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内海浩子●文 text by Hiroko Uchiumi
アフロ●撮影 photo by AFLO
第48号(2007年1月10日)
セリエA、1月の移籍市場

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 1月4日、冬の移籍市場がオープンした。前半戦で出番のなかった選手や、半レギュラー級が補修工事的に他クラブへ動いたり、シーズン後の本格的移籍市場に向けて布石を打つ場となるのが常だが、目の色を変えて主力獲りに奔走しているチームがある。ミランだ。

 カルチョスキャンダルによるペナルティポイント(−8)の足かせがあるとはいえ、首位インテルから28ポイント離されての12位。「調子の悪い年はあるものだ」とオーナーのベルルスコーニは強がるが、それにしてもこの順位は屈辱以外の何ものでもない。後半の巻き返しを図るミランの狙いは来季のチャンピオンズリーグ出場権枠に入ること(4位)。そのためにも1月市場での失敗は許されない。

 レギュラークラスを急募中なのはGK、サイドバック、そしてFW。まずGKに関しては、2月復帰見込みのジダの回復具合にもよるが、最悪でも第2GKを確保しなければなるまい。というのも、現在ジダに代わってゴールを守っているカラッチにはサッカー賭博の嫌疑がかけられており、3月に予定されている判決次第では今季の出場が絶望的となるからだ。カラッチの控えGKはここ何年も公式戦を経験していないし、第3キーパーに至ってはユースの少年。ピアチェンツァにレンタル中のコッポラを連れ戻す手もあるだろうが、どちらにしてもGKという特殊なポジションのレギュラーをほいほい渡すチームがそうあるとは思えず、交渉は難航するだろう。

 昨年夏の移籍市場で獲得に失敗したものの、開幕してからもミランがラブコールを送り続けていたのがラツィオのオッド(写真)。寄る年の波に押され気味のカフー(右サイド)と故障がちなセルジーニョ(左サイド)の穴を埋める強力なサイドバックを物色中のミランにとって、右サイドバックとして現在のセリエAでナンバーワンといえるオッドはキラキラと光る宝石のように見えているに違いない。

 とりあえず市場オープン初日に左サイドバックはアルゼンチンのラシンからレアンドロ・グリミをゲットした。ウラカン育ちの21歳。EUのパスポートを持っているのでEU外枠にも支障をきたさず、DFの若返りを図るミランにとって悪くない買い物と言えよう。

 だが、今回の目玉商品はやはりマッシモ・オッド。当初、ラツィオは2千万ユーロという法外な移籍金を提示してミランを門前払いしていた。オッドは攻守共に一流のW杯優勝メンバー。沈着冷静なPKキッカーとしても知られ、物事ははっきり言うが道理は通す頼りがいのあるキャプテンなのである。しかし、年末になってオーナーのロティートが「オッドを売る気はない」と前置きしつつも「鎖にしばりつけてまでとどめはしない」とミランに対して扉が開かれていることを示唆。そこにはもちろん理由がある。ラツイオは2008年6月で切れる契約の延長交渉をオッド側と重ねたのだが年俸で折り合いがつかず座礁したままなのだ。その裏には、ミランが現在の年俸(110万ユーロ)の倍以上をオッドに提示している、ということもある。一方、ラツィオとしてはオッドの要求する大幅年俸アップを飲んだら他の選手が追随するのは必至なことから、ひとりだけ特別扱いするわけにもいかない。

 ところが、もし今季中に契約延長ができなかった場合、オッドにはFIFAルール(30歳以上の選手は契約期限が1年を切ったら2〜300万ユーロの違約金を払うことで海外のチームへ移籍できる)が適用されるため、ラツィオはみすみす大金(オッドの市場価値は1千万ユーロ以上と言われている)を逃してしまう可能性大なのだ。オッドの移籍はもはや時間の問題というのが大方の見方である。

 少々ややこしいことになっているのがFWの補強。ジラルディーノとインザーギはプレイゾーンも動きも重なりがちで、前半戦は両者共に全くぱっとしなかった。ジラルディーノのワントップにしてからは前者にエンジンがかかったが、そうなると面白くないのが後者。「ミランに残りたいけれど有益な選手として残りたい」とグチをこぼしたインザーギの発言にマスコミが「ピッポ、移籍を希望!」と飛びつくのは無理もない。

 もうひとりのFW、オリベイラはイタリアの水に慣れるのに精一杯という状態だし、スーパーサブだったボリエッロはドーピング検査で薬物陽性反応が出たことから長期出場停止処分は免れまい。ということで、ミランとしてはジラルディーノ(もしくはインザーギ)と組めるレギュラー級FWを是が非でも確保したいところなのである。そこで目をつけたのがウディネーゼのイアクインタ。ところが交換トレードとして用意していたボリエッロがこのようなことになってしまったことから、話はお流れになってしまった。

 そこで急浮上してきたのがレアルのお騒がせ男、カッサーノだ。彼の問題は性格が余りにも“異端児”でどこに行ってもチームから浮いてしまうこと。レアルとしてはすぐにでもこの“お荷物”を処分したいところだろうが、カッサーノの高額な年俸を払える超リッチなチームは世界広しといえど数えるしかない。と諦めかけていたところに、ミランが名乗りをあげたから万々歳であろう。

 ただし、ミランとレアルの関係はいいとは言えない。現レアル会長は会長選挙の際、カカ獲得を公約にあげていた。ところがミランは全く聞く耳を持ってくれなかった。また最近ではイグアインを巡る争奪戦を両者で繰り広げたばかり。レアルはカカに相変わらずご執心であの手この手のラブコールを続けており、ミランはそれに対してピリピリ神経をとがらせている。このような状況から、カッサーノの移籍交渉は一筋縄でいかないだろう。

 ちなみに苦悩するミランを横目にお隣のインテルは早くも来る夏の補強に本腰を入れており、1月の市場には一瞥もくれていない。出てくる名前はブッフォン、メッシ、ベッカム……とやたら豪華。というのも、創立100年を祝う来シーズンに向けてロマンチスト(で金持ち)のオーナー、モラッティは“ドリームチーム”を作ろうとしているのである。スローガンは「ひとつのポジションに一流ふたり」。冬の移籍市場はチームの状況と勢いを残酷なまでに映し出している。

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