| 山田一仁●文・撮影 text&photo by Kazuhito Yamada | ||
| 第62号(2006年5月25日) | ||
CL決勝、アーセナル惜敗〜アンリ残留
ノルウェーの主審ホーグは、試合後「もう何秒か考える余裕があれば、違う決定になっていたかもしれない。バルセロナにアドバンテージを与えて、ゴールを認め、レーマンにはイエローカードを示すことも出来た」と振り返っている。たしかにそうなっていれば、もっと試合は面白くなっていたかもしれない。バルセロナ、アーセナル共に攻撃的チーム。点の取り合いになっていい組み合わせだ。 初っ端からのレッドカード。11人対10人の決勝は、スリリングな展開をし始めた。先制したのは、10人になってしまったアーセナル。決勝の舞台は我々に、ふたつ目の驚きを用意してくれた。キャンベルが、アンリのFKをヘッドでゴールに流し込んだ。これぞキャンベルの真骨頂。 前回のコラムで、「ボール回しに不安があるキャンベルは、プレイしない方がアーセナルにとっては良いのかもしれない」と書いた私は、キャンベルに謝るべきだ。一方、私が注目していたエブエは、ロナウジーニョだけでなく、エトーにも1対1では抜かれることはなかった。 両チームとも本来ゲームメイカーとなる攻撃的MFは、相手に上手く抑えられて、期待したほど機能していない。バルセロナのロナウジーニョ、デコ。アーセナルのファブレガス。私が彼らのプレイに満足できる程には、彼らは輝いてはいなかった。この3人が本来持っている才能を披露することができていれば、試合はさらに面白くなっただろう。 それでも、アーセナルは75分間よく守った。レーマンを失ってからもバルセロナに本来の攻撃をさせなかった。後半残り15分何とか踏ん張れば、CL初優勝という結果を歴史に残すことができたアーセナル。アンリが後半、GKと1対1になるチャンスに決めていれば、2対0になっていただろう。 しかし、アーセナルファンが優勝を信じ始めたとき、試合の流れをバルセロナへと変えたのは、後半15分途中交代で入ったベテラン、ラーション。セルティックからバルセロナに移籍した彼はFWでありながら、ラストパスも出せる。セルティックで見せていたその才能を、彼はCLの決勝という大舞台で披露した。76分と80分のエトーとベレッチのゴール。わずか5分間に、このふたつのゴールをお膳立てするパス。私が選んだマン・オブ・ザ・マッチはラーションだ。アーセナルがつかみかけていたCL優勝カップは、雨にぬれた手から滑り落ちていった。 決勝が終わってみれば、試合の展開はバルセロナがチェルシーと戦ったベスト16の初戦に似ていた。メッシへのファウルでデル・オルノ退場。10人になったチェルシーが先制したが、バルセロナに後半2点を奪われた。この試合の主審もCL決勝と同じホーグ。バルセロナの2試合でレッドカードを出したこの偶然は、読者も再分析する必要があるかもしれない。 さらに付け加えるならば、ノルウェーの審判団(主審、線審ふたりとベンチの予備審判の合計4人)のうちの1人(線審)は、ノルウェーの新聞にバルセロナのユニホームを着た写真が掲載され、試合の前日に急遽UEFAによって外されたとのこと。さらに、アーセナルには決勝の前から移籍問題が持ち上がっていた。アンリが残るか、バルセロナに移籍するかだ。 プレミアで4位に滑り込み、来季のCL出場権を得たことによって、アンリが残留するだろうと私は思った。だが、決勝でバルセロナに負けたことによって、バルセロナに行くことになってしまうのではないかと考え直した。しかし、結果は思ったより早く出た。アンリはCL決勝の翌々日、5月19日(金)に記者会見し、アーセナルと4年契約にサインしたことを発表。 その理由がかっこいい。「移籍しようと思ったが、自分のハートに問いかけると、私に残れとつぶやいた」 この1週間、移籍について様々な動きがあった。 CL決勝前の5月15日(月)、チェルシーはバイエルンのバラック移籍を発表。現在、ミランのシェフチェンコを狙っていて、これも時間の問題だと報道されている。シェフチェンコ本人は今週末までにどうするか決めると言っているようだ。 さらにレアル・マドリードのロベルト・カルロスもチェルシーのターゲット。モウリーニョ監督は、すでに「3人がチームを離れ、その代わり3人のワールドクラスの選手を獲る」と公表。ギャラスがミランに移籍希望。ドログバもイングランドのDFのプレッシャーにうんざりし、移籍を希望。だが、クラブは認めず。リヴァプールはシセがマルセイユに移籍の噂。 そして、このコラムを書き上げる直前に、ニュースが入ってきた。ボルシア・ドルトムントのチェコ代表ゲームメイカー、ロシツキーがアーセナルと契約したとチェコのメディアが報道。オーストリアのチェコ代表のトレーニングキャンプから、アーセナル契約の決着のために抜け出すことを許されたとのことだ。 これが本当なら、アンリが残っただけでなく、中盤の攻撃オプションがさらに増えることになる。つまり、ピレスのビジャレアルへの移籍が決まったと見てよいのだろう。だが、ファブレガスが現在の指令塔。ロシツキーも司令塔タイプだけにふたりをどう使うのかベンゲルの采配が気になる。 いよいよワールドカップ前に移籍の話題も盛り上がりを見せてきた。6月9日までに、どのチームが誰を獲るかで楽しめそうだ。イングランドでは、チェルシーがプレミア優勝。リヴァプールがFAカップ優勝。マン・Uはリーグカップ優勝。アーセナルはCL決勝に進出したものの惜敗で準優勝。トップ4強でアーセナルだけが唯一タイトルを取れなかった。だが、このアーセナルを一番警戒しているのは他でもない、モウリーニョ監督だ。 「CL決勝で負けた彼らは何もタイトルを取れなかった。これが来季のモチベーションになる。若いチームが経験を積んだ。アンリも残って来シーズンはアーセナルが我々にチャレンジしてくる」と分析。 プレミアシップは、来シーズン、チェルシーを筆頭に、リヴァプール、アーセナルそしてマン・Uの激しいタイトル争いになるに違いない。 |







