| 垣内一之●文 text by Kazuyuki Kakiuchi photo by ALFO |
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| 第43号(2006年5月25日) | ||
イタリアサッカー史上最大のスキャンダル発覚
5月3日、ナポリの反マフィア当局により、長期に渡って行なわれた電話盗聴での捜査資料が世に流出。それにより04−05シーズンでの数々の不正疑惑が発覚した。結果、これまでは単なる噂の域でしか過ぎなかったカルチョの世界全体を覆う腐敗の構造が、一気に表面化することになった。 その構造は、かの有名なマフィア映画『ゴットファーザー』を地でいく、まさにギャング(マフィア)の世界そのものである。コルネオーネ役(映画の主人公でボス)は、一件の首謀者として名前が挙がっている元ユヴェントスのGM、ルチアーノ・モッジ氏(写真)。同氏は自らの権力を振りかざし、政界(ピザヌ内務大臣、シニスカルコ元財政大臣)、財務警察(アッタルディ財務総長)、司法府(マラボット財務執政官)、マスコミ(RAIのスポーツ番組『ドメニカ・スポルティーヴァ』、LA7局のサッカー討論番組『ラ・プロチェッソ・ディ・ビスカルディ』)、代理人(世界屈指の規模を誇るマネージメント会社・GEAの会長は、実子アレッサンドロ・モッジ氏)、そしてサッカー協会(元イタリアサッカー協会副会長や審判ら)と、各幹部級クラスのほとんどに手回しをしていた。傀儡政権の如く彼らを裏で操り、一方で反逆者(ゼーマン、ブレッシャやボローニャ)に対しては恐喝まがいの鉄拳制裁を加えるなど、カルチョの世界を裏で自らの趣くままに動かしていたとされているのだ。 中でも象徴的だったのが、イタリアサッカー協会の審判協会に所属し、昨シーズンのセリエA、Bの審判指名責任者だった元国際審判のパオロ・ベルガモ、ピエルイージ・パイレット両氏との共謀による、八百長疑惑だ。これまでも「モッジの飼い犬」と影で皮肉くられていた両氏だが、今回の電話盗聴により、多くの試合でユヴェントスに有利な審判をアレンジしていたとの疑いが明るみに出たのである。 この内容をさらに詳しく説明すると、ベルガモ、パイレット両氏が、モッジ氏の支配下にあったとされている審判(この問題でW杯出場を剥奪されたデサンティス主審や副審ら計18人)を、裏工作でユヴェントスの試合に送り込み、ユヴェントスに対して有利な笛を吹かせた。また、それらの審判をモッジに逆らったクラブの試合にも送り込み、そのクラブに不利な判定を下したりと、試合の結果を裏で意図的に操作していたとの疑いがかけられている。 逆に、ユヴェントス同様、八百長疑惑がかけられているフィオレンティーナなどは、後者に当たる、いわば被害者的な部分があるとの見方が大半を占めている。というのも、オーナーのデッラヴァーレ氏は自らのAデビューとなった昨季の始め、クラブによって大きな差額があるテレビ放映権問題など、イタリアサッカーの改革を訴えていた。つまり、中小クラブの何十倍もの放映権料を懐に入れ潤っているユヴェントスに対し、謀反を起こしていたのだ。こうしてモッジ氏の怒りを買ったフィオレンティーナはその後、度重なる審判の不利な裁定での影の仕打ちによりB降格の危機に瀕死。それを見かねたデッラヴァーレ氏が、「これはたまらん」とばかりに最後はモッジの軍門に下り、最終的には審判の恩恵を受け、何とかB降格を免れたとみられているのである。 いずれにせよ、今一番気になるのはこれらの疑惑が立証された場合、関係するクラブにどのようなペナルティーが与えられるかであろう。 最終的には、先日カッラーロ・イタリアサッカー協会会長の辞任を受け急遽発足された協会臨時会のグイド・ロッシ委員長が、スポーツ裁判での裁定を踏まえ、処分を言い渡すことになる。今のところの見解によると、もっともリスクがあるとされるユヴェントスは、昨季と今季のタイトル剥奪、最低でもB降格、最悪の場合にはC降格を言い渡されると予測されている。また他のクラブ(ミラン、ラツィオ、フィオレンティーナ)については、降格は免れ、いくらか勝ち点を没収され新シーズンを迎えるだろうとの見方が強い。 現在、今回のスキャンダルに絡んだ人物は、次々に自らの座を追われてサッカー界を去っている。インテルとともにクラブ史上唯一降格歴がないラ・シニョーラ(イタリアの貴婦人)ことユヴェントス。まるでマフィア映画のような、イタリアサッカー史上最大のスキャンダルといわれるエンディングシーンとして、創設109年目にして初めてセリエAからのその名を消すことになるのだろうか……。 |








