| 山田一仁●文・撮影 text&photo by Kazuhito Yamada | ||
| 第65号(2006年9月22日) | ||
躍進する昨季の不振組〜ポーツマス、エヴァートン、アストン・ヴィラ
ポーツマスは、昨シーズン後半降格の危機にあった。元監督のレドナップがサウサンプトンから1月に戻り、冬の移籍期間にトットナムなどから数人獲得。シーズン後半はその効果が出て、最後の10試合で20ポイントを獲得し、17位で降格を免れた。さらに夏の移籍では10人近くを獲得。特に他チームでお払い箱になった選手を上手く取り入れた。 まず稲本と同じウェスト・ブロムウィッチ・アルビオン(以下WBA)にいたカヌー、そしてアーセナルのキャンベルは共にフリーで獲得した選手だ。カヌーは稲本と共にベンチ要員に成り下がっていたのだが、ポーツマスに移籍すると、最初の3試合で4得点と大爆発。WBAのブライアン・ロブソン監督の目が節穴だったことを示しているようだ。 また、マンチェスター・シティ(以下マン・C)から獲得したGKジェームズの存在は大きい。イングランド代表のレギュラーはロビンソン(トットナム)に奪われたものの、それでもイングランドNO.2のGK。マン・Cはどうして彼を手放したのだろう。ほかにも同じマン・Cからアンドリュー・コールを、チェルシーからはローンでグレン・ジョンソン、ハイデュク・スプリトからはクロアチア代表MFニコ・クラニチャールも獲得した。 この夏の移籍で、確実に層が厚くなったポーツマス。選手が上手くチームにフィットすれば、UEFAカップ出場圏内も狙えそうだ。何しろ、ポーツマスはマン・U、チェルシーを押さえて現在首位。そして、限られた戦力で最大の効果を出すのが得意のレドナップ監督がいる。ここまで充実してきた戦力をどう生かすか、楽しませてもらおう。 一方、現在4位と好調なエヴァートン。一昨シーズンは4位でチャンピオンズリーグ(CL)出場権を獲得したものの、昨シーズンはCL予備予選で敗退。リーグ戦でも前半はまるで良いところがなく、降格圏内にいた。今シーズンは、クリスタル・パレスからアンドリュー・ジョンソンを獲得。2シーズン前に21ゴールを挙げる活躍からイングランド代表にも選ばれた男は、現在5ゴールで得点王争いのトップ。そして、ドイツW杯の日本戦で2得点を奪って日本を沈めたオーストラリア代表のカーヒルもいる。このふたりのエネルギッシュなプレイがエヴァートン躍進の原動力。 両選手ともにドリブルがいいとか、ヘディングが上手いとかいったレベルではなく、見ているものを爽快にさせるスピードと豪快さが特徴。プレイに迷いがなく、ガツーンと来る感じ。守っている方がどうしようか躊躇しようものなら一気に失点に結びつく。先日のマージーサイドダービーでリヴァプールを3対0で葬った試合は、このふたりが3得点し、リヴァプールを蹂躙した。彼らが元気のいい間は、エヴァートンの躍進は止まらないだろう。 そのエヴァートンの下、現在5位にいるのはアストン・ヴィラ。とくに獲得選手の加入による大きな効果はないのだが、マーチン・オニールを監督に招聘し、セルティック就任時にリーグ5連覇を成し遂げた実績のある新指揮官のもと、昨シーズンのあきらめムードからチームが180度変化した。 スコットランドリーグが、プレミアに比べてレベルが低く、セルティックとレンジャーズの2強だけが、ヨーロッパのカップ戦に通用するレベルだとはいえ、5連覇は並大抵のことではない。エリクソン後のイングランド代表監督の候補としても名前のあがっていたオニール監督だが、昨シーズンは、病気の妻のためにサッカーの仕事を離れ、看病をしていた。ベンチでは多くの監督がスーツ姿で采配するのに対して、ジャージ姿でいるこの監督は、ゴールが決まると大げさなガッツポーズでベンチを飛び回る。チームにとって新監督こそ、どんな選手の獲得より効果があったようだ。 さて、夏の移籍の最後の話題をさらったのは、ウェスト・ハムのテベス(写真)とマスチェラーノのアルゼンチン代表二人組だった。ブラジルの強豪コリンチャンスからの移籍で、W杯では準々決勝で惜しくも開催国ドイツに敗れたアルゼンチン代表とあって、ウエスト・ハムが一体いくらで獲得したのか、どうしてウエスト・ハムがこのスター選手2名を獲得できたのかに注目は集まった。 わかっているのは、コリンチャンスをコントロールしているメディア・スポーツ・インベストメント(以下MSI)がクラブを買収するのを前提に2選手を移籍させたこと。したがって、ウエスト・ハム自身は移籍金を払っていない。その事実がかえって憶測を呼んで、1シーズンプレイさせた後に他クラブに売ってその利益がMSIに流れるなどという噂が流れた。 MSIの中心人物はロンドンを拠点にしているイラン人のビジネスマンのキア・ジョーラブチャン。童顔の彼がイラン人というところがまた謎なのだ。国際社会では核開発問題で注目を浴びているイラン。そしてサッカーの移籍でもクーデターを起こしたと新聞で騒がれている中心人物もまたイラン人。 現在は、MSIに他の投資家が加わって、クラブ買収の話し合いがされている模様。この投資家の中にはロシアの石油成金も含まれているようだ。ここ最近、チェルシーがロシアの富豪アブラモヴィッチに、マンチェスター・ユナイテッドがアメリカの富豪グレイザー・ファミリーに買収されたのを皮切りに、アストン・ヴィラもアメリカの富豪ラーナーに買収された。そして今度はウエスト・ハム。次々とクラブが外国人の金持ちに買収されてしまい、地元のファンとしては心配なところだろう。アブラモヴィッチがチェルシー買収後、他のロシアの石油成金がアーセナルを狙っているという報道もあった。今や、世界の金持ちから見れば、プレミアのクラブは投資の格好の的となっている。 ウエスト・ハムは現在12位で、移籍の効果がすぐには出ていない。テベスは10日の試合でデビューしたばかりで、イングランドのサッカーに慣れるのに時間がかかるだろう。それでも、このチームは優秀な若手選手を育てるユースシステムでも有名であり、この数年イングランド代表に呼ばれた以下の選手は、いずれもウエスト・ハム出身。ランパード、ジョー・コール、リオ・ファーディナンド、キャリック、デフォー、グレン・ジョンソンと6名もいる。この6選手に加えて、リオ・ファーディナンドの弟、アントン・ファーディナンドも代表入りが近いと噂されている。そんなクラブで、テベスとマスチェラーノがプレミアのスタイルに順応した時、ウエスト・ハムがどこまで順位を上げているか楽しみだ。 |







