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垣内一之●文 text by Kazuyuki Kakiuchi
photo by ALFO
第42号(2006年4月28日)
ユヴェントスとミランのスクデット争い

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 しぼみかけていた花が、まるで突然開花したかのようである。中盤過ぎから退屈とささやかれ続けた今シーズンの優勝争いが、残り3試合となったここにきて、一気に熱を帯びている。1カ月ほど前からジワジワと詰まってきた首位ユヴェントスと2位ミランの勝ち点差が、23日に行なわれた第34節で遂に3にまで縮まったのだ。

 これは少なくとも、2カ月前までは考えられなかった状況だ。実際、今季のユヴェントスは開幕から他の追随を許さない、記録的なペースで勝ち続け首位を独走。順になって挑んできたミラノ勢2チームとの首位攻防戦でも、相手の望みをことごとく砕き裂いた。

 まず2月12日には、敵地でインテルを2−1で撃破し、その差を9から12に引き離した。その1カ月後の3月13日には、ホームでミランと0−0で引き分け、その差を安全圏の10に保った。この時点で、誰もが「今シーズンは終わった」と確信し、気の早い地元紙などは、イタリア国旗のトリコロール(左から緑、白、赤)に彩られたリーグ優勝の象徴、スクデット(小さな縦)を一面に大々的に掲載して、2年連続・通算29度目のリーグ優勝に当確ランプを灯していたほどである。もちろん、ユヴェントスの指揮官に就任した昨季以来、常に首位を守り続ける百戦錬磨のカペッロ監督の存在が、当確を裏で後押ししていたことは言うまでもない。

 ところが、その考えられなかった状況が実際に起こった。原因は、ミランの激しい追い上げというより、ユヴェントスの自爆に近い大ブレーキによるもの。決して負け込んだ結果ではない。負けは欧州チャンピオンズリーグ(以下、欧州CL)を含めても、欧州CL準々決勝、アーセナルとの第1戦(0−2)に喫したものだけである。だが、開幕9連勝を飾ったチームが、ここのところ、まるで勝つ術を忘れてしまったかのように勝てない。第30節の対リヴォルノ戦に白星を飾って以来、なんと4試合連続の引き分け。その間、ミランは欧州CLの予備予選を免除される2位の座を守ろうと勝ちを重ね、こうして第23節終了時には14もあった両チームの勝ち点差は、あれよあれよという間に勝ち星ひとつ分にまで縮まったのである。

 では、肝心な優勝の行方は、果たしてどうなるのか? 地元の予想としては、残りの対戦カードの絡みから、ユヴェントス有利の声が依然、大半を占めている。ユヴェントスが、“親交の深い”3チーム、レッジーナ、パレルモ、シエナと、かなりお手頃な対戦カードを残しているのに対し、ミランはフィオレンティーナと欧州圏内4位の座をかけて争っているローマ、現在絶好調のパルマ、UEFA杯争いをしているリヴォルノと対戦するからだ。

 ただ、セリエAではここ7年ほどで、最終節での信じられないような逆転優勝が3度も起こっていることも忘れてはならない。98−99シーズンでは、ミランがラツィオに対して7ポイント差を逆転してスクデットを獲得。さらに99−00シーズンでは、ラツィオがユヴェントスに対して9ポイント差をひっくり返した。そして01−02シーズンは、ユヴェントスがインテルの自爆により、6ポイント差を逆転して棚ボタ優勝を飾っている。今シーズンも同じようなことが起こらないとは限らない。

 ちなみに最終的に勝ち点が並んだ場合、今季から決定戦が廃止されたため、まず直接対決の成績、そして次に得失点差が考慮され優勝が決められる。そうなった場合、直接対決(ミランの1勝1分け)、得失点でともにユヴェントスを上回っているミランに優勝が転がり込むことになる。

 開幕まであと1カ月半を切ったワールドカップも楽しみだが、まずは中盤戦辺りで味わえなかったセリエA優勝争いの醍醐味をたっぷり堪能するのもおもしろい。残りあと3試合。今年のセリエAは、もしかしたらワールドカップ以上にドラマティックなクライマックスが用意されているかもしれない。
プロフィール
垣内一之(かきうちかずゆき)/スポーツライター

大学時代から欧州サッカーを数多く観戦。ジャーナリストを目指す為、イタリアへ留学し、現在、パルマ、メッシーナ、レッジーナを中心に取材活動を行っている。また、スポーツ紙の通信員としても活躍中。
好きなチームはペルージャ、アトレティコ・マドリッド。


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