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山田一仁●文 text by Kazuhito Yamada
photo by Marc Morris/Kaz Photography

第83号(2008年4月7日)【イングランド】チャンピオンズリーグ、準決勝に残るプレミア勢は

チャンピオンズリーグ(CL)の準々決勝にイングランド勢は4チーム全てが残った。8チームの半数をプレミアのクラブが占めた事実は、現在プレミアシップが欧州の最高峰リーグであることを物語っている。

以下4チームの準決勝進出の可能性に触れてみよう。

■マンチェスター・ユナイテッド対ローマ 4月9日

昨シーズン、やはり準々決勝で当たった両者。ローマはマンチェスター・ユナイテッド(マンU)とのアウェーで、クラブのCL最多失点記録、7対1で沈んだ。今シーズンは、その雪辱に燃えているローマが有利、1点差でローマの勝ちと私は予想していた。

だが、チームの大黒柱、トッティが欠場と聞いて予想通りになる自信が揺らいだ。前半は、ロナウドをうまく押さえ込んでいた。ロナウドがボールを持つとひとりではなくふたり、3人で囲んで潰しにいった。それは、昨シーズンの準決勝ACミラン戦で、ロナウドがガットゥーゾとオッドに完全に押さえ込まれて試合から消えていたのを再現しているようだった。

同様にルーニーも押さえ込まれていた。しかし、右サイドにスコールズがクロスを狙ってフリーになったところが甘かった。スコールズへのプレッシャーが遅れたからだ。

彼のクロスは、マンUの選手が誰もいない、ローマDFの前に飛んだように見えた。しかし、そこに後方から走りこんだロナウドの頭が突然現れ、ボールをかっさらっていった。

先制ゴール。これでローマは苦しくなった。チャンスがないわけではない。最後のパスが今ひとつ不正確だったり、サイドチェンジのボールがラインを割ってしまったりと、プレイの丁寧さを欠いていた。

後半、パヌッチが決定的チャンスにボレーを失敗したのがこのゲームを象徴している。やはり、トッティの存在が如何にチームにとって大きいかを感じさせた。

私から見れば、マンUがすごかったというより、ローマが自らのチャンスを潰して自滅したのだ。ローマの可能性は、2戦目に2対0と試合を振り出しに戻して、延長戦を戦うこと。しかし、可能性は限りなく小さい。

■リバプール対アーセナル 4月8日

準々決勝で唯一プレミア同士の戦いとなったアーセナル対リバプール戦。最近のプレミアリーグ5試合で4分け1敗と調子を落とし、首位の座をマンUに奪われたアーセナル。ベンゲル監督が生み出した若手集団、「ヤングガナーズ」がどれだけ成長しているかをテストするには、絶好のカード。

カップ戦にはめっぽう強いリバプールだが、FAカップとリーグでは、アーセナルを苦手としている。先制ゴールを奪ったのは、今シーズン、ファブレガスと共にアーセナルを牽引しているアデバヨール。

ここまではいいのだがリードを守りきれないところが昔のアーセナルに戻ってしまったようだった。05-06シーズンに決勝に進出するまで、アーセナルは素晴らしい攻撃力で先制し試合をリードするのだが、どういうわけか終わってみると引き分けになっている、というパターンが多かった。

その当時はフランス人選手が多かったので、フランス人の特徴だと私は分析していた。ラグビーの5カ国対抗(今はイタリアが加わって6カ国対抗になったが)でも、フランスは素晴らしいパス回しでトライを奪うが、試合が終わってみるとペナルティーキックで得点を重ねた相手に敗れていることが多かった。私にとってフランスはそんなイメージがある。

ヴィエイラがイタリアに去り、アンリ+若者たちは決勝の舞台に立ち、勝ちきれないジンクスを破ったかに見えた。ホームでの引き分けは負けに等しいというが、リバプールとの試合の内容はアーセナルが優勢に進めた。フレブがカイトに倒されたのは、ベンゲル監督が「100%PKだ」というほど、PKを与えられて当然のシーンだった。リーグ優勝は、残り試合数を考えるとかなり苦しくなってきたが、ここ数年リバプールとの相性はいい。2戦目は1点差でアーセナルが勝つと読む。

■チェルシー対フェネルバフチェ 4月8日

この試合は、フェネルバフチェが2対1で勝つと予想した。点数はあっていた。しかし、チェルシーの点の取り方が予想と異なった。フェネルバフチェの失点が、オウンゴールによって決まってしまったため、自分たちのペースを失い、自信をなくしてしまった。

私の予想は、オーバーペースで攻撃してくるフェネルバフチェが前半1点を先行し、チェルシーが追いつき、そして再びフェネルバフチェが最後に突き放すというパターンだった。

ジーコ監督率いるブラジル人中心の攻撃力は、ちょっとお目にかかれないくらい迫力がある。

UEFAカップ2連覇のセビージャとノーガードの打ち合いの末に、PK戦で勝利したベスト16の試合は彼らの真骨頂が出ていた。ホームの大声援を受けてフェネルバフチェが勝つに違いないと、なぜかドイツW杯で不甲斐ない日本代表を演出したジーコを妙に私は信頼していた。

だが、前半のフェネルバフチェの姿勢を見る限り、私の予想は裏切られたと思い込んでしまった。試合は両監督の采配で明暗が出た。W杯ではジーコ監督の選手交代に疑問が残った。しかし、この試合彼の采配は当たった。1点を追う、前半の54分に送り出したカジムが後半65分同点弾を叩き込む。それに比べてチェルシーのグラント監督の采配は理解できない。

守備的MFミケルを76分に投入。結果論だが、私から見てグラントの間違いはふたつある。

ひとつ目、1点差を守るためどうして後半の初めからミケルを投入しないのか。ミケルは同点にされた後に入っている。勝ち点3と勝ち点1との差はあまりにも大きい。

ふたつ目、交替させた選手。ランパードをミケルと交代させた。交代させるべきは、両翼のアタッカーではないのか。ここまでフェネルバフチェは今シーズンのCLホームゲーム4試合全てに勝利。しかも、ベスト16でセビージャを破った攻撃力は特筆に価する。同点で守りに出て、逆転される可能性はある。そのためにも攻撃を司るランパードは残しておくべきだった。モウリーニョ体勢でリードを守るために守備的MFを入れるのは常套手段だったが、ランパードを交代させたことは、私の記憶では一度もないはずだ。

結果は、勝ち越しゴールを決められ、その後にジョー・コールに代えてアネルカ。攻めたくてもボールの出所を失っては、FWを投入しても思うように攻撃はできない。後半頭からマルーダかジョー・コールあるいはバラックに代えてミケルを入れておけば、同点にされた場面で2トップにしてチャンスには4−2−4にスイッチすることも可能だったはずだ。

交代させられたランパードは自分がどうして代えられたか、納得がいかないに違いない。

試合を落としただけでなく、2戦目を迎えるにあたってチーム内に監督に対する不信感を生み出したことがより大きなマイナスになる。

試合会場に向かうため、ヨーロッパ側からアジア側に渡るフェリーで一緒になった小柄なフェネルバフチェファンに、試合の予測を尋ねると、彼は恥ずかしそうに「フェネルバフチェには勝って欲しいけど、相手はチェルシー。2点くらいは取られそう」と答えてくれた。

いやいや、フェネルバフチェの攻撃力も相当なもの。私の2戦目の予想は、引き分けでフェネルバフチェが準決勝に進出と読んでいる。その時、W杯後ジーコ監督を酷評した日本のジャーナリストたちはどんな評価を下すだろう。


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