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内海浩子●文 text by Hiroko Uchiumi
アフロ●写真 photo by AFLO
第45号(2006年10月11日)
早くも正念場!? 波に乗り切れないインテル

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「このようなことが2度とあってはならない」

 これは、フィオレンティーナのホームで3対0とリードしながら、ドタバタと1点差まで追い詰められての冷や冷や勝利に終った開幕戦後にインテルの監督、ロベルト・マンチーニ(写真)の口から出た戒めの弁である。マンチーニは悲願の“自力”スクデットを義務付けられている。ユヴェントスはセリエB、ミランはマイナスポイントでのスタートとなった今季に優勝できなければいつ優勝するんだ、とは、誰もが思うところなのだ。天下を取るためにはこのような集中力の欠如はご法度で、だからこそマンチーニはアウェイでの勝利にも顔をしかめていたのである。

 ところが、それから1カ月も経たない第4節、ホームでのキエーヴォ戦でデジャヴは起こった。後半30分過ぎまで4対0が、終了間際に4対3まで迫られ、まさに悲劇の同点劇一歩手前までいったのである。このようなサスペンス溢れる展開で敵と第三者を喜ばせる試合ばかりを提供していては、セリエAでは優勝できない。それは過去のデータが明示している。セリエAで優勝しているのは、十中八九、最少失点チームかそれに準じるチームである。昨季を1位で終了したユヴェントスの失点は38試合で僅か24。片や今季のインテルは5試合ですでに失点7で、暫定トップのライバル、ローマ(失点2)との差となって表われている。

 それでもリーグ戦ではまだマシだ。スクデットとのダブルクラウンを嬉々と目指して乗り込んだはずのチャンピオンズリーグでは2戦2敗と、早くも沈没寸前である。しかも、初戦でヴィエイラ、2戦目でイブラヒモヴィッチ、グロッソと、退場者を3人出す精神的苛立ちも目につく。その原因を、元インテル監督のシモーニはチームとしての結束力のなさにあると指摘する。「今のチームには、私のインテルでチームリーダーだったシメオネのような選手が見当たらない」

 この役割はヴィエイラに期待されるところもあるのだが、2カ月前に入ったばかりの新加入選手だからまだ時間を要するはずだ。サネッテイ、クレスポ、カンビアッソ、サムエル、クルスらからなるインテル最大派閥のアルゼンチン組にシメオネ的存在がいればいいのだろうが、彼らの誰ひとりとっても反乱者を黙らせるカリスマ性に欠けるのは否めない。

 核となるべき最強のフォーメーションを未だに確立できていないのも不安材料となっている。マンチーニは、質量優れるMF(ヴィエイラ、カンビアッソ、スタンコヴィッチなど)を中盤に3人配し、2トップを従えるトップ下にフィーゴを置いて攻撃にバリエーションを与える布陣を理想としているが、フィーゴの調子ひとつで単調なチームになりさがってしまうのだ。フィーゴはワールドカップで消費したエネルギーを回復しきっていないこともあるが、34歳のベテランをチャンピオンズリーグも含めて3日置きに鞭打つのも酷というものだろう。フィーゴ抜きの場合、マンチーニはクラシックな4−4−2を採用している。このシステムの方が安定感はあるのだが、オーナーのモラッティやファンが望む“爆発力”はいまひとつとなる。

 ついに大輪の花を咲かせたかと思うと、すぐにしぼんでしまうアドリアーノの不安定さもインテルの弱点のひとつとなっている。アルゼンチン組との確執も不調の原因のひとつと噂されたが、昨季までインテルに所属していたキリ・ゴンザレスが「アドリアーノはヴェロンと問題があっただけで、他のアルゼンチン選手とはうまくいっていた」と“証言”しているし、レンタル先のパルマやフィオレンティーナでプレイしていた時も波の目立つ選手だったから、原因をインテルの環境だけに帰結するべきではない。

 以前、彼の監督だったプランデッリが「アドリアーノの欠点は、自分にボールが回ってこないとすぐにイジけてしまうところにある」と言っていたように、どうやら落ち込みやすい性格らしい。マンチーニはそんなアドリアーノを叱咤するつもりだったのか、少々突き放した発言を繰り返してきたが、“症状”は悪化するばかり。3月29日のチャンピオンスリーグ(ビジャレアル戦)を最後に半年以上ノーゴールだから重症だ。

 そこでマンチーニは路線を変更。9月末にはアドリアーノをヨイショする発言をしただけでなく、ミハイロヴィッチを彼のお目付け役に任命。実生活で5人の子持ちであるミハイロヴィッチは、“父親”としてアドリアーノにこうアドバイスしている。「自分のやっていることに自信を持て。そしてもっと笑ってごらん」

 だが、そう悲観する必要もない。キエーヴォ戦での“薄氷の勝利”の結果、2003年2月9日以来のセリエA単独トップも味わったし、現在トップのローマとパレルモにも弱点が見えているし、何といってもまだ序盤だ。また、インテルにはワールドカップ明けの選手が多いため、シーズン終了直後の6月に再びトップへ持っていった体を9月までに再度作り直すのは難しい、という言い訳もある。また、今季から加わった選手の働きは悪くない。ヴィエイラ、イブラヒモヴィッチの持つ個人能力は群を抜いているし、ローマから加入のダクールとチェルシーから加入のクレスポは期待以上の活躍で序盤のインテルを支えた。

 事実、ガゼッタ・デロ・スポルト紙の5節までの新加入選手の平均採点では、ダクールが1位、クレスポが2位となっている(3位はフィオレンティーナのムートゥ)。「その分、金はかかったがね」とモラッティは苦笑いしているが、今のところ補強は例年になくうまくいったと言っていいだろう。

 10月はインテルにとってひとつの正念場となる。チャンピオンズリーグでは、もはや勝利しか許されない。ところが序盤を牽引してきたクレスポが5節カリアリ戦で左太ももを故障。同試合でグロッソも右太ももを痛めて戦線離脱。ふたりとも復帰はうまくいって28日のミラノダービーということになってしまった。追い討ちをかけるかのように、7日の親善試合でカンビアッソも負傷。カンビアッソは第1節で負った故障が癒え、1カ月振りのセリエA復帰を前にした肩慣らしとして出場したのだが、たった15分プレイしただけで医務室へ逆戻りとなってしまった。さらに赤紙組(チャンピオンズリーグでイブラヒモヴィッチ、セリエAでヴィエイラ)を戦力としてカウントできない苦しい台所だ。

 とはいえ、セリエAがEURO予選のため休みとなった1週間を利用してフィーゴ(代表引退)やアドリアーノ(ブラジル代表に召集されず)がコンディション調整を順調に進めているなど、インテルにとって明るい材料もある。いずれにせよ、ミラン戦(28日)、スパルタク・モスクワ戦(31日)の山場を越える勢いをつけるためにも、リーグ戦とチャンピオンズリーグとのメンバー調整が重要な鍵を握ることになるだろう。

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