| 山田一仁●文・撮影 text&photo by Kazuhito Yamada | ||
| 第67号(2006年11月10日) | ||
アーセナル不調の原因は何か?
ところが、10月28日の10節ホームの対エヴァートン戦に1対1で引き分けると、続く11月1日のチャンピオンズリーグ(以下CL)、グループG第4戦ホームの対CSKAモスクワ戦でも引き分け。そして11月5日のリーグ戦では、最下位争いをしていたウェスト・ハムにアウェーでまさかの敗戦。3試合でわずかに勝ち点1という足踏み状態に陥っている。CLのCSKAに負けた試合からは7試合で2勝3分け2敗。 ここで、トップ4強(チェルシー、マン・U、アーセナル、リヴァプール)に立ち向かうチームのアプローチについて説明しておこう。 2004-2005シーズンにモウリーニョがチェルシーの監督に就任してプレミアのチャンピオンとなり2シーズン目を迎えた昨シーズン。 いくつかのチームは4強に対して特別のスタイルで挑戦した。テクニックで上回っているチームに対して、1対1ではフィジカル勝負に徹する。この作戦を取ったのがブラックバーン。ファウルも辞さない肉弾戦に持込み、チェルシーとアーセナルにホームで共に1対0と勝っている。マンチェスター・ユナイテッド(以下マン・U)にはアウェー、ホーム共に勝利。 そしてもうひとつはエヴァートン。ブラックバーンほどフィジカル勝負ではないが、個人の勝負ではかなわないので、運動量で上回りチームで戦う意識が徹底している。相手が技術で上回るチェルシーとアーセナル戦では、ホームでそれぞれ1対1の引き分けと2対0の勝利を得ている。 このように上位チームに対して四つに組んでは確実に負けると判断し、特別の対策をして勝ち点を得るというチームが出てきた。今季のアーセナルのエヴァートン戦に関して言えば、フィジカル勝負の戦いにさらに別のアイデアが追加されている。それは、ボールが出たアウト・オブ・プレイの際に時間稼ぎをすることだ。スローインの際は、自分が投げると見せかけて、別の選手に譲る。その選手は身近な選手に投げると思うと、ロングスローにしようとやり直す。 一見何でもないことのように見えるが、90分の試合時間を通してこのような作戦を取れば、かなりの時間を稼ぐことができる。また、相手選手をイライラさせて精神的に追い詰める効果もある。実際、ファブレガスはエヴァートン選手のこれらの振る舞いにかなりフラストレーションをためていた。 11月1日のCL、CSKAモスクワ戦では、決定的チャンスが7回もあったにも関わらず無得点。しかも無人のゴールにシュートが枠に飛ばないというケースが数回もあった。試合後、ベンゲル監督は本来なら「7対0で勝ってもおかしくない試合だった」と運のなさを嘆いた。しかし、CSKAにも決定的チャンスは1回あり、結果として0対1での敗戦もありえた。 最近アーセナルが結果を出せない問題点をいくつか挙げてみよう。 1.イングランド人選手の少なさ アーセナルのイングランド人選手は1軍登録の27人中僅かに3人。先発で考えると限りなくゼロに近い。チェルシーは23人中7人。リヴァプールは25人中12人。マン・Uは29人中13人。 サッカーの母国イングランドでは、サッカーはボールを奪い合う格闘技である。その国で行なわれるリーグでは、イングランド人選手のボールを奪おうという執着心は特筆すべきもの。それがアーセナルの場合、他のチームに劣るのではないか。 2.アンリの不調 最近は、ファン・ペルシやアデバヨールとの2トップになる場合もあるが、1トップの形も多い。そうなってくると彼の好不調がチームの成績に与える影響も大きい。最近の数試合を見る限り中途半端なプレイが多い。ボールを何処でもらうかという動きがチームメイトと上手く合っていないことが問題だ。 3.格下相手には、横綱相撲で立ち向かう姿勢 アンリ、ファブレガスがアーセナルの攻撃を司るキープレイヤー。ウェスト・ハムは彼らがボールを持つと数人で囲んでボールを奪い取る作戦を取った。アンリ、ファブリガスが如何に優れた技術でふたりは何とかわせても、3人目にはボールを奪われていた。それに続くロシツキー、フレブも同様に数的優位を作られて餌食となった。 アーセナルの攻撃は、ペナルティーエリア周辺になるとダイレクトパスを多用して、相手守備陣を崩して決定的チャンスを作る。ここで、守ろうとしては手遅れ。だが、中盤では技術的優位が自信となるのかアーセナルの選手は結構ボールを持つ。そこで数人で包囲して数的優位の状況からボールを奪うという作戦がはまった。また、1対1(英語ではワン・オン・ワン)での五分のボールの奪い合いでは体を張った戦いに負けていた。 圧倒的な総合力の優位を持っているのだが、如何にして引き分けや負け試合をなくすのかというアプローチがない。このあたりが、モウリーニョ監督率いるチェルシーと大きく異なる。アーセナルが、勝ち試合を引き分けに、引き分ける試合で負けてしまうのに比べ、チェルシーは引き分けになる試合に勝ち、負ける試合を引き分けに持ち込むことができる。それは、格下相手に対してもよく研究し対策を考えるからだ。 4.右サイドバックのエブエが怪我で戦列を離れると代わりがいない。 エヴァートン戦では、ホイテを使っていたが、やはり右サイドからのオーバーラップという能力では格段に劣り、ホイテにボールが回ってくるシーンが少なかった。 昨シーズン、苦手意識の強かったCLで決勝進出という結果を出し、若いチームが今シーズンは大きく飛躍するだろうと私は信じた。が、最近の不調を見ると、CL決勝に辿り着いた自信が過信になっていないか心配になってくる。英国のTVでも、有名解説者が「サッカー本来の基本である、ボールを奪い合う戦いに勝てなければ、優れた技術や戦術も生きてこない」とアーセナルに警笛を鳴らしている。 |







