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木場健蔵●文 text by Kenzo Koba
YUTAKA/アフロスポーツ●写真 photo by YUTAKA/AFLOSPORT
第25号(2006年10月20日)
フランクフルトで変身した高原

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 ワールドカップ・ドイツ大会でいいところもなく、大会で痛めた膝の治療に専念して、チームのトレーニングにも参加できない日々が続いていた高原。ひとり黙々とトレーニングに励み、試合を観客席で観戦するという苦しい時期もあった。しかし、それを乗り越えて練習試合に出場するなど順調な回復を見せ、公式戦出場が待ち望まれていた。

そして9月9日、ドイツ協会カップ1回戦に出場すると前半30分に先制ゴール。フンケル監督も高原が得点したことに非常に満足し「もちろん、高原が完璧な状態にあるわけではないが、このゴールで彼が自信をつけたことが、重要なポイントだった。それに、試合の流れの中で実に効果的なパスを通していた」と一定の評価。高原自身も、さらに得点を重ねたいと積極的な発言をしていた。

 ブンデスリーガでは第4節の対レヴァークーゼン戦に出場すると、52分に先制点を奪われた直後の55分、同点となるヘディングシュートを決めた。これで勢いづいたチームは、積極的な攻撃を展開、3対1でレヴァークーゼンを下した。フランクフルトに移籍して初のリーグ戦出場、そして初ゴール、さらにこのゴールが勝利に貢献したことで、クラブもファンも高原を賞賛し、プレスの評価も「3」と高かった。

 11年間、ホームでレヴァークーゼンに勝てなかったフランクフルトにとって、この試合で勝った意味は大きく、高原と同じく今シーズン移籍してきたトゥルクも活躍。「フランクフルトは高原とトゥルクを愛する」と新聞は大きな見出しで賞賛していた。続く第5節対シュトゥットガルト戦で、高原はスタメンフル出場。2トップの一角としてポジションを獲得した。しかし、この試合では、前半36分のヘディングはわずかにゴールの上。その後も再三のシュートチャンスがあったが、すべてわずかに枠の外だった。

 フンケル監督は若手の起用も重要視しており、対戦チームにあわせて先発が発表されている。その選手起用が見事に的中していると、今のところ地元メディアは高評価。いまだに勝ち試合はひとつしかないが、まだ負けはなしだ(第8節終了時点で1勝7分けの12位)。その監督が高原を信頼して起用しており、出場機会が増えていることは高原にとって幸運なことに違いない。反面、対ハンブルガーSV(以下HSV)戦で見せたように、ロスタイムの決定的なチャンスでシュートを外し、HSVのドル監督に「大事なところでゴールを外してしまう、それが高原だ」と言われてしまうようなシーンは、減らさなくてはならない。

 今まで、高原はクラブあるいはファンに馴染んでいないように感じられることがあった。HSV時代は、試合に出場できない不本意な状況が続き、試合終了後にチームメイトがサポーターに向かって挨拶をしていても、先にひとりでピッチを去ることが多かった。練習や試合前のウォーミングアップ時に、チームメイトとの会話もあまりなかったが、フランクフルトへ移籍してからはガラリと変わった。ウォーミングアップ時に笑顔が増え、今まで以上にチームに溶け込んでいる。試合終了後はチームメイトと一緒にファンの声援に応えている。ゴールを決めたときなどは、スタンドに向かって走り、派手なアピールをしてスタンドのファンの歓声を浴び、すっかりチームに溶け込んでいる。今や、子供のファンからも「Taka、Taka!」と声をかけられる人気者だ。

 フンケル監督が求めているサッカーは、「情熱、チームワーク」。それを思うと、高原もチームのメンバーとして積極的に行動をともにすることは不可欠。ジャーナリストの多くも、「チームに溶け込んでいる」と評価が良くなっている。HSV時代と違って、プレイでもかなり冷静な部分が見られるようになった。

 今、フランクフルトは、高原に選手として円熟する機会を与えてくれている。とにかく、シュートチャンスはハンブルク時代に比べると格段に増えているのだ。あとはゴールという結果がついてくれば……。高原にしてみれば、HSV時代に試合に出場できず、崩してしまったコンディションを、一日も早く上げていきたいところだろう。
プロフィール
木場健蔵(こばけんぞう)

ドイツ・マインツに定住して20年余、ドイツの市民権を持つカメラマン。
陸上競技や、サッカー・ブンデスリーガなどのスポーツだけでなく、ドイツ山岳部・森林地帯での環境破壊の様子を撮影するなど、地球環境に関する取材ほか、広く一般的な報道活動もしている。


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