第73号(2007年4月27日)夢の対決3連戦はあるか?〜マン・U対チェルシー
改装を終えたばかりのウェンブリー・スタジアムで行なわれるFAカップ決勝(5月19日)が、マンチェスター・ユナイテッド(マン・U)とチェルシーの対決となることが決定した。サッカーファンにとっては夢のカード。さらに、リーグ戦でも、首位マン・Uとそれを追いかけるチェルシーとの直接対決が5月9日に控えている。
国内大会のふたつの決戦が、同じカードになるだけでも驚きだが、チャンピオンズリーグ(CL)でも現在準決勝に残っているこの両者が5月23日の決勝で対決する可能性もある。
4月24日に行なわれたCL準決勝の第1戦。マン・Uはホームでミランに3対2と辛勝したものの、2点のアウェーゴールを献上したことで、第2戦は決して簡単なものではなくなっている。また、守備陣にケガ人続出で、ファーガソン監督(写真)としては、どうやってそのほころびを繕うかが一番の問題だろう。
しかし、攻撃陣に目を向けるとイングランドプロサッカー選手協会最優秀選手賞と、最優秀若手選手賞をダブル受賞したC・ロナウドに加え、ミランと引き分けに終わりそうだった試合を、終了間際に劇的勝利に導いたルーニーがいる。
一方のチェルシーは、4月25日のCL準決勝第1戦で苦手のリヴァプールをホームに迎えて1対0と先勝。チェルシーがモウリーニョ体制、リヴァプールがベニテス体制になってからの過去2シーズン、両者はCLで4回戦っているが、結果は3引き分け、リヴァプールの1勝とチェルシーは一度もリヴァプールに勝っていなかった。
この試合、モウリーニョが同じ失敗は繰り返すまいと学習している効果が出たようだ。今回は、チェルシーがリヴァプールを破って決勝に進出すると私は考える。その理由は攻撃の引き出しの多さ。いつでも選手を変えて、バリエーション豊富な戦い方ができる。さらに最後の15分でラストスパートをかけられる余力もある。それはCL準々決勝のバレンシア戦でも証明されている。
プレミアシップでは、先週末マン・Uがホームで中位のミドルスブラにてこずって引き分け。チェルシーは勝ち点1差に追いつく最大のチャンスだったのだが、ニューカッスルでのアウェー戦で引き分けて、勝ち点3を得ることはできず。残り4試合を残して勝ち点差3のままである。
英国メディアの大半は、このままマン・Uが逃げ切ると見ている。しかし私は、残り4試合のそれぞれのカードを見ると、チェルシーが追いつく可能性も十分にあると見る。
マン・Uはアウェー3試合とホーム1試合を残しているのに対して、チェルシーはホーム3、アウェー1。今週末のエヴァートン対マン・U、それに続くマンチェスター・シティ(マン・シティ)対マン・U戦のどこかひとつで引き分けになる可能性が大きい。
とくにエヴァートンとの戦いが大きな山場となるはずだ。現在5位のエヴァートンは、W杯で日本を沈めたケーヒルらを擁し、チーム全員が良く走り、強いフィジカルとファイティング・スピリットが特徴。今シーズン、エヴァートンのホームではリヴァプール、アーセナルも敗れている。チェルシーだけは勝ったものの、2対3とてこずった。
そして、忘れてはいけないのが、エヴァートンからマン・Uに移籍したルーニーの存在。クラブそしてファンから見れば、ルーニーはエヴァートンに育ててもらったにも関わらず、CL出場や欧州での活躍の可能性が大きいマン・Uへの移籍を選んだ裏切り者。試合中のブーイングばかりか、選手と監督たちの「ルーニーとマン・Uだけには負けてたまるか」と、モチベーションが高く、それが勝利への大きな要因となるはずだ。
チェルシーは、11月GKツェフが頭部に重傷を負うと、その後も立て続けに主力が離脱。12月、1月にはテリー、ジョー・コールと、ケガ人が続出し、勝つべきホームの試合で引け分けの連続だった。それがそのまま現在のマン・Uとの勝ち点差になっている。それでも、11月末のマン・Uホームの試合では、絶好調のマン・Uが不調のチェルシー相手に引き分け、勝ちきるほどの力の差はなかった。
さらに、ここに来てチェルシーはケガ人が続々と戻り、逆にマン・Uがファーディナンド、ネヴィル、ヴィディッチら守備陣がケガで戦列を離れている。事態は逆転しているのだ。
もうひとつ注目したい点は、両チームのベテランと若手。マン・Uで、いぶし銀の活躍をしているのがベテランのギグスとスコールズ。これに対してチェルシーで今シーズン急激に伸びた若手のミケルとディアラ。私は、とくにギグスとミケルが気になっている。
2シーズン前のFAカップ決勝、マン・U対アーセナル戦を取材したとき、「ギグスは終わった」と私は感じた。スピードが落ち、サイド・アタッカーとして往年のような突破ができなくなったギグスは、チームの中で居場所を失ったかのようだった。
しかし、ファーガソン監督が彼を再生させた。元々テクニックがありドリブルも上手いギグスを中盤の中央で使ったり、トップ下に配置することで彼のキープ力が生きた。自信を取り戻したギグスは再び左サイドでも輝いている。
一方、チェルシーのミケルは、今シーズン前半、中盤の守備的ポジションで使われたものの、マケレレと比較してポジショニングが今ひとつで、攻撃のビルドアップに際して効果的であるとは思えなかった。だが、シーズン後半に入りチームに馴染むにしたがってそれが改善されてきた。
CLバレンシア戦の第2戦では、ボールを味方守備陣から受ける位置は合格点。マケレレの長所である自分のボールを奪われない、相手の攻撃の芽を確実につむことに加え、ミケルは中盤で味方とワンツーをしながら突破して前に出られるのが強み。
私の予想は、リーグはチェルシーの逆転優勝。ただし、5月6日のアーセナルとのアウェーで勝つことができればという条件つきだが。そして、優勝が決まるのは直接対決の5月9日。FAカップも、調子を上げてきたチェルシーが、ケガ人続出で調子を落とし始めたマン・Uを破ると見ている。
そして、私はマン・UがCL準決勝2戦目でミランを破って決勝に進むのは難しいと予想している。マン・Uは消え、残念ながらチェルシーとの夢の決勝対決はなくなり、決勝はミラン対チェルシー。
ちなみに、今シーズン、マン・Uがプレミアのアウェー戦で負けたのは3試合ある。アーセナル、ウェスト・ハム、そしてポーツマスとの試合だ。20チームあるリーグ戦は単純計算で週末(土、日)に10試合あり、私はその中の2試合を選んでイングランド各地の試合を取材しているのだが、実は、マン・Uが負けた3試合全ての現場に私はいた。そして、今週末のエヴァートンとの試合に私は現場に取材へ行く予定だ。
マン・Uファンにとって私が厄病神にならなければ良いのだが……。






