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山田一仁●文・撮影 text&photo by Kazuhito Yamada
第63号(2006年8月9日)
移籍市場断然リードのチェルシー

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 W杯イヤーの今年は、大会が終了してから移籍市場が一気に活性化すると思っていたが、プレミアチャンピオンのチェルシーは、大会前の5月にバラックを獲得。それに続きW杯直前に、2004年のバロンドール(欧州最優秀選手)に輝いたシェフチェンコをミランから獲得。正確な移籍金は公表されていないが、クラブ史上最高額の60億円以上といわれている。

 私が最初にシェフチェンコのプレイを見たのは、98-99シーズンのチャンピオンズリーグ(以下CL)の準決勝1戦目、ディナモ・キエフ対バイエルン。旧ソ連から独立したウクライナの首都、キエフのクラブに素晴らしいFWがいると噂に聞いていたシェフチェンコは、レンズを覗いて彼を追いかけても思ったようにボールには絡んではくれなかった。しかし、ボールを持つとアッという間にフレームから消え、ゴールを決める。ボールをもらってからのスピードが速い。ドリブルで派手に相手を抜くというより、ボールを持った時の素早さが異次元なのだ。なるほど、FWというのは、試合中ずっと目立っていなくても、得点のチャンスの時だけ我々をうならせるプレイをすれば良いのだと改めて認識した。

 一方、バラックを生で見たのは01-02シーズン、レヴァークーゼンがCL準々決勝でリヴァプールを下した試合。中盤でボールを持ったバラックに、まだ若造だったジェラードがシュートを防ごうと果敢にタックル。しかし、回りを良く見ていたバラックはシュートを打つと見せかけて、ジェラードのタックルをかわし、フリーで狙い済ましてゴールを決めた。

 優秀なストライカーは、出場試合数の半分のゴールを決めるといわれる。つまり、2試合に1点の割合で得点する。バラックは中盤の選手でありながら、レヴァークーゼンではリーグ戦79試合27ゴール(34%)。バイエルンでは107試合で44ゴール(41%)という高い確率でゴールを奪った。私は、バラックが21世紀の新しいスタイルのボランチだと信じている。

 チェルシーはそのほか、フェイエノールトからコート・ジボワール代表のカルーと、ノルウェーのリンからナイジェリア代表のマイケル、ふたりの若手を獲得。マイケルは本来マンチェスター・ユナイテッドに行くことが殆んど決まっていたのをチェルシーが横取りした形になった。さらに、アーセナルのアシュリー・コールがチェルシーに移籍の可能性がある。ベンゲル監督は、今週中に決定することを望んでいるためか、アーセナルのCL予備戦3回戦のアウェーの試合にコールを連れていかなかった。

 一方、チェルシーを去った選手もいる。ダフ、グジョンセンがそれぞれニューカッスル、バルセロナへ。彼らにとっては、良い移籍と言えるだろう。特にグジョンセンはバルセロナのスタイルに合っている。他には、デル・オルノがバレンシアへ、ヤロシックはセルティックへ、そしてクレスポはインテルへ。グレン・ジョンソンはローンでポーツマスへ移籍した。

 現在、問題になっているのは、米国ツアーに参加しなかったギャラス。ギャラスはポジションが希望するセンターバックではなく、左サイドバックに配置されることに不満を持っているようだ。自ら、チェルシーを去ることを公言し、モウリーニョ監督はチームの規律を乱すギャラスに対し、彼の背番号13をバラックに渡してしまった。現在、チェルシーは、ギャラスへのオファーは何処からも無いとしているが、噂ではアーセナルが触手を伸ばしているらしい。

 さて、移籍選手を加えたチームのラインアップはどうなるかという関心の的は、ランパードとバラックが共存出来るかどうかだ……。その答えは、米国ツアー中の練習に潜んでいた。8月上旬、バラックがチームに加わったロサンゼルス。私が取材した練習では、ランパードとバラックが他のチームメイトと別の色のビブスを付けてハーフゲームをしていた。このふたりにボールを集めて攻撃を組み立てる。これこそモウリーニョ監督が試したい中盤に違いない。

 おそらく、今季もチェルシーのフォーメーションの中心は、4−1−4−1になるだろう。これは、昨季同様、攻めに転じた時は、4−3−3に近くなる。考えられる先発は、DFは右から、フェレイラ、テリー、カルバーリョ、ブリッジ。ボランチがマケレレ。中盤が、右からコール(ライト・フィリップ)、バラック、ランパード、ロッベン(カルー)。そして1トップにシェフチェンコかドログバの調子の良い方。アシュリー・コールがアーセナルから移籍した場合には、左サイドバックの先発はコールになるだろう。

 試合の展開や相手によっては、シェフチェンコとドログバの2トップもある。右サイドのアタッカーにライト・フィリップス。ボランチにエッシェンというオプションも考えられる。また、先制して、守りきる展開になった場合には、バラックやランパードに変えてエッシェンを投入し、中盤の守りを強くする作戦に出るだろう。

 エッシェンは、近い将来マケレレの後釜になるだろう。また、バラックかランパードが怪我をした場合には、ジョー・コールやカルーを持ってくることもできる。中盤のオプションは、バラックの加入で格段に増えた。何しろ、パスが出せてゴールも奪える選手がふたりになったのだ。昨シーズン、ランパードはプレミアでチームトップの16得点。バラックもレヴァークーゼンの最後のシーズンに17ゴールを挙げ、得点王争いをしていたほどだ。

 今シーズン心配しなければいけないポイントは、スター軍団になりつつあるチェルシーをモウリーニョがコントロールできるかどうか。監督の采配そのものには疑いの余地は無いが、スター選手を自分の支配下に置けるかどうかが、一番の要因になるはずだ。モウリーニョがこの問題を解決できた時、チェルシーの黄金時代がやってくる。

 プレミア3連覇とCL優勝も夢ではない。
プロフィール
山田一仁

ロンドン在住のカメラマン。プレミアリーグだけでなく、ヨーロッパ各国リーグの取材も精力的にこなしている。年に何回もロンドンと日本を往復し、また、ロシアにも活動拠点を置くなど、その活動範囲は非常に広い。

website>>> http://homepage3.nifty.com/kazphoto/

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