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山田一仁●文・撮影 text&photo by Kazuhito Yamada
第68号(2006年12月1日)
プレミア首位攻防戦から見えてきた力関係

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 今季のチャンピオンズリーグ(以下CL)、イングランド勢が好調だ。

 リヴァプールはC組トップ通過が確定。チェルシーもA組首位で2位以内での通過が確定。アーセナルはG組で首位、マンチェスター・ユナイテッド(以下マン・U)はF組で2位だが最終戦を最低引き分ければお互いにグループリーグを突破できる。

 ついでながらUEFAカップのグループリーグに残っているトットナム、ブラックバーン、ニューカッスルのイングランド勢3チームもベスト32への進出を決めた。

 先週末のプレミアの首位対決、マン・U対チェルシー戦は、今後のタイトル争いを展望する上で、両者の力関係を知るには絶好の機会だった。試合結果は1対1の引き分け。モウリーニョ監督が試合後「公平にみて引き分けが妥当な試合だった」と感想を述べて、私も同感。

 ボール・占有率は、マン・U39%、チェルシー61%。後半だけに限れば、この数字は30対70という割合に近くなる。試合前、ジョー・コールが「ボール占有率が高い方が主導権を握る」と発言していたことを考えると、チェルシーが勝って当然のように見えるが、チャンスの多さはマン・Uにあった。どちらが有利だったか判断する材料は、後半の両監督の選手交代にある。

 本来1対1の場合、試合終盤にホームチームが勝ち点3を得るために点を取りに行き、ビジターは勝ち点1の引き分けでよしと守りに入るのが定石。ところが、この試合両チームの選手交代は全く逆だった。

 モウリーニョ監督は、後半頭からジェレミに代えてロッベン、75分にはシェフチェンコに代えてJ・コールと勝ちにいった。一方、ファーガソン監督は86分サハに代えてオシェイ、ロナウドに代えてフレッチャーと守りを固めた。

 このとき、私は別の試合を取材後、カメラマン控え室でこの試合の生中継を見ていた。イギリス人中年カメラマンが「どうしてマン・Uは攻撃的選手を交代させるんだ。信じられないよ」と交代に反発する。それに対して若手カメラマンが「ファーガソンは引き分け狙いにいったのさ」と答えた。私は、後者の意見が正しいと思う。

 彼らの采配がこの今年一番のビッグゲームでの力関係を表わしている。後半だけに限れば3対7というボール占有率の内容で、このままでは追加点を取られる恐れがあると判断し、守備のてこ入れをしたファーガソン。追加点が取れると読んだのはモウリーニョ。

 しかし、これでマン・Uが久しぶりにタイトルを奪還できると思った人は考えが甘い。シーズンはやっと3分の1を終えて中盤に入ったところだ。本来の力を10と考えて今のパフォーマンスを計ると、マン・Uは9か9.5。それに対してチェルシーはまだ7くらいのものだろう。

 シーズン前半、調子が今ひとつだったルーニーがトップフォームになりチーム全体がすでにトップギアに入っている。それに対してチェルシーは、バラックが少しプレミアに慣れてきたものの、本来の力からみればまだ7割。シェフチェンコに至ってはまだ5割といったところ。

 そして正GKのチェヒが10月に頭部を負傷し数カ月離脱。同じ試合に交代で入った第2GKのクディチーニも負傷し、最近復帰したばかり。調子がいいのは、ドログバ、エシエン、カルバーリョ、コールあたりか。

 ベンチの選手をみても、チーム事情を探ることができる。プレミアではベンチ入り5人で交代3人。マン・U対チェルシー戦では、マン・Uがクシュチャク(GK)、エヴエ(DF)、オシェイ(DF)、シルヴェストル(DF)そしてフレッチャー(MF)という布陣。これは先行逃げ切り型といえるだろう。それに対してチェルシーは、イラーリオ(GK)、ボラルーズ(DF)、パウロ・フェレイラ(DF)、コール(MF)そしてロッベン(FW)と守備的にも攻撃的にも対応できる。この試合に限っては後半追い込み型の采配をした。

