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山田一仁●文 text by Kazuhito Yamada
photo by Marc Morris/Kaz Photography

第80号(2007年12月25日)【イングランド】プレミアシップ、シーズン前半戦の総括

12月16日、トップ4強のグランドスラムが行なわれた。今シーズンの前半戦を総括するにはもってこいの対戦。しかも、イングランド北部とロンドンのダービー。

リバプールはホームに昨シーズンの覇者、マンチェスター・ユナイテッド(以下マンU)を迎えた。ベニテス体制になってから3シーズン、リバプールは一度もマンUに勝っていない。

一方、アーセナルはモウリーニョ監督の突然の退任から、カリスマ司令官を失ったチェルシーをホームに迎えた。チェルシーは、モウリーニョ体制で一度もアーセナルに負けていない。

リバプール0−1マンU、アーセナル1−0チェルシー。結果が現在の4強の力関係を如実に表わしている。

リバプールは、スペインの至宝F・トーレス(アトレティコ・マドリード)を獲得し、バベル(アヤックス)、ヴォロニン(レバークーゼン)、ベナユン(ウェストハム)と、大補強したにも関わらず、マンUに勝てないジンクスを破ることができなかった。

CBのアッガーをケガで欠き、バックアップのヒッピアでは心細い。攻撃の駒は増えたものの、この試合ではどうやって攻めるのかというポリシーが伝わってこなかった。カップ戦には強いが、リーグの結果が伴わないというここ数シーズンのジレンマは解消されていない。首位との勝ち点差は縮まったものの、サッカーそのものがちぐはぐという印象だ。4位にいられるのもトーレスのおかげと言った方がいいだろう。

マンUは勝負強い。拮抗した試合でも結果を出してくる。ただ、リーグ連覇するには、問題点もある。テベス(ウェストハム)、ナニ(スポルティング)、アンデルソン(ポルト)、ハーグリーブス(バイエルン)ら中盤と攻撃陣は充実したが、守備のバックアップに不安が残る。 昨シーズン、年間最優秀選手のC・ロナウドも、ビッグゲームでは沈黙してしまう。

ロナウドは、下位チームとの試合でのパフォーマンスだけでなく、力が拮抗した相手や、自分たちより強いチームと当たったときにこそ、本領を発揮しなければいけない。それは、ルーニーにも言える事だ。

テベス、ハーグリーブス、アンデルソンはチームに馴染んできた。ファーガソンが、トップ下で使うと思っていたアンデルソンを中盤でハーグリーブスと組ませ、より守備的な役割を与えたことには驚いた。そのポジションを忠実にこなしている彼の才能にはもっと驚いたが。

さて、ロンドンダービー。アーセナルの強さは本物だ。チェルシーとの力は拮抗しているものの、モウリーニョ体制でのチェルシーは結果を出してきた。それが、グラント体制になって引き分けるべき試合を落としている。おそらくモウリーニョだったら、少なくとも引き分けに持ち込んでいただろう。シーズン前半ですでにチェルシーは、マンUとアーセナルにアウェーで負けてしまった。

さらにチェルシーは、1月から2月にかけてのアフリカ選手権で、ドログバ、エシエン、カルーらがリーグ戦に出場できなくなる。この間に、ライバルたちに差をつけられる可能性が大きい。総合力では、昨シーズンと同等かむしろ上回っているかもしれないが、試合の駆け引きと選手交代による勝利のつかみ方は、監督の手腕にかかっている。

ファブレガス、ファン・ペルシ、フレブ、アデバヨール、アーセナルはこの4人の成長が著しい。そして、サブの選手たちのクオリティが他チームと比較してとてつもなく高い。18日に行なわれたカーリングカップでは、サブ中心のメンバーでブラックバーンに3―2と勝利。この試合、2―2の局面で、デニウソンが退場になり、10人になっても延長を戦って決勝点を奪ったのだ。

新加入の右サイドバック、サーニャがあっという間にプレミアに慣れた。シーズン当初、うまく溶け込めなかったエドゥアルドも、ここに来てゴールを量産し始めた。いずれは、アデバヨールと2トップを組むようになるだろう。

アーセナルの強みは、選手層の厚さを武器にフォーメーションを自由自在に変えることができる点。サーニャが安定しているおかげでエブエを右サイドMFで使える。この組み合わせは、守備が安定する。攻撃的にいきたい場合は、フレブを右サイドMFで、試合が硬直して流れを変えたい時は、ウォルコットを投入、と選択肢が複数ある。フレブには、今シーズンはトップ下という新しいポジションも与えられている。

アフリカ選手権でエブエやトゥレがいなくなっても心配する必要がない。CBはギャラスとセンデロスで十分カバーできる。

次に、5位以下のUEFAカップ圏内を見てみよう。今シーズンこの5位争いが白熱している。エリックソン監督を迎えたマンチェスター・シティ(マンC)がこのグループをリードし、それに続く、エバートン、ポーツマス、アストン・ヴィラ、ブラックバーンの5チームも、5位を狙うどころか、4強の一角を引きずりおろすかもしれない。

テレビ放映権の分配金高騰のおかげで、各クラブの収入ベースが大幅に上がり、これらのクラブが数年前の4強並、あるいは他国リーグのトップクラブ並の補強をしている。今までは4強との差がありすぎたが、この5チームのどれかが4位に入ってくるのではと私は期待している。

サンタ・クルスとマッカーシーの2トップが魅力のブラックバーン。オニール監督がセルティックから連れてきたペトロフとマロニーが機能し始めたアストン・ヴィラ。ムンタリ、クランチャルら才能ある選手が輝き始めたポーツマス。エリクソン監督の就任と共に、タイの元首相の資金でビアンキ(レッジーナ)、エラーノ(シャフタール)ら外国人選手を買いあさり、多国籍軍団化したマンC。同様にピナール(ドルトムント)らが加入してEU国籍の選手が増えたエバートン。

彼らがプレミアを盛り上げ、見ていて楽しいコンペティションに仕上げている。



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