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山田一仁●文・撮影 text&photo by Kazuhito Yamada
第70号(2007年1月26日)
後半戦、プレミア王座に最も近いクラブは?

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 11月末のマンチェスター・ユナイテッド(以下マン・U)対チェルシー戦が引き分けに終わったときは、好調のマン・Uに対し、チェルシーは調子が今ひとつだった。この力関係から、チェルシーが調子を上げてきたら、チェルシーホームでマン・Uはどうやって勝つことができるのかという予感がしていた。

 しかし、その後、マン・Uは12月に入ってC・ロナウドが絶好調でチームを牽引。一方、調子を上げてくると思われたチェルシーは、キャプテンのテリーが12月中旬背中の怪我で離脱。これを境に鉄壁の守備に亀裂が走る。それ以前は、1試合で2失点したのは、負けたミドルスブラ戦とトッテナム戦だけ。それが、テリー離脱後7試合中5試合で2失点、3勝3分1敗。20日のリヴァプールとの試合ではカルバーリョも欠いて完敗。最悪の事態に陥った。

 首位マン・Uが21日のアーセナル戦に勝った場合は、勝ち点差が9となり、優勝が決まってしまうのではないかとさえ思われた。だが、マン・Uもアーセナルに負けてしまう。勝ち点差は6のまま。この状況を読者の皆さんはどのように評価するだろう。

 両者の今までの結果は、24試合でマン・Uが18勝3分3敗、一方チェルシーは15勝6分3敗。マン・Uが3勝している間にチェルシーは3引き分けしてしまった。そこがちょうどテリーが怪我で離脱していた時期の12月26日からの3試合連続の引き分け。

 私の分析は、チェルシーが3試合連続して勝てなかったのはテリーの不在が主要因。しかし、ポジティブに考えれば、3試合負けないですんだともいえる。点は取れるのだから、テリーがいれば勝てた試合とも分析できる。

 一方、マン・Uは12月絶好調ロナウドが6試合で7ゴール。しかし、1月に入ってわずかに1ゴール。アーセナル戦では完全に押さえられてしまった。マン・U絶好調のピークが12月だったと見ることができる。

 さて、今後はどう展開していくのか。チェルシーは、テリーがフル・トレーニングを始めた。うまくいけば2月から復帰できるだろう。欧州最優秀選手の力を示せないまま前半戦を終えたシェフチェンコは、23日のカーリングカップ(リーグカップ)準決勝で2得点。復調をアピールした。何が彼を変えたのだろう。今までなんとなくプレイしているように見えたシェフチェンコが、必死にボールを追い、味方のためにスペースを作り、五分のボールに食らい付いてランパードのゴールに結びつくパスまで出した。

 読者の皆さんは、ジョー・コールがモウリーニョ体制になった2004-2005シーズン前半、あまり起用されていなかったのを覚えているだろうか。イングランド代表でもあるコールは、攻撃の才能はあるものの、自分勝手なプレイや守備に問題があった。ボールを奪われると、「ああ、取られた」とそこで諦めた。ボールを持ち過ぎてチームのチャンスを潰した。

 だが、あるときを境に、彼はスタイルを変えた。ボールを奪われると、相手に掴みかかって奪い返しにいった。それまで試みたこともないようなスライディングタックルも見せた。そんなアグレッシブなコールに変貌した時、彼は先発の座を手にしていた。

 今、シェフチェンコに起こっている変化は、コールに起きた事と同じではないだろうか。もし、そうだとすれば、これからシェフチェンコは爆発する。テリーが戻り、シェフチェンコが本来の力を発揮し始める。そうなった時、首位マン・Uとの6という勝ち点差はもっと縮まるはずだ。

 私が取材したリヴァプール戦も、リヴァプールがよかったというよりは、チェルシーが自分たちのサッカーをすることができなかった。試合当日にカルバーリョが体調を崩し、フェレイラとエッシェンがセンターバックに入る緊急事態。チェルシーの弱みにリヴァプールが上手くつけ込み、チェルシーが自らミスをしてしまった。

 チェルシーの問題点は、むしろモウリーニョ監督とアブラモビッチ・オーナーとの関係だろう。テリーの怪我で勝ち点を取り逃してマン・Uとの差が開きつつある時に、アブラモビッチが現ロシア代表監督のヒディンクに将来チェルシーの監督にならないかと誘ったという報道。そもそも、ヒディンクがロシア代表監督に就任したのはアブラモビッチが説得したから。そして、給料を出しているのも実はロシアサッカー協会ではなくアブラモビッチの息のかかったロシアのサッカーを援助する組織だ。

 イングランドメディアは、モウリーニョ監督が来季はチェルシーを離れると書き立てる。これでは選手たちが安心して戦う環境ではなくなってしまうだろう。キャプテンのテリーが契約更改をしようとしているところだが、新しい契約にサインする条件としてモウリーニョ監督が来季もチェルシーに残るという保障を望んだ。

 これこそ、選手たちがモウリーニョ監督を必要としている証だ。

 ここでひとつ忘れてはいけないことがある。前半戦、調子が今ひとつだったチェルシーはシーズン半分の19試合を終えた時点で勝ち点45を上げていることだ。優勝した昨シーズンの最終勝ち点が91、その前のシーズンが95と言うことを考えると、前半戦の結果は決して悪いわけではない。だが、残り14試合。優勝するためにはもうひとつも負けられない。

 さて現在、4位に付けているアーセナル。若手に中心になって勝ちきれない状況が続いてきたが、最近その若さが爆発し始めた。その中心にいるのはセスク・ファブレガス。2シーズン前に彼を見たとき、これは将来伸びる選手だと予測したが、ここまで早く素晴らしい選手になるとは想像できなかった。

 アーセナルの試合を注意深く見てほしい。全ての攻撃は彼から始まっている。まるでベテラン選手のような動きをするファブレガスは、まだ19歳。視野が広いのは一流の中盤として当然として、一瞬で状況判断し、最も効果的な場所にパスを繰り出す。常にゴールへの最短距離のパスを狙い、それが無理な場合は左右に散らすというスタイルが花開きつつある。

 これからマン・U、チェルシーが熾烈なトップ争いをしている間に、アンリも戻ってきたアーセナルが、じわりじわりと2強に近づいてくるに違いない。

 チャンピオンズリーグのベスト16の試合が始まる2月。プレミアの首位争いはますます面白くなってくるだろう。

 マン・Uにとっての正念場は、まず2月4日のトッテナムとのアウェー。そして2月末から3月初めにフルアム、リヴァプールと続くアウェー。ここでポイントを取り損ねるようなことがあるとチェルシーに追いつかれる可能性がある。4月14日、チェルシーホームでの戦いが、優勝決定戦になるかもしれない。
プロフィール
山田一仁

ロンドン在住のカメラマン。プレミアリーグだけでなく、ヨーロッパ各国リーグの取材も精力的にこなしている。年に何回もロンドンと日本を往復し、また、ロシアにも活動拠点を置くなど、その活動範囲は非常に広い。

website>>> http://homepage3.nifty.com/kazphoto/

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