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第52号(2007年5月11日)【イタリア】チャンピオンズリーグ決勝で、ミランはリベンジできるのか?
「リーグ戦を制するのは穴のないベストチーム。チャンピオンズリーグ(CL)を制するのは偉大なチームだがベストチームである必要はない」とはイタリアの著名評論家、マリオ・スコンチェルティの言葉だ。
CLファイナルに進出したミランもリヴァプールもリーグでは早々と優勝争いから一歩置いていかれ、故障者も出て戦力的に完璧とはいえなかった。特にミランは「グループリーグの後、ミランが決勝に進むのに千リラ(70円)だって賭ける人はいなかっただろう。オレたちですら信じてなかったんだから」とガットゥーゾが言うように、つい2カ月前までは“失敗のシーズン”の烙印を押されていた。
ケチはシーズン前からついた。まずカルチョスキャンダル。昨季2位でチャンピオンズリーグは直接本戦行きのはずが、「ペナルティで出場取り消しか?」、とギリギリまで状況がわからず、それが補強活動にもブレーキをかけた。
結局予選に回ることになったが、そのことでプレシーズンは異例のコンディション作りを強いられた。通常ならば夏は開幕戦からウィンターブレイクまでの4カ月間をエネルギー切れしないような体を作る時期なのだが、それでは8月の予選を重い体で戦わねばならない。結果、ミランは体力作り抜きでシーズンに突入しなければならなかったのである。
セリエA開幕後は主力の故障に悩まされ、ユースの選手をベンチに座らせないと人員が足りない試合すらあった。また、W杯優勝明けの選手(ピルロ、ガットゥーゾ、インザーギ、ジラルディーノ、ネスタ)がピリっとせず、スキャンダルによるペナルティ(勝ち点マイナス8)も響いて、〈リーグ4位以内〉、というミランとしては“地味な”目標の達成すら危ぶまれていたのである。
転機はウィンターブレイクを利用しマルタ島で張った1週間のミニキャンプ。低迷し自信を失いつつあった選手にアンチェロッティはこう言った。「私についてくるなら君らをCLの準決勝へ連れていこう」。それまで“リーグでCL出場圏内”という低い目標しか見えていなかった選手たちの目の色が変わった。
冬の移籍市場で獲得したロナウドの得点力も手伝って徐々に頭をもたげたミランに、手術で長期欠場していた守備の重鎮ネスタが帰ってきた。他の故障者も医務室から続々と戻り、主力が揃い踏みしたミランは4月の声と共に大ブレークしたのである。
約束通り、アンチェロッティは選手を準決勝へと導いた。そして今年のCLで最強と言われたマンチェスター・Uを葬って決勝進出を決めた。特に圧巻だったのはセカンドレグ。
ファーストレグは最後の最後でミスって2対3で敗れたのだが、試合後に「引き分けよりいい結果だ」とセードルフがオールド・トラフォードで発した言葉は捨て台詞ではなかった。「2戦目は絶対に勝たなければならない、と腹をくくったことでメンタリティが変わった」とアンチェロッティも認めている。
さらにミランの選手に火をつけたのは、サンシーロでのマン・U戦の前日に行なわれたもうひとつの準決勝でリヴァプールがファイナル進出を決めたこと。
2年前のイスタンブールでのファイナルにミランはいた。相手はリヴァプール。前半を終え3対0。7度目の優勝は確実と誰もが思った。ところが後半9分からの7分間、ミランは突然ブラックアウト。時計が15分を指した時、リヴァプールは同点に追いついていた。試合はそのままPK戦へともつれこみ、ミランは何が起こったのかわからないまま準優勝の座に甘んじた。
マン・Uとの試合後、「リヴァプールを破ってリベンジしたい」とマイクの前で言い切ったのはガットゥーゾだけだった。だが、「あの後、1年間ずっとあのファイナルを考え続けた」とマルディーニが言うように、あそこで取り損ねたカップの苦々しい記憶はあまりにも新しい。
このリベンジ精神がさらなるエネルギーになる、という人もいれば、逆効果だという人もいる。どちらにしてもミランに「リベンジを考えるな」というのは無理な相談である。
ミランは「勝算大いにあり」という思いを胸にアテネに乗り込むだろう。リヴァプールを見下しているからではなく、自分たちが絶好調だと感じているからだ。特に“ロッカールームのカリスマリーダー”セードルフが深い眠りからようやく目ざめ、準々決勝、準決勝ではゴールにアシストにと大活躍したのは頼もしい限り。
それにミランにはカカがいる。セリエAではシーズンを通して“まあまあ”な出来だったが、CLになるとスイッチが切り替わるのか、彼のプレイがミランをワンランク上のチームへと引き上げていた。ここまで10得点で今季のCL得点王。少々引いた位置からスピードで振りきってゴール前に入ってくる選手だけに、他のチームに違わずリヴァプールもカカのゴール能力に頭を悩ますことだろう。
ミランの欠点は、リードした際にチーム全体が引きすぎるきらいがあること。カカ、ピルロらボールの持てるテクニシャンをそろえているのに、守りに入るとボールポゼッションがうまくいかない。
またPK下手も無視できない。アンチェロッティが率いるミランがPK戦にもつれこんだ4試合で、勝ったのは2003年のCL決勝だけ。今季のセリエAでも得たPK5つのうち3つも外している。
何かというと過去と照らし合わせて勝負の予測をするのが好きなイタリア人によると、PK戦にならなければミランの勝算は高い、ということになる。まず、ファイナルが行なわれる5月23日はミランにとっての吉日らしい。
1968年の同日、カップウィナーズカップに優勝、87年の同日、サンプドリアに勝ってUEFAカップ出場権獲得、90年同日、チャンピオンズカップ優勝。
さらにUEFA会長となったプラティニが「優勝カップ授与はピッチ上ではなく、メインスタンドに選手がのぼって観客の中でカップを受取るシステムに戻す」と決めたこともゲン担ぎマニアのミランファンを喜ばせている。この形式で優勝チームにカップが渡されるのは1994年以来なのだが、この1994年こそミランが圧倒的強さでバルセロナを下し、チャンピオンズカップを手にした大会なのである。
果たして歴史は再び繰り返されるのか? それは神のみぞ知る答である。