 仮にチェルシーに先取点を許した場合、マン・Uはより攻撃的にいくことは殆んど不可能。なぜなら、それに見合った選手がベンチにいないからだ。

 この力関係を見る限り、ホームで倒せなかった相手がこれから調子を上げてきたら一体いつ勝つことができるのか。

 9月のもうひとつのビッグゲーム、マン・U対アーセナル戦でマン・Uはホームで敗戦。マン・Uが後半戦、チェルシーとアーセナルそしてリヴァプールとのアウェーゲームを残していることを考えると現在の首位が安泰ではないことは明白だ。

 マラソンに例えると、トップを走っているものの、精一杯のマン・Uに対して余裕で背後に付いているチェルシー。精神的にプレッシャーを受けているのは首位のマン・Uに違いない。

 チェルシーは、チーム力が7割ぐらいの状態で、CLではバルセロナに対しても1勝1分けと勝ち越した。バルセロナがエトーを欠いていたとはいえその時点でのチーム力は8割。チェルシーは現時点でまだ余力を残して戦っている。過去2シーズンも含めて、CLでバルセロナと6戦して2敗しているが、モウリーニョの言葉を借りれば「11人対11人では負けていない」。つまり、退場者を出した試合で2敗しているのみで、同人数での対戦では2勝2分けの負けなし。

 CLはトーナメントステージまでまだ2カ月半ある。それまでにバラック、シェフチェンコそしてボラルーズらの今季移籍組がチームに馴染んでくると、残りの3割アップは間違いない。シーズン最後の3カ月でラストスパートできるようになれば、今シーズンのプレミアとCL優勝の可能性も大きく前進する。

 あえて心配な点を挙げるとすると、今季加入のDFボラルーズが大事な試合でポカをやっていることだ。10月31日CLのバルセロナとのアウェーでは、1点目の失点(デコのゴール)はボラルーズがロナウジーニョの動きにつられてデコをフリーにさせてしまった守備の連携のミス。本来マケレレがカバーに入っていたので、ロナウジーニョはマケレレに任せてデコに付いていくべきだった。2点目も、ロナウジーニョにかわされてからの失点。

 そして続く11月5日のトットナムとのアウェー。1点先行しながら同点に追いつかれた。それでもこのまま終わればOKだった試合が、左サイドをロビー・キーンにたて続けに2回フェイントでかわされてクロスを上げられ、レノンの決勝点となった。本来センターバックのボラルーズがサイドバックでミスを犯したことに言及するのは酷かもしれないが、そのミスが試合の結果に繋がる重要なものだっただけに、この先が心配だ。

 私がチェルシーの中でも最も気に入っている選手のひとり、パウロ・フェレイラが調子を落としているのも不安要素。これがチェルシーの唯一の問題点となる右サイドだ。今週半ばに行われたプレミア15節、ボルトン戦では先週アーセナルを葬る2得点を挙げたアネルカをジェレミが見事に押さえていた。ジェレミ、パウロ・フェレイラ、ボラルーズそして場合によってはエシエンも右サイドバックをこなせることを考えると、私の心配は無用かもしれないが。

 現在、チェルシーがらみの移籍で噂されているのは、1月の移籍期間にマンチェスター・シティの若手(18歳)右サイドバック、ミカ・リチャーズの獲得と、調子が今ひとつ上がらないシェフチェンコがACミランにローンで戻るというもの。そうなる前に、シェフチェンコにはプレミアで欧州最優秀選手賞受賞者としての実力を見せて欲しいところだ。
プロフィール
山田一仁

ロンドン在住のカメラマン。プレミアリーグだけでなく、ヨーロッパ各国リーグの取材も精力的にこなしている。年に何回もロンドンと日本を往復し、また、ロシアにも活動拠点を置くなど、その活動範囲は非常に広い。

website>>> http://homepage3.nifty.com/kazphoto/

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