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垣内一之●文 text by Kazuyuki Kakiuchi
photo by Getty Images/AFLO
第40号(2006年2月24日)
トッティのケガがもたらすマイナス影響

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 イタリア国内はここ数日、ローマのイタリア代表FWフランチェスコ・トッティの話題で持ちきりだ。理由は、19日の対エンポリ戦で負ったケガによるもの。ローマのセリエA連勝タイ記録「10」がかかったこの試合で、トッティは相手DFの背後からのタックルにより左足ひ骨を骨折。試合後、すぐに手術を受けることになり、全治約3カ月と診断された。

 もはや誰もが認める国民的アイドル・トッティだけに、この悲劇はイタリア中を震撼させた。結果、各メディアもその一挙手一投足を伝えようと奔走。病院への搬送に始まり術後の本人の様子はもちろんのこと、イラリー夫人を筆頭とする家族らの心境、さらに病院にお見舞いへと訪れた著名人らのコメントなど、ありとあらゆる関連のニュースがライブで報じられたのである。

 その中で面白かったのが、ミランの名誉会長であり、イタリア共和国首相でもあるシルヴィオ・ベルルスコーニ氏が見舞いに訪れたことへの反響。イタリアは今、4月の総選挙に向け、選挙運動真っ只中。今回の訪問もその選挙運動の一環だったのでは、という皮肉がライバル党などから発せられていた。

 ただ、この騒動の一番の背景として、全治と開幕までの日数がほぼ重なる、W杯の存在があったことは言うまでもない。リッピ代表監督も「代わりがいない、唯一の存在」と断言するとおり、トッティは今のアズーリにとって欠かすことのできない選手。その不在により、予測されるマイナス影響はかなり大きい。とくに危惧されているのが、システム問題で、イタリア代表はここ最近、トップ下の彼を中心とする4−3−1−2システムに固定し、好結果を残してきていた。だが、リッピ監督は常々「彼抜きではシステムを変える」と語っており、この時期にきて、システム変更を強いられる可能性が浮上している。

 本番までに残されたテストマッチの数は残りわずか。その意味でも、今回のトッティのケガが優勝を狙うイタリア代表に与える影響は、決して少なくない。

 もちろん、所属クラブ・ローマに与えるマイナス影響も計り知れない。代表でも不可欠な選手である彼がクラブでも同様の存在にあるのは当然のこと。トッティ不在によるチーム力低下は避けられそうにない。さらに、クラブは代表と違い、選手の選択肢にも限りがある。となると当然、この緊急時での解決の選択肢も減るわけで、トッティの不在がチームに与える影響は、代表の比ではない。チームメイトから絶大な信頼を寄せられるキャプテン・トッティの欠場は統率力の面でもチームにとって大きな打撃となる。

 またクラブの財政面に及ぼすマイナス影響も大いに予測される。エンポリ戦でリーグ10連勝を達成し、フィオレンティーナを抜き4位にまで浮上したローマ(第26節終了時)。このままシーズンを終えれば、予備予選ながら欧州チャンピオンズリーグの出場資格を得られる。そうなれば、莫大なテレビ放映権がクラブの金庫に入ってくる予定だ。例えば、ローマが予備予選を通過し、グループ予選を戦った場合、クラブには少なくとも500万ユーロ(約7億円)のテレビ放映権と400万ユーロ(約5億6千万円)のボーナスがもたらされる。だがチーム得点王のトッティを失った今、この希望的観測がかなり危ういものになった。ロセッラ・センシ取締役が「トッティの欠場は我々にとって、資産の損失でもある」と嘆くのも当然だ。

「W杯には絶対に間に合わせたい」と強い意気込みを語るトッティ。果たしてFIFAが定めた、5月15日の最終メンバー表提出日までに間に合うのか。今大会に華を添えるだろうひとりに数えられる彼のことだけに、欠場となれば、サッカー界全体に及ぼす影響も決して少なくない。少なくとも最悪の事態だけは避けてもらいたいものである。
プロフィール
垣内一之(かきうちかずゆき)/スポーツライター

大学時代から欧州サッカーを数多く観戦。ジャーナリストを目指す為、イタリアへ留学し、現在、パルマ、メッシーナ、レッジーナを中心に取材活動を行っている。また、スポーツ紙の通信員としても活躍中。
好きなチームはペルージャ、アトレティコ・マドリッド。


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