームに留めた。ファイティングスピリットあふれるそのプレイからラニエリは“イタリア版ネドベド”と呼び、評論家たちは“ガットゥーゾの後継者”と評する。しかし正確に言うとザネッティ同様、彼もトップ下生まれで、若き日のガットゥーゾやネドベドより技術力は高い。

ではザネッティとアルミロン、もしくはノチェリーノでいくのか、といえばそうも言い切れない。ユーベが大枚をはたいて手に入れたチャゴを開幕前に見限るとは考えられず、当分はこの4人によるポジション争いとなるだろう。

最も頭の痛いセクションがディフェンスだ。連携が命のこのセクションでほぼ全員が新加入選手、という不安がそのまま的中してしまった。まずはラコルーニャから来たアンドラーデとアヤックスから来たグリゲラをセンターに置いてみたがスカスカ。

そこで左サイドバックのクリッシト(修業先のジェノアからの出戻り)をアンドラーデと中央で組ませ、グリゲラを右に、モリナーロ(修業先シエナからの出戻り)を左に入れてマシになったが、肝心な守備のリーダーが誰なのか、それともリーダーを取れる人物がいないのか、不明なままだ。

こうして、よくわからないことだらけで開幕を迎えることになったユベントス。会長が定める4位狙いの“ライバル”は、「これまでの長期計画が実を結ぶ年になるだろう」と言われているフィオレンティーナ、アマウリ復活とミッコリ加入で得点力アップのパレルモ、引退ペルッツィ以外はほぼ昨季と同メンバーによるあうんの呼吸のラツィオ、さらには“アエロプラニーノ”(小型飛行機)ことモンテッラと天才問題児カッサーノの加入で大いに盛り上がっているサンプドリアや、イタリア代表の新星クアリアレッラが注目されるウディネーゼなど、今のユーベにとっては“強敵”がそろう。

開幕ダッシュに成功すれば、チームにポイントと自信をもたらし、そのまま上位についていけるだろう。さもなくば批判の嵐が待っている。


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