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内海浩子●文 text by Hiroko Uchiumi
photo by Getty Images / AFLO
第47号(2006年12月14日)
インテル優位もローマの追い上げに期待

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 「今季の決着はついた」。10日夜、ラツィオの完勝で終わったローマダービー直後にコメントを求められたマルコ・タルデッリはそう言い切った。82年W杯決勝で2点目のゴールを決めた際の“雄叫び”で有名な彼ほど断言しないまでも、「スクデット争いの勝負はこれからだ!」と確信を持って発言したコメンテーターも誰もいなかった。

 セリエAが開幕してから3カ月、インテルとその他のクラブの差は勝ち点差(2位ローマと7ポイント)以上に開いているように見える。しかし、ここでリーグ戦が終了してしまっては、マスコミの商売上がったり。インテルにとって最大のライバルといわれ、事実、最もこの優勝候補を脅かしてきたローマにだってチャンスはまだある、という“証拠”集めに忙しい週明けとなった。

 何といってもダービーは特別な試合である。確かにこの夜のローマの出来はヒドいものだったが、ラツィオが敷いた戦術は芸術的なまでに完璧だったし、この1試合の結果と内容だけでシーズン全体を占うこと自体が間違っている。第一、インテルと比べ選手層では分が悪いものの、スタメンの質では決して劣らない。「ローマはインテルの最大にして最強のライバル」とアリゴ・サッキ(元イタリア代表監督)も言う。メクセスとキヴを中心とした守備、イタリアでは世界最高のMFと絶賛されているデ・ロッシが支配する中盤、安定感抜群のペロッタからのパスに脅威のブラジル人コンビ、タッデイとマンシーニが絡む攻撃はインテルに引けをとらないし、若きタレント、アクイラーニの台頭も著しい。

 それにローマにはフランチェスコ・トッティがついている。ワールドカップやユーロでほとんどいいところを見せていないせいか、世界的にはいまひとつ賞賛を得られない彼だが、イタリアでの評価は絶大。「ローマで獲ったスクデットは、ワールドカップ優勝より感じた喜びより大きかった」と言ってはばからないトッティは、代表招集を来年9月まで棚上げし、すべてをローマ1本に絞っている。目下9ゴールでリガノ(メッシーナ)と並び得点王争いのトップ。「今シーズンは今までよりずっとゴールに近い位置でプレイしていて、得点もアシストも増えた。自分はFWだと感じている」と満足げだ。

 ゴールゲッターと化したトッティのせいで割を食っているのがモンテッラ。1月の移籍市場でフルアムへレンタル移籍するものと見られている。「試合に出たい」という本人の意思を尊重すると同時に、高額な彼の年俸(320万ユーロ)を軽減できるから両者にとって悪い話ではない。ただでさえ控え層が薄いことからモンテッラ放出に難色を示していた監督のスパレッティですら、最近になって「移籍の可能性を完全には否定できない」と語っている。ただし、今のローマにモンテッラを手放して“家計”を助ける急務はない。3年前もローマはスクデット争いをしていたが、あの当時は実のところ大赤字で倒産寸前だった。だが、先ごろ提出された昨季の決算では80万ユーロの黒字、という数字が出ており、1月の移籍市場では本格的に補強に乗り出すものとみられている。具体的には、カラッチョーロ(パレルモ)とタヴァーノ(バレンシア)に目を付けているようだ。彼らFWのうちひとりを確保できれば、モンテッラのイギリス行きは現実のものとなるだろう。

 思えば昨年のちょうど今、セリエAトップを走るユヴェントスは追随するインテルとフィオレンティーナに10ポイント差をつけていた。しかし、昨季のスクデット争いが最後の最後までもつれこんだことを考えれば、7ポイント差は完全に射程圏内である。しかも、ローマそして3位のパレルモにとって心強いのは、上に立つ相手がユヴェントスではなく“インテル”だということ。いい意味でも悪い意味でもインテルが予測不能なチームであることは誰もが知るところだし、少なくても昨季までのインテルはここ一番に弱い。

 しかしながら、こういった条件を並べてみても、TV解説者のコッリーナ(元FIFA国際審判員)が「スクデットはミラノへ向かって走っている」と表現したように、やはりインテル優位に変わりはない。冬休みまであと3試合となる次節(17日)は、ローマはパレルモとの2位直接対決という中で、インテルはメッシーナとのホームゲーム。インテルにとってはライバルが星を食い合う引き分けが理想だろうが、どちらかが勝ったとしても首位の座を脅かすほどの差は縮まらない。モラッティ体制(1995年2月〜)になってから苦節12年、よほどのことが起こらなければインテルが初めて満面の笑みでクリスマスと正月を迎える、記念すべき年になるだろう。

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