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山田一仁●文 text by Kazuhito Yamada
photo by Marc Morris/Kaz Photography

第81号(2008年2月4日)【イングランド】1月の移籍、プレミア上位の動向〜降格争いの展望

1月31日に締め切られた冬の移籍で、各チームの戦力アップはどうなったか、気になるところ。特に降格圏内のチームや、後少しでトップ4強に食い込めるチーム、UEFAカップ圏内に入れるチームにとっては、ここでどうやって弱点補強をするかがポイントだ。

首位争いをしているアーセナルとマンチェスター・ユナイテッド(以下マンU)は大きな補強はなかった。やはり、好調なチームはメンバーをいじる必要がないということだ。

しかし、アフリカ選手権で主力のドログバ、エシエン、カルーを欠くチェルシーは、ボルトンからアネルカ(写真)、ロコモティフ・モスクワからイヴァノビッチ(セルビア代表)を補強。

リバプールは、夏に大量補強したのに、その効果が結果に表われていない。やはり、トーレス、ボロニン、バベルら他国リーグからの移籍組は、プレミアリーグに慣れるのに時間がかかるのだろう。目立った動きは、どこのクラブに所属しているのか立場が微妙だったマスチェラーノの完全移籍。そして、噂通りユベントスに移籍した守備的MFのシソッコ。

1月の移籍で顕著になるのは降格圏のチームが何とか生き残ろうと、大補強をすること。しかも、シーズン終了まで出来るだけお金をかけないで、ローンやフリーの移籍を大いに利用する点だ。

最下位のダービーは、1月だけで11人も獲得。名の知れた選手では、元マンUのキャロル(GK)、サヴージ(ブラックバーン)、ミルズ(マン・シティ)、ミラー(セルティック)。それに次ぐ大補強は、19位のフルハム。元アヤックスでヨーロッパチャンピオンにもなったリトマネンをマルモから補強し、総勢7人。続いて、ウィガンの6人、サンダーランドの5人と、最下位から上に行くほど補強の人数が少なくなる状況だ。

うまく補強したと感じさせたのは、トッテナムとポーツマス。

トットナムは、DFにミドルスブラからウッドゲイト(イングランド代表)、レンジャースからハットン(スコットランド代表)を31日までの移籍期限ぎりぎりで補強。ヘルタ・ベルリンからもさらに2人獲得。中盤とDFを強化し、各ポジションでレギュラー争いが生まれた。ポジション争いをさせることで、各選手の潜在能力を最大限に出させる。攻撃力と比較して守備のバランスが悪かったと私は感じていたので、これでバランスがとれてきた。さすが、セビージャでUEFAカップを連覇したラモン監督、補強のつぼを心得ている。

ポーツマスは、FWにトットナムからデフォー、そしてリヨンからバロシュを獲得。一気に攻撃力が増した。このチームほど選手の入れ替わりが激しいチームはない。何しろ、2005シーズンから加入した選手で1軍登録の8割近くを占める。試合に出場しているメンバーでプレミアに昇格した時から残っていたメンバーの最後のひとり、マーティン・テイラーが、この1月にボルトンに移籍したことによって、ポーツマスはディビジョン1から在籍する選手はレギュラークラスではいなくなった。

さて、ここで新戦力を踏まえて、順位予想の再調整をしてみよう。シーズン開幕後に予想したトップ4強の順位、アーセナル、マンU、リバプール、チェルシーの順位は、多少修正が必要で、3位と4位が入れ替わり、優勝はアーセナル、2位マンU、3位チェルシー、4位リバプールとなる。

アーセナルは、アデバヨール、ファブレガス、ファン・ペルシがチームの中心選手。ファブレガスがゲームを司り、アデバヨールとファン・ペルシがゴールを決めるという形ができてきた。さらに、今シーズン加入したエドゥアルドがプレミアの水に慣れてきて、後半爆発しそうだ。

また、アフリカ選手権でトゥレとエブエ(共にコート・ジボワール)を失ってもチーム事情に影響を感じさせないところが凄い。このチームの良さはいろんなところから点を取れるところ。ゴール数(プレミアリーグ)はアデバヨールの18を筆頭にファブレガス7、ロシツキー6、ファン・ペルシ5、エドゥアルド4、フラミニ3、ギャラス3。アンリが抜けた穴を感じさせない若手の台頭が、今季の躍進力の源。ファブレガスさえ怪我で長期離脱しなければ、優勝への最短距離にいる。

一方、昨シーズンの王者マンUは、ロナウドが昨シーズンに続いて絶好調。19ゴールで現在得点王レースの首位。そして、テベスが11点、ルーニー6点、サハ4点。後は2点以下。

アーセナルと比較してロナウドとFWに得点が集中している。今後、アーセナルを脅かすにはルーニーの活躍と、守備陣にけが人が出ないことが重要になってくる。なぜなら、DFの層は厚くはないからだ。

チェルシーを3位に上げた理由は、ランパードは昨年までの好調さはないが、その分バラックがプレミアに慣れてきたからだ。そして、アネルカを獲得したことにより、ドログバとシェフチェンコを交えたFWのポジション争うがよい効果を生むと見た。

アフリカ勢が戻ってきて後半ラストスパートがかかると、アーセナルとマンUの首位争いに首を突っ込んでくることになるかも知れない。

リバプールを4位としたのは、一発勝負のカップ戦にはめっぽう強いのだが、例年通りあまりにもリーグで結果を出せていないため。この1試合に勝たないといけないという状況に追い込まれると集中力を発揮できるからなのだろうか。長丁場のリーグ戦では、戦力に見合った結果が付いてこない。現時点(2月4日)で24試合中、11勝10分3敗と引き分けが多すぎる。4強から脱落する可能性が一番高いのはリバプールだ。

UEFAカップ圏内の5、6位争いは、上から順にアストン・ヴィラ、エバートン、ポーツマス、マン・シティ、ブラックバーン、ウェスト・ハムにトッテナムを加えた7チーム。この中でも私の一押しは、オニール監督が率いるアストン・ヴィラ。

スコットランドのセルティックから1年間の休養期間を経てプレミアに来て2年目。1月の移籍期間に出入りした選手はわずかに3人。チームが自分の希望の形になってきた証拠だ。DFラールセンが守備の中心で体を張ったプレイで頑張っている。そして、セルティックから連れてきたMFペトロフ、FWマロニーがチームにフィットしてきた。セルティックの黄金時代を作ったオニールの手腕はこれから徐々に発揮されてくるに違いない。

最後に降格圏内で苦しんでいるチームの分析。ダービーは先に記述したように最も多くの補強をしたが、効果が出るかどうか?最下位を脱するのは容易ではない。19位のフルハムは、何とか踏ん張るのではないかと予測する。

ウィガンで明るい話題は、遅咲きのイングランド代表選出の声さえあったブラードが、長期の怪我から復帰してこの1月から試合に出場し始めたこと。そして、リトマネンの加入。ゲームを組み立てる能力のあるふたりの存在がチームを救うのではないかと私は考えている。

  ただし、バーミンガム、ウィガンは、補強が十分にできたとは言えず、今後の不安を残している。私の降格予想チームは、ダービー、バーミンガム、ウィガン。読者の皆さんも、優勝と降格チームがどこになるか、戦力分析をしてみると、後半戦がさらに面白くなるはず。


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