photo by Marc Morris/Kaz Photography
第82号(2008年3月10日)【イングランド】ひと回り成長したアーセナル。今シーズンどこまで行くか?
チャンピオンズリーグ(CL)ベスト16。ミラン対アーセナルの第2戦目。ミラノのサンシーロでのディフェンディング・チャンピオン対ヤング・ガンナーズの戦いは、延長になるかと思われた後半残り6分で、アーセナルが2点を連取して王者を突き放した。
それは、ミランのひとつの黄金時代の終わりと、そして若きアーセナルの黄金時代の始まりを欧州サッカー史に残した素晴らしい試合だった。
アーセナルは2月16日のFAカップ5回戦で、マンチェスター・ユナイテッド(マンU)に4対0で完敗(数日後に控えたミラン戦を見据えてメンバーを落としたのだが)。ミランとのCL1戦目は、圧倒的に攻めながら引き分け。その後、プレミアでも2試合連続して引き分けて、2位マンUに勝ち点差1まで詰め寄られた。
しかも、2月23日のバーミンガム戦では、FWのエドゥアルドが相手DFの悪質なタックルで骨折。復帰がクリスマスになるという重症を負った。しり上がりに調子を上げてきた今シーズンの新戦力エドゥアルドの離脱は、私も後半戦に爆発すると予測した選手だけに、チームにとっては大きな痛手。もともと精神的タフさに欠けるアーセナルが、ファン・ペルシ、ロシツキーの怪我で攻撃力のバックアップが今ひとつだった問題にさらなる追い討ちがかかってしまったのだ。
このミランとの一戦でアーセナルがCLから消えると、一気に精神的に落ち込み、プレミアのタイトルもマンUに奪われるのではないかとイングランドメディアの多くも予想していた。
だが、ヤング・ガンナーズは精神的にも成長したことを証明した。昨シーズンと比較して最も伸びた選手、セスク・ファブレガス(写真)とアデバヨールがこの大舞台で勝負を決める大活躍をした。とくにファブレガスは、ゲームを組み立てるコンダクターとしてだけでなく、ゴールも量産できる才能を今シーズン我々に見せている。
デビューした2004-2005シーズン。彼のプレイを見て、ブレイクする若手選手のひとりとして取り上げた私も、彼がこれほど急速に成長するとは予想しなかった。
数年後には、欧州最優秀選手賞(バロンドール)に輝いているだろう。
王者ミランを相手にセンターサークル付近でボールを受けると、パスをするとみせて、ドリブルからマークしていたガットゥーゾをかわすと、まだ20歳の若者は右足一閃。ボールはコースを突いてサイドネットに突き刺さる。ここしか入らないというポイントに吸い込まれた。
その才能に惚れ込み、ベンゲル監督は、まだバルセロナのユース所属でプロ契約前だったファブレガスをアーセナルに引き抜いた。しかも、ファブレガスの親に仕事もあつらえて家族ごとロンドンに移籍したのだ。それほどまでにベンゲルの惚れ込んだ才能が、今、光り輝き始めた。
王者ミランを倒したという自信は大きい。次の準々決勝でどこと当たるかは14日の抽選によって決まる。私は、準々決勝を突破すれば決勝まで行くと確信している。
プレミア勢と当たる確率が高いが、どのチームと当たっても勝つに違いない。意外と心配なのが、ジーコ率いるフェネルバフチェだ。ここと当たるとセビージャと同じく、点の取り合いのノーガードの打ち合いになる可能性が高い。この場合、予期せぬパンチが当たってダウンすることも考えられる。
ミラン戦で活躍したファブレガスとアデバヨールばかりに目が行きがちだが、ここでアーセナルの強みと影の功労者を上げてみよう。
まず、中盤の選手層が厚くなり、攻撃の戦術的オプションが増えたこと。FWはアデバヨールの1トップにフレブがトップ下で4−4−1−1。あるいは、アデバヨールとファン・ペルシまたはエドゥアルド(怪我で残りのシーズンは計算できなくなったが)、そしてウォルコットの組み合わせの4−4−2。ファン・ペルシ、ウォルコットはサイドハーフで使うことによって攻撃重視にも出来る。
あるいは、前半右サイドハーフでエブエを起用し、右サイドバックのサーニャとの組み合わせにすることで守備重視にもできる。エブエのドリブル突破による攻撃力も十分ある。後半、相手が疲れてきたころにエブエに代わり、ウォルコットを投入することで彼のスピードがより生きる。ミラン戦ではこのプランが的中し、2点目はウォルコットの右サイド突破から生まれた。
守備では、GKアルムニアの成長が著しい。数年前はミスが多く、出場すると決まって私をがっかりさせていた。が、最近のパフォーマンスは素晴らしく、イングランド代表監督に就任したカペッロは、アルムニアがイングランドに帰化すれば代表に呼ぶつもりらしいという噂がある。そして、ベテランMFのジウベルトは、野球で言うところのクローザーだ。勝ち試合の締めくくりに登場。守備固めに貢献する。
最後にミラン戦で私が影の功労者に指名したいのが24歳になったばかりのフラミニ。ミランとの2試合を通じて、高い位置からプレッシャーをかけ、カカやパト、そしてピルロに仕事をさせなかった。
スター選手揃いのミランに対し、下がり気味になる守備ラインを常に高い位置に保ち、自ら相手陣地深くまでボールを追って、チーム全体で激しく早いプレッシャーをかける意識を保つリーダーとなったフラミニは、正にチームの縁の下の力持ち。
アーセナルのプレミア優勝は固いと、ミランとの2試合で私は確信した。







