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内海浩子●文 text by Hiroko Uchiumi
アフロ●撮影 photo by AFLO

第50号(2007年3月14日)チャンピオンズリーグ、イタリア勢の明暗

チャンピオンズリーグ(CL)準々決勝へミランとローマが進出し、イタリア人イチ押しだったインテルが脱落した。今季のセリエAでは結果でも内容でも「最強チーム」の名をほしいままにしているインテルだが、CLでは“別人”。ベスト16ではバレンシアとの第一戦(ホーム)を2度リードしながら引き分け、第2戦ではそれを利用したバレンシアにうまく試合を運ばれて無得点引き分けとなり万事休す。

セリエAでのインテルを見慣れているイタリア人にとっては“まさか”の敗退となったのだが、グループリーグからバレンシア戦の前に屈するまで7得点7失点というインテルの残した数字が“CLのインテル”の限界を如実に示している。バレンシア戦ではキープレイヤー(カンビアッソとヴィエイラ)を故障で使えなかったし、それまで絶好調だったアドリアーノが自分の誕生日を楽しみすぎて夜更かしし、コンディション不良のため使い物にならなかった上、今季のセリエAで“怪物”の肩書きを独占しているイブラヒモヴィッチの調子もいまひとつだった、などと理由を挙げればキリがないが、それはいずれも言い訳の域を出ない。

もともとインテルはここ一番に弱い。今季のセリエAには対等のライバルになりえる相手がいないので精神的余裕を持って戦えるが、CLはそうもいかない。さらに、イタリアでは「今季は“簡単”なリーグなのだから、インテルはCLで優勝しなければ、スクデットを獲ってもその価値は半減する」とまで言われていたことから、日に日にプレッシャーが増していたのだ。また、アリゴ・サッキのように敗因を「CLでの経験不足」と指摘する評論家もいる。大舞台での勝ち抜き戦に臨む心身のアプローチが未熟だったというのだ。

その点でベテランの域にあるのがミラン。今季のミランは戦力的にもコンディション的にも例年のミランより見劣りする。ミラノダービーでは2試合ともインテルに敗れたが、それは結果だけでなく内容的にもインテルとの実力差を見せつけられてのものだった。ミラン・オーナーのベルルスコーニは「バルセロナ、インテルらが脱落した今、ミランは優勝の有力候補となった。ミランにはアテネまで勝ち進む全てが揃っている」と自信を隠そうとしない。

たしかにゆったりとした試合展開ならば、経験豊富なミランには負けない強さがある。しかし、世代交代がいまひとつうまくいかず高年齢化したせいか、試合がスピードアップしたり体力勝負になるとモロさを露呈している。また、シェフチェンコが抜けたFWの決定力不足はいかんともしがたく、3月11日の時点で1年前と比べてセリエAでのゴール数が22点も減り、無得点試合が8、1点しか取れなかった試合も8、という数字となって大きく反映されている。

今現在、得点能力で最も頼れるのは1月の移籍市場で獲得したロナウドだが、すでにレアルでCLに出場しているためミランでは出ることができない。インテルなき今、イタリアはミランに最も期待をつないでいるのだが、その歯切れはあまり良くないのが現状である。とはいえ、ミランはミラン。何といってもカカを擁しているし、くじ運にも恵まれている。ベスト16では希望通りセルティックを、そして今度もPSVの次に“御しやすい”と言われているバイエルンを引き当てた。

ミランのような“くじ運”も“経験”もなければ下馬評も低く、審判の不利な判定に苦しめられたにも関わらず準々決勝に駒を進めたのがローマだ。ベスト 16の相手はリヨン。「リーグ優勝などいらないから、CLのカップを獲るべし」がオーナー命令のリヨンは、ベスト4を狙えるチームとしてイタリアでも一目置かれている。そのリヨン相手にローマは第1戦をホームで無得点引き分け。相手が相手だけに、ローマのアドベンチャーもここまでか、と思われた。

ところが第2戦でローマは監督のスパレッティが「完璧だった」と自画自賛したほど今季最高の試合をして2対0の完勝。TV解説者たちはその試合ぶりを大絶賛し、夜明け前にイタリアへ戻ってきたチームをファンが大歓声で空港に出迎えた。ローマとしては決勝まで進んだ84年以来、久々の準々決勝進出だ。

ローマは現在セリエAの2位を独走している。ベストメンバーで戦えば首位インテルにまったく引けをとらない強さなのだが、ネックは選手層の薄さ。特にデロッシ、ピサーロのダブルボランチ、タッデイ、ペロッタ、マンシーニの攻撃的MF、そして現在“セリエA得点王”のトッティの誰かが故障などで抜けると戦力がガクっと落ちてしまう。

ベスト8の相手はマンチェスター。「イングランド勢は避けたい」という空気がイタリアに流れる中でここでも“くじ運”の悪さを発揮したが、トッティはマンチェスターとの初対決を楽しみにしているようだ。その理由のひとつには、彼が本気でバロンドールを狙っている、ということもある。マンチェスターには今年の有力候補者、クリスティアーノ・ロナウドがいる。彼と“直接対決”して世界に自分の力をアピールするのに絶好のチャンスなのだ。

準々決勝第一戦は4月3日。その3日前の3月31日は、ローマ対ミランというカードがセリエAで用意されている。そして、バイエルンとマンチェスターを葬ることができれば、この2チームがCL準決勝でぶつかるという、イタリア人にとって楽しみな試合になるのだ。


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