| 山田一仁●文・撮影 text&photo by Kazuhito Yamada | ||
| 第64号(2006年8月31日) | ||
開幕ダッシュに成功したマン・U〜移籍市場
今シーズンの特徴は、昨シーズン上位のチームがスタートでつまずいていることだ。チャンピオンのチェルシーは2戦目でミドルズブラに逆転負け。3位のリヴァプールは、初戦昇格チームのシェフィールド・ユナイテッドと引き分け。4位のアーセナルは2試合で1分け1敗、5位のトッテナムと6位のブラックバーンは共に1分け2敗と、この3チームは勝ち星なし。 そして、昨シーズン降格の危機にあったチームが躍進している。17位のポーツマスは、2勝1分けで驚きの2位。16位でシーズンを終えたアストン・ヴィラも2勝1分けで3位。 先頭を行くマン・Uは、ファーガソン監督と確執があったニステルローイをレアル・マドリードに放出し、戦力低下を心配されていたのだが、100%の勝ち点9を確保。トッテナムからイングランド代表のキャリックを獲得し、ロイ・キーンが去ってから懸念だったボランチ問題を克服したのは大きい。 しかし、3試合の対戦相手は、昨シーズン12位のフルアム、13位のチャールトンそして昇格組みのワトフォードで、勝って当然の相手とも分析できる。ワトフォード戦を見る限り、相手のミスで勝たしてもらったのであって、チームのパフォーマンス自体は良くなかった。その証拠に後半はファーガソンがテクニカルエリアを越えて、ピッチに侵入して激しく選手に指示を出していたほど。 ポジティブな面は、最近、力の衰えが顕著になったサイドアタッカーのギグスを中央のトップ下のポジションで起用して再起させたことだろうか。だが、DF陣は見ているものを満足させるほど充実しているとは言えない。シルベストル、リオ・ファーディナンド、ブラウン、そしてオシェイ。彼らは、最近成長が止まっている。怪我のエインセ、ヴィディッチそしてネヴィルが戻ってくると、守備が安定するだろう。 中盤はキャリックの加入で厚くなり、両翼のC・ロナウド+パク・チソンにルーニーを加えた攻撃は、リーグでチェルシーとトップを争う破壊力がある。 イングランド(英国人)+αを中心にチームを再編成しようというファーガソンの考えが見えてくる。過去数年間、クレベルソンやジェンバ・ジェンバなどを中盤で試してみたが、プレミアには馴染めなかった。9月初めのインタナーショナル・マッチのブレイク後、対トッテナム、対アーセナル戦で本来の力がわかるだろう。 一方、共に1敗したチェルシーとアーセナルは、内容としては悪くはないが、得点の機会を確実にゴールに結び付けられない状態が続き、相手に失点を許してしまった。ベンゲル監督本人も言っているように、「多くのチャンスを作って、ポジティブな面もある」。チェルシーは、相手を甘く見たというか、自信過剰な面もあったように見える。 新規加入したシェフチェンコとカルーを2トップで使い、バラックを加えた中盤を中央に寄せた守備的な配置の4−4−2。中央からパスを繋いでいってゴールに結びつけるという形をトライしていた。しかし、その反面、ロッベンとジョー・コールを怪我で欠いて、得意の外からえぐる攻撃ができなかった。このふたりが怪我から戻ってきて、本来の4−1−4−1のフォーメーションを組めるようになった場合、ロッベン+ジョー・コール(またはショーン・ライトフィリップス)+シェフチェンコ(またはドログバ)へのパスの2大供給元、ランパードとバラックの組み合わせが、爆発的な攻撃力となるか、楽しみだ。 さて、8月末の締め切りを前に、イングランドの移籍市場は例年以上に活発だ。移籍で最も効果的に選手を獲得したのは、結果に結びついているポーツマスだろう。すでに1月の移籍期間にショーン・ディヴィス、ペドロ・メンデス(共にトッテナム)やムワルワリ(オーゼール)を獲得して降格争いに生き延びたことで、監督のレドナップの得意技、「限られた予算でよい選手を取り、限られた持ち駒で最大の結果を出す」という手法は始まっていた。 彼は、この8月にその才能を最大限に発揮した。ベテランとはいえ代表クラスの選手を4人も獲得したのだ。GKのジェームス(マン・シティ)、キャンベル(アーセナル)、カヌー(ウェスト・ブロムウィッチ、以下WBA)そしてローンで獲得のグレン・ジョンソン(チェルシー)。ジョンソンは元々レドナップが指揮を執っていたウェストハムの出身だから納得もいくが、前者3選手は驚きだった。 特にカヌーはWBAで、昨シーズン準レギュラーとしてしか起用されておらず、出場25試合(交代出場8)で5ゴール。ところが今シーズンは3試合ですでに4ゴール。WBAの監督ブライアン・ロブソンの目が節穴だったのではと疑いたくなる出来だ。 現在、ベンチを暖めている稲本も、本来力があるだけに、レッドナップのような監督に見初められて移籍したほうが、賢い選択だと私は信じている。 同様に結果が結びついているのは、アストン・ヴィラ。クラブそのものを売却し、土台から崩れてしまいそうになってしまったクラブは、元セルティック監督のオニールを獲得し、選手のやる気に火をつけた格好になって蘇った。 今シーズンの移籍のもうひとつの特徴は、選手が自ら移籍志願を公にしている点だ。アシュリー・コール(アーセナル)、ギャラス(チェルシー)そしてマルブランク(フルアム)。彼らの共通点は、自分に対するクラブの処遇が満足できないことや契約更新を拒否していること。外国からの移籍も含めるとマン・Uへの移籍を志願したハーグリーブス(バイエルン)も同類となる。マルブランクはトッテナムが狙っている。そしてコールとギャラスは交換トレードというウルトラCの可能性もある。 ただし、移籍が上手く成立しなかった場合は、新たな問題が起きる。クラブにとって忠誠心のない選手をチームに置いておくことは、チームの士気に大いに影響をおよぼすからだ。 モウリーニョもこう嘆いている「私の監督歴で、チームのために戦いたくない選手を抱えるのは初めての経験だ」と。 移籍選手の中で、今シーズン活躍が期待できる選手をリストアップしてみよう。キャリック(マン・U)、カヌー(ポーツマス)、アンディ・ジョンソン(エヴァートン)、バラック、シェフチェンコ、カルー(チェルシー)、カイト(リヴァプール)、アネルカ(ボルトン)、トラベルシ(マン・シティ)、バラード、キュードリュ(フルアム)、マルティンス(ニューカッスル)、ベルバトフ(トットナム)、ハッセルバインク(チャールトン)そしてロシツキー(アーセナル)。 この中で私の一番押しの選手は、バラード(フルアム)。今はまだ目立った存在ではないので、読者の皆さんは私の意見を疑うかもしれないが、数カ月して、彼の活躍にきっと驚いてもらえるはずだ。 欧州本土から各国代表の大物が移籍したプレミアシップが、「世界最高リーグ」の名称をスペインから奪うべく発進した。 |






