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垣内一之●文 text by Kazuyuki Kakiuchi
photo by ALFO
第41号(2006年3月29日)
ユヴェントス帝国、崩壊の危機か?〜トリアデの去就問題

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 第29節に2位ミランとの直接対決を引き分け、第31節終了時で勝ち点差は8。残り7試合の時点で、早くも2年連続・通算29度目のスクデット獲得に光が見えてきた、“イタリアの貴婦人”ことユヴェントス。欧州チャンピオンズリーグでも順当に準々決勝進出を決め、チームは今、まさに順風満帆そのものである。

 ところが、「ピッチ内」で死角なしと思われるユヴェントスは、現在、チームの将来を左右しかねない「ピッチ外」でのある大きな問題に直面している。ロベルト・ベッテガ副会長、ルチアーノ・モッジGMとともに、かの有名なトリアデ、いわゆる“首脳陣三銃士”を結成する、アントニオ・ジュラウド取締役(写真)の去就問題だ。

 ジュラウドが就任したのは、93−94シーズン終了時のこと。85−86シーズン以来、実に8シーズンもの間、タイトルから遠ざかっていたユヴェントスは、当時FIAT(車メーカーで、ユヴェントスの親会社)総裁で、クラブのオーナーを務めていた故ウンベルト・アニエリ氏の陣頭指揮下、クラブの抜本的な改革を断行した。それまでの役員・コーチ陣を一掃し、チーム復興のキーマンとして、政治担当に元ユヴェントスのスター選手ベッテガを、メルカート部門にサッカー界の裏の裏まで知り尽すモッジを、そして財政担当にジュラウドを招聘。そして、ここにトリアデが誕生したのである。

 こうしてトリアデ操縦のもと、新たな船出を切ったユヴェントス。その効果は覿面だった。「3人寄れば文殊の知恵」ではないが、それぞれの得意分野でしっかり担当が区別されたこの3タッグがズバリ機能し、それによりチームも見事に復活。リッピ監督(現イタリア代表監督)を招聘した初年度にいきなりスデクット奪回に成功すると、翌年には決勝で当時無敵とされたオランダのアヤックスを破り欧州制覇。以後、チームは計14のタイトル(スクデット6回、欧州CL1回、インターコンティネンタル杯1回、欧州スーパーカップ1回、イタリア杯1回、イタリアスーパーカップ4回)を獲得し、その強さは現在に至るまで、まったく揺るいでいない。

 このユヴェントスの復活劇は、トリアデの存在抜きでは語れない。中でもとくに重要な役割を果たしたといわれているのが、ジュラウドの財政面での手腕だ。就任当時には数十億にも上ったとされる赤字をゼロにしたばかりでなく、クラブの決算を常に黒字に保ち、さらに多大なる利益をもたらした。実際、当時FIATにおんぶに抱っこ状態だったユヴェントスは、現在、立派な株式会社として独り立ち。また、移籍市場においてモッジの手腕が発揮されているのも、高額な移籍金が必要となるスター選手を獲得できる、豊富な資金力があってこそ。彼をレガ・カルチョ次期会長に推す声が根強いのは、まさにその手腕が評価されている何よりの証拠だろう。

 しかし今、そのジュラウドが今季限りでクラブを退団する可能性が出てきた。一説によると、アニエリ一家との考えの不一致が原因とされているが、いずれにせよ、6月に満了する契約が、シーズン終了まで2カ月足らずとなった現時点でも、いまだに更新されていない(一部報道では、契約延長が合意に達したとあるが、現時点で未公表)。

 また、トリアデにカペッロ監督を含めた4人のモスケッティエーリ(四銃士)は、以前から「誰かひとりでも抜ければ全員が退団する」と“心中”を誓っている。ジュラウドの去就はクラブの将来を左右する問題、さらにいえば帝国崩壊にもつながり兼ねない危険性を秘めているのだ。カペッロ監督にレアル・マドリードから執拗な勧誘が届いているのも、まさにそのためである。

 果たして、この問題は最終的にどのような解決を見るのだろうか。3月31日に行なわれる、四半世紀の総括のための経営会議で、去就問題について発表があるらしいとのこと。結果によっては、来季以降のチームのバランスに大きな影響を与えるはずだ。
プロフィール
垣内一之(かきうちかずゆき)/スポーツライター

大学時代から欧州サッカーを数多く観戦。ジャーナリストを目指す為、イタリアへ留学し、現在、パルマ、メッシーナ、レッジーナを中心に取材活動を行っている。また、スポーツ紙の通信員としても活躍中。
好きなチームはペルージャ、アトレティコ・マドリッド。


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