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山田一仁●文 text by Kazuhito Yamada
photo by Marc Morris/Kaz Photography

第79号(2007年11月12日)【イングランド】アーセナルは本当に強くなったのか?

2004−2005シーズン以来3年ぶりにプレミアの首位に返り咲いたアーセナル。

昨シーズン、チャンピオンズリーグ(CL)出場圏内の4位にはなったものの、リバプールと共にマンチェスター・ユナイテッド(マンU)とチェルシーのタイトルレースの後姿を眺めていたチームが一体どうした変化だろう。

今シーズン、アンリがバルセロナに移籍。得点力の低下を理由にアーセナルに大躍進はありえないと予測するのが普通。だが、昨シーズン、優勝したマンUにホームとアウェーで連勝したのは、アーセナルだけだったことを忘れてはいけない。アウェーで0対1と勝った試合には、アンリは出場していなかった。ゴールを奪ったのはアデバヨール、アシストはファブレガス。今シーズン、チームを牽引しているふたりなのだ。この試合は、内容でもアーセナルが中盤を圧倒。

昨シーズン後半、アンリの怪我による離脱でチームは自信を失い、さらにFWの一角ファン・ペルシも怪我で出場できなくなると、谷を転げ落ちるように連敗。

2月は、CL、リーグカップ、FAカップと3連敗でカップ戦から敗退。3月は リーグ戦で同様に3連敗。これは、ゴールを決めるふたりがいなくなったことが主因だ。

しかし、シーズン終盤の7ゲームに3勝4分と負けなしで終えたあたりからが、チームが若手だけで立ち直っていく始まりだった。ホームゲームで私は、彼らの躍動感、一体感が芽生え始めたのを感じた。ゲームのコンダクター役をわずか19歳で見事にこなしたファブレガス(写真)が、その中心。

誰が得点しても、攻撃の起点はファブレガス。その証拠にゴール後の歓喜の輪は彼の周りにできた。ファブレガス自身は昨シーズン、プレミアリーグ38試合全てに出場してわずかに2ゴール。だが、その2ゴールは終盤の4月に生まれた。

今シーズン、プレミアリーグ11試合ですでに6ゴール。4月から数えれば17試合で8ゴールという結果になる。超一流FWと呼ばれる選手は、試合数の半分の50%の確立でゴールを奪うというのが私の持論。彼は、守備的MF(ボランチ)の位置にいながら、その数字を出している。

今のファブレガスは、彼から攻撃が始まり、ボールが流れるように回って最後に彼のところに戻ってきてゴールを決める、というパターンが多い。元々才能がある選手でスペイン代表として2003年のU−17ワールドカップ、フィンランド大会で準優勝。そのときの最優秀選手賞と得点王に輝いている。

当時バルセロナのユース所属だった彼に目をつけたベンゲル監督が、バルセロナがプロ契約する前に獲得した。ゲームを作りながらゴールも決めるという本来の彼のスタイルがやっとアーセナルで開花したのだ。今頃、ファブレガスを育てたバルセロナは大いに悔しがっているはずだ。

アーセナルの現在の大躍進のつぼみは、昨シーズン終盤に開花し始めていたのだが、今シーズンは結果を伴うことによって、選手たちの自信へと変貌している。

私が取材したCL最多得点差タイ記録となった10月23日のスラビア・プラハ戦(7-0で勝利)では、選手全員がリラックスし笑顔で整列。マンUやチェルシーの選手たちでさえ試合前真剣な表情になるものだ。

ところが今のアーセナルは、サッカーを楽しんでいる嬉しさや自信が満面に出ている。アデバヨールは、観客の中から友人でも見つけたか、手を振って笑っていた。

この試合、7対0と圧勝したのだが、通常この位差がつくと、相手のファウルが目に付き、勝っている側は主力の怪我を恐れて交代させる。しかし、この試合のスラビア・プラハは悪質なファウルがほとんど無かった。それは、アーセナルがダイレクトパスでポンポンとあまりに早くつなぐので、ファウルする時間さえ与えてもらえなかったと表現した方が良い。

先週末の大一番、マンU戦では、試合中のチャンスに得点できなくても、にっこりと笑うアデバヨールとフレブが印象的だった。チャンピオンのマンU相手に20代前半の若者が試合中笑っているシーンは今まで見たことが無い。それほど、彼らはサッカーを楽しんでいるということだ。

そして、そのアーセナルの中心にいるのはファブレガス。彼がデビューした2004−2005シーズン、私はルーキーでそのシーズンブレイクする数人のひとりに挙げた。その予想は当たり、わずか17歳で33試合に出場し2ゴール。2005−2006シーズンにはCL決勝を19歳で経験した。

今シーズンは、CLなど全ての試合(代表の試合を除いたアーセナルの公式戦)を含めると、16試合で11ゴールと驚異的。スカイスポーツの名物解説者も「ファブレガスは毎試合上達している」と褒める。ベンゲル監督も、「ファブレガスはフランス代表MFでゲームを作りゴールも量産したプラティニのようになる」と今後の活躍を確信。

いまや、アーセナルはファブレガスのチーム。彼が攻撃のコンダクトを振っている。

ファブレガスが、シーズン20ゴールを達成するとき、昨年のクリスティアーノ・ロナウド同様に年間最優秀選手賞をつかみ、アーセナルを優勝に導くに違いない。そして、CLではベスト8には行くだろう。うまく行けばベスト4も夢ではない。

ケガに泣かされること無く、順調に伸びていけば、数年後に欧州最優秀選手になる可能性はロナウドより高いと私は見ている。


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