| 山田一仁●文・撮影 text&photo by Kazuhito Yamada | ||
| 第61号(2006年5月9日) | ||
アーセナル、リーグ4位確保〜ヨーロッパの頂点へ王手
7日の最終戦は、アーセナルが1点先行。数分後、ウエストハムも先取点。だが、ウィガンが同点ゴールを奪うと、トットナムも同点弾。携帯電話やラジオで情報を集めるそれぞれのファンが喜んだり、落ち込んだりと、スリリングな1日だった。 果敢にチャレンジしてくるウィガンにとどめを刺したのはアンリ。同じ頃、トッテナムは2失点目を喫し、CL出場権の望みを失った。トッテナム敗戦の原因のひとつに、チームで泊まったホテルでの食あたり(食中毒)があった。10人の選手が影響を受けたという。結局、トットナムはUEFAカップに出場することになった。 さて、CL決勝。昨年のリヴァプールに続いてイングランドを代表して戦うアーセナル。ロナウジーニョを中心として超攻撃的サッカーのバルセロナとの勝算は? 総合力からするとバルセロナが頭ひとつ上にいる。怪我で長期離脱していたボランチのシャビも復帰し、決勝までにメッシも間に合いそうなので、バルセロナはベストメンバーを組める。 一方アーセナルは、キャンベルが戻り、アシュレイ・コールも先週末の試合から1軍に復帰した。だが、プレイの内容を見ると、このふたりが決勝に出るのは、アーセナルにとってあまりよいことではないように思うのは私だけだろうか? キャンベルが不得手とするボールのフィードは、ビジャレアルとの2戦目でも明らかにチームにマイナスだった。やはり、CLの連続無失点試合記録を作ったセンデロスとトゥレのセンターバック。そして、左サイドバックがフラミニ、右サイドバックがエブエで戦った方が、やりやすいのではないだろうか。アーセナルが、バルセロナにゴールを奪われるとすると、キャンベルかコールのミスからはないだろうか。 試合の見所は、バルセロナの攻撃をアーセナルの守備がどう受けとめるか。中盤は高いレベルでのボールの奪い合いになるだろう。中盤を制したものが試合の主導権を握る。バルセロナは、ロナウジーニョを筆頭に、エトー、メッシ、ジュリ、ラーション、デコ、イニエスタら中盤から前線にかけて攻撃のどのポジションにも必ずバックアップがいる。ロナジーニョを除いて、数名怪我をしても戦力が落ちないくらい攻撃陣は充実しているのだ。 アーセナルの攻撃陣はバルセロナと比較すると少し落ちるが、現在の守備力ならバルセロナを上回っているだろう。バルセロナの攻撃に上手く耐えて、数少ないチャンスをファブレガス=アンリのホットラインで物にできるとアーセナルに希望が出てくる。 個々の対戦に目を向ければ、ポジションごとの楽しみな組み合わせがある。私が一番注目しているのは、左サイドからゲームを作るロナウジーニョと、ここのところ毎試合ごとに成長しているエブエ。どちらが1対1を制するか、このふたりから目が離せない。ロナウジーニョに自由自在に動かれると、主導権をバルセロナが握ることになる。エブエがアーセナルの生命線になるかもしれない。 右サイドのメッシまたはジュリとフラミニまたはコールのマッチアップも見どころだ。メッシが万全の状態で復帰してくるとアーセナルにとっては厄介だろう。バルセロナの左右からの攻撃で崩された場合は、アーセナルの敗戦を意味する。 中央のエトー対センデロス+トゥレ。そして、アンリ対プジョル+マルケス。エトーとアンリのスピードにDFふたりがどう対応するか。 中盤はゲームメイカーのデコと今月19歳になるファブレガスの対峙。ポルトでCLチャンピオンとなったデコと、U17世界大会の最優秀選手ファブレガスのどちらが中盤の主導権を取るかは、試合の流れをコントロールする上で、結果に繋がる大きなポイントだ。デコは、間を取るのが上手く、ドリブルからのパスが得意。ファブレガスは、ゴール最短距離の縦パスを常に狙う。共に視野が広く、試合を決定付けるパスが出せる。 ところで、プレミアシップ、CLの結果はチームにとっても選手にとっても移籍の判断要因となる。すでに各チーム、各選手に思惑があるようだ。アーセナルは、ベテランのベルカンプは引退。完成間近の新エミレーツスタジアムで7月に引退試合の花道が用意されている。 ピレスは当初、CL準決勝で破ったビジャレアルに移籍するとの噂があったが、ここに来てセリエAのローマ、フィオレンティーナもピレスを狙っていることがわかった。アーセナルは30歳を越えたベテラン選手には単年契約というスタイルをとっているため、複数年契約を望むピレスは、他クラブに移籍する可能性大。 アンリはバルセロナへの移籍が噂されているが、彼はシーズン終了まで口を開かないことに決めている。その理由は、アーセナルがCLに優勝するか、リーグ4位を決めて来季のCL出場がかなえば、残留の可能性もあるからだ。CL出場が無くなれば、移籍と考えているようだ。これも、昨シーズンのリヴァプールのジェラードの立場と似ている。チェルシーに移籍の噂があったジェラードは、リヴァプールのCL優勝でチームに残ることを決定。 だが、アーセナルはリーグ4位を決めて、来季のCL出場は確保できた。アンリがアーセナルの新エミレーツスタジアムのピッチに現れる可能性は高いだろう。監督のベンゲルは、アーセナルが無冠に終わった場合、首の可能性もでてくると私は予測したが、CL決勝進出とリーグ戦4位で来季も安泰だろう。しかし、クラブの会長が「ベンゲルがもう十分にアーセナルで仕事をしたと告げて辞めるとなった時、我々はどうするべきか想像がつかない」と発言したことから、CLのタイトルをベンゲルが獲得した時、「もう十分に満足な成績を残してやることはなくなった」とアーセナルを後にする可能性もあるかもしれない。 不思議なもので、昨シーズン、オーウェンはCLでの活躍を夢見てリヴァプールからレアル・マドリードに移籍。だが、レアルでは十分なプレイの機会が与えられず、オーウェンの去ったリヴァプールがCL優勝。今シーズン初め、アーセナルのヴィエラが同様の理由でユヴェントスに移籍。だが、結果はアーセナルがユヴェントスを破って、決勝に進出。移籍が思惑通りに行くとは限らない。 今までのCL決勝は、試合そのものはどちらかというとつまらないものになってしまっていたが、今回のアーセナル対バルセロナの戦いは、久しぶりにエキサイティングな試合になる期待が持てる。 昨シーズンからファブレガス、ファン・ペルシなど若手選手を起用し、世代交代を敢行したアーセナル。主将ヴィエラが抜けた今季は、エブエ、センデロスらの活躍でさらに若返った。私は、彼らの若いエネルギーに期待したい。 今年のバロンドール(欧州最優秀選手賞)はCLで勝った方の中心選手に渡されるだろう。ロナウジーニョとアンリのどちらかの可能性が高い。アーセナルが勝つと、昨年のリヴァプールに続いて、”欧州にイングランドの時代がやってきた”と再認識させてくれるに違いない。 |








