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第54号(2007年7月13日)セリエA移籍市場の主役〜ミランとインテルの選手獲得状況
昨年夏のカルチョメルカート(移籍市場)はカルチョスキャンダルの嵐が吹き荒れる中、インテルのひとり勝ちと終わったが、今年は駆け引きやだましあい、義理と温情が入り混じるドラマが展開されている。そのメルカート序盤戦の主人公だったのはインテル。
数カ月前からカリアリの点取屋スアソのインテル行きは確実と見られていた。昨年夏、スアソ側は契約に「来年夏、1400万ユーロの移籍金を出すクラブがあればそこに移籍できる」という項目を加えており、それに目をつけたインテルが早くから獲得に動いていたのである。
自分をさしおいて、とっとと進む移籍話に面白くないのはカリアリのオーナー、チェッリーノ。「1400万ユーロという移籍金はイタリア国外のクラブに移籍したときのみ適用される」として渋ったり、ローマに売りつけてみたりしてインテルをジラし、挙句、「インテルとの話はなしになった」と言ったことからミランが本格的に名乗りを上げ、「スアソ、ミランへ」と報じられるまでに至った。
結局、スアソ本人がチェッリーノに対し涙ながらにインテル行きの希望を訴え、それに打たれたチェッリーノがミランに断りを入れ、話は元の鞘に収まった。
チェッリーノは言う。「もしミランがスアソにもっとアプローチをかけていれば彼はミランへ行っただろう。だがラブコールを送り続けたのはインテルだった。愛情と信頼のこもったマンチーニからの電話が決め手となったのだ」と。
しかしスアソがミラン行きにNGを出した理由は他にもあった。
昨年夏、ミランへの移籍がほぼ決まっていながらカルチョスキャンダルのせいもあってキャンセルされたこと。さらに昨年の仕返し(イブラヒモヴィッチを持っていかれたこと)でミランがインテルの邪魔をしたいがために自分が利用されているのではないか、と感じていたのである。
背景がどうあれ、スアソがミランを蹴ってインテルを選んだことはインテリスタの自尊心を大きくくすぐり、士気を高める効果を生んだ。
ローマのキヴもレアル、バルセロナからのラブコールには一瞥もくれずインテル入りを強く希望している。レアルは高額な移籍金を提示してローマからキヴ獲得のOKをもらったのだが、「インテルへ行くか、さもなくばローマに残る」と本人にソッポを向かれたためレアルは引き下がり、結果、ローマはインテルと交渉せざるをえなくなった。
スアソもキヴも「インテルの自分に対する熱意」に感動し、「(インテルに入るという)約束を破りたくない」と口をそろえた。愛情と義理がカルチョメルカートにおける今年のインテルの大きな勝因になっている。
片やロナウジーニョだ、エトーだ、アンリだ、と大山鳴動してネズミ一匹すらでてきていないのがミラン。いったん獲得を発表したスアソにもケチがつき、カカをレアルから守るために四苦八苦、という苦難のメルカートとなっている。
ミランが急務と考えているのはFWの補強。監督アンチェロッティの第一希望はエトーだが、本人が「バルセロナから出るつもりはない」と明言しており、現状ではその希望は叶えられそうもない。
そこで浮上しているのがシェフチェンコの復帰。モウリーニョと全く合わずチェルシーの移籍リストに載っているし、何といってもシェヴァはオーナーであるベルルスコーニ(写真)の大のお気に入り選手だから話し合いの余地は十分にある。
昨年夏、ミランがチェルシーに彼を売却した時の額は4600万ユーロ。それを2500万で買い戻そうというのがミランの魂胆だが、チェルシー側の要求額3500万とは開きがある。しかし金額に折り合いがつかなかった場合はレンタルという手も残されている。
問題はシェフチェンコの出戻りに、ミラノが歓迎ムードにないこと。彼がミランを去る際の表向きの理由(子供への英語教育)を素直に納得した人は少なく、釈然としない別離だったからだ。選手たちは「もし戻ってくるなら温かく迎える」と言っているが、選手たちより本音を言える立場にいるファンには渋い顔が目立つ。
フロントの動きにファンが興味を示しているのはシェヴァよりもインテルナシオナルの才能溢れるブラジル人FWパト、17歳。彼が出場中のワールドユースにアンチェロッティを送り込むほどの力の入れようだ。
今のところチェルシーがポールポジションにいると言われており、他にもインテル、レアルといったビッグクラブが、パトの代理人にアプローチをかけている。だがロナウド、カカといったブラジルのスターやフロントにレオナルドを抱える自分たちに分があるとミラン側は踏んでいる。
ミランはエトーもロナウジーニョも完全に諦めていない。「ロナウジーニョが欲しいのなら移籍金は1億2500万ユーロ」という途方もない額をバルセロナが提示した、とスペインの新聞は報じている。バルセロナはこれで引導を渡したつもりだろうが、ミランはバルサ内のFW過多の不満が選手に漏れるのを密かに待ち、そこをつくつもりだろう。
世界の長者番付に名を連ねるベルルスコーニ(写真)は『重要な選手を獲得する』と宣言しているし、「市場は8月31日まで開いている」とフロントは余裕を見せている。いずれにせよ、キャンプインする7月23日までに来季へのはずみとなる主力級をひとりでも決めておきたいところである。
ところで、この2チームに共通して見られる移籍市場での変化がある。監督の立場だ。今まではオーナー(モラッティ、ベルルスコーニ)が獲得選手のイニシアチブを握っていたが、今年は監督の意向が全面的に反映されたメルカート展開になっている。イタリアのビッグクラブに監督にも、チーム作りの権限と責任を持たせるイングランド方式を取りいれようとする傾向にあることは確かだ。
シェフチェンコもベルルスコーニにだけでなくアンチェロッティにも電話をかければ、ミランへの復帰話がもっと順調に進むかもしれない。
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