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山田一仁●文・撮影 text&photo by Kazuhito Yamada

第72号(2007年3月29日)チャンピオンズリーグ、イングランド勢展望

チャンピオンズリーグ(CL)のベスト16で4チーム残っていたイングランド勢のうちアーセナルが消えた。昨シーズンのファイナリストであることを考えると意外だが、アンリ、ファン・ペルシ、エブエなど先発陣に怪我人続出だったことを考えると、予想どおりともいえる。それでも、若手が伸びているので、来季に期待したい。

準々決勝に進んだマンチェスター・ユナイテッド(マン・U)、チェルシー、リヴァプールは、それぞれローマ、バレンシア、PSVと当たり、イングランド勢の直接対決はなくなった。私は、この3チーム全てが準決勝に進むと予測する。その根拠は以下のとおり。

マン・Uは、プレミアでも首位に立っていてチームの調子がいい。特にC・ロナウドが絶好調をキープしている。ユーロ2004、W杯ドイツ大会とふたつの大会を通じて代表でレギュラーとしてプレイした経験が彼を大きく成長させた。

マン・U入団当初はテクニックを見せようとひとりよがりのドリブルが目立っていたが、今季はチームプレイに徹することができるようになった。試合の流れの中で、今何をするべきかの判断力が格段に向上。前記大会の準優勝、ベスト4という結果が大きな自信となってプレイに現われている。

攻撃に関しては彼がチャンスを作り、得点もするという獅子奮迅の活躍。スピードに乗ったドリブルは止められない。FKを蹴れば、曲げて小細工をしない代わりに、ブレ球の落ちるボールでゴールを狙う。野球で言えばスピードと球威のあるフォークボールのようなこのシュートは、GKにとっては脅威だろう。サイドアタッカーでありながらプレミアの得点王をドログバと争い、このままいけば今季の最優秀選手間違いなしだ。

それでも、短期レンタルのラーションがスウェーデンに戻り、マン・Uの好調のピークは過ぎたかもしれない。来週のCLにネビルら故障者が間に合うか心配だが、ユーロ2008予選に出場していないので、かえって治療に専念できるかもしれない。

現在のマン・Uの攻守のバランスを考えると、リヨン戦で爆発したトッティを擁するローマを破って、おそらくミランと準決勝を戦うことになるだろう。ミランとの力の差はほとんどないと見る。過去4シーズンで3回ベスト4に進出してきた結果を考えると若干ミランに分があるか。


チェルシーは、昨年12月のテリーの離脱で鉄壁の守備が崩れ、首位の座をマン・Uに握られているものの、不調といわれながらも8強まで進んでくるあたりは、さすがモウリーニョ監督。今季新加入のシェフチェンコは、移籍金約60億円に見合った能力を発揮できないでいたが、3月に入って本領を発揮し始めた。さらにテリーも復帰し、ジョー・コールも戻ってくる。これからベストの状態になる上り調子にあり、僅差だがバレンシアを退けて準決勝に駒を進めるだろう。

今シーズンのチェルシーは、4-1-3-2というマケレレの1ボランチにランパード、バラック、エシエンの中盤、そしてシェフチェンコ、ドログバの2トップという布陣でスタートし、後半相手が疲れてきたころにロッベン、ライト・フィリップスのスピードあるサイドアタッカーを入れて一気に勝負に出るという、時間帯によって全く異なる戦術を取れる。

現在、プレミア得点王争い首位のドログバに調子を上げてきたシェフチェンコのふたりが爆発したとき、チェルシーはCLの決勝の舞台アテネにいるだろう。

不安材料は、コンディションやプレイそのものよりピッチ外のトラブルによる選手の精神面だ。アブラモヴィッチが自身の離婚問題でサッカーへの興味を失い、クラブを手放すかどうか、またテリー、ランパードらの契約更新問題もある。それに加え、モウリーニョ監督の進退問題が選手のモチベーションに悪影響を及ぼさないかも心配の種だ。

チームの大黒柱となっているテリーとランパードは契約更新交渉が順調に進んでおらず、最悪の場合「バイ・アウト」(Buy Out)といって契約期間の残存期間を自分で買取り、他のクラブに移籍する可能性もある。この最悪の事態になった場合、ふたりがほかの国のリーグでプレイすることになり、実際、ランパードの代理人がユヴェントスと接触したという報道もあった。

モウリーニョも、テリーが怪我で離脱した際、1月の移籍期間にCBを取る予算をもらえなかったことからアブラモヴィッチとの確執が生じ、今季限りでチームを去ると報道する新聞も出た。これらの不安定要素がプレイに影響すると、チェルシーはCL、プレミアシップ、FAカップのタイトルのいずれも獲れないままシーズンを終える危険性もはらんでいる。


最後にリヴァプール。昨季に続いてリーグはどうも結果が伴わない。が、CLは特別な集中力が働くのか滅法強い。バルセロナに勝ったのは、相手が本調子でなかったことも救いだったが、アウェーで勝ち点3を得たその攻撃力は、素直に称賛すべきだろう。その中心はベラミーだ。ピッチ外では相変わらずの問題児だが、ピッチ上ではまるで別人。ジェラードが霞んでしまうほど最近の活躍は目を見張るものがある。

シーズン当初は、クラウチともうひとりを誰にするかというのがFWの選択肢だったが、ベラミーの調子がいいので、最近はベラミーとカイトの2トップが基本。チェルシー戦で得点した右サイドのペナントの活躍もチームのサイド攻撃を効果的にしているポイント。右からは彼が突破をはかり、左はリーセのロングシュートとオーバーラップ。これに怪我で離脱中のルイス・ガルシアが間に合うと右からの攻撃にさらにオプションが増える。

守備に関しては、私が以前から指摘していた問題点であるセンターバックが、アッガーとキャラガーの組み合わせで落ち着いてきた。そのリヴァプールで私が最も気になる点は、ウェストハムから1月に獲得したマスチェラーノ。ドイツW杯8強のアルゼンチン代表の主力が、降格争いのチームで出場できないという本人にしてみればやや理不尽な状況からの移籍。彼がCLの舞台でどれだけの能力を発揮できるか見てみたい。

準決勝が予想通りマン・U対ミラン、チェルシー対リヴァプールというカードになるか楽しみになってきた。


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