| 山田一仁●文・撮影 text&photo by Kazuhito Yamada | ||
| 第59号(2006年3月23日) | ||
崖っぷち、稲本〜W杯の前に、残留争い
何しろ、チームは降格ゾーンで苦しんでいる。今シーズンのプレシーズンマッチでは、マン・オブ・ザ・マッチ(試合の最優秀選手)を連取するも、開幕で先発後、2カ月ほど使ってもらえなかった。ロブソン監督は、現役時代にイングランド代表とマンチェスター・ユナイテッドで主将を務めていた経歴の持ち主。ファイティング・スピリットのある選手として鳴らしただけあって、稲本にもっとアグレッシブなプレイを求めたのだろう。 2001年、海外初移籍のアーセナルでチャンスを生かせず、リーグ戦に一度も出場できなかった男は、W杯で自信を取り戻し、フルアム移籍に活路を見出す。現役時代プラティニと共にフランスの黄金の中盤を形成したボランチだったティガナ監督は、稲本の攻撃力に目を付け、本来のボランチから攻撃的MFの位置にコンバートした。 私は、今でも稲本のインタートト・カップ決勝でのゴールを忘れない。イタリアのボローニャを相手に、初戦、交代出場し最初のタッチで強烈なタックルからボールを奪いそのままゴール。驚きと感動のあまり、イングランドのベテラン記者が「彼は、いつもあんなタックルをするのか」と日本の報道陣に聞いてきたほどだ。そして、2戦目ホームで、ハットトリック。チームを優勝に導き、UEFAカップ出場権を得る。フルアムファンは、日本から救世主がやってきたと思ったに違いない。 しかし、2シーズンに渡り、開幕時は調子がよいのだが、秋から冬になると調子を落とす。シーズンを通して戦う体力がないのか、それとも、試合を通して走りきる体力がないのか途中から失速する。2004年春には、イングランド代表戦で骨折し、フルハムと正式契約すると見られていた状況が一変した。どうも運が悪い。だが、今シーズンは今までの欠点を自覚したように、問題点が修正され、フル出場も増えて、レギュラーを勝ち取った。 昨シーズン、最終試合で残留を決めたWBAは、今シーズンも降格圏をさまよっている。降格するのは、3チーム。最下位のサンダーランドは当確として、降格争いは、ポーツマス、バーミンガムそしてWBAの3チームの戦い。 ポーツマスは現在19位だが、週末の試合で今季昇格し10位と好調を維持しているウエスト・ハムをアウェーで2対4と撃破。1月の移籍期間でトッテナムから獲得したショーン・デービス(元フルアムで稲本とプレイしていた)とペドロ・メンデス、そしてドイツのヴォルフスブルグからアンドレス・ダレッサンドロ(元アルゼンチン代表。2001ワールドユース優勝メンバー)と中盤の3人が入ったのが大きい。そして、監督は限られた駒を最大限に活用するのが上手いレドナップが戻った。残り8試合で、ホーム試合が5試合もある。しかも、最下位サンダーランド相手がそのうちのひとつ。 バーミンガムは、年明けからのリーグ戦で勝ち星がわずかに2。21日のFAカップ準々決勝では、ホームでリヴァプールに0対7の大敗を喫して、地元ファンからブーイングが出る始末。メルヒオット(元チェルシー)、バット(元マン・U)、ヤロシック(元チェルシー)、ダン(元ブラックバーン)、へスキー(元リヴァプール)など元代表や、U−21代表だったいい選手はいるのに、結果が伴わない。チーム全体が自信を失っているようだ。残り9試合でホームは4試合。とくに、これからの4試合は、マン・U、チェルシー、ボルトン、ウィーガンと上位陣との対戦が続く。これで全敗すると、一挙に総崩れする恐れも。 そして、ウエスト・ブロムウィッチは残り8試合で、ホームでの試合はわずかに3。降格圏に近い相手は、アストン・ヴィラのみ。それでも勝ち点差は7。残り試合にいくつ勝てるかというより、いくつ引き分けにできるかを考えた方が良いかもしれない。昨シーズン同様、最後の試合までもつれ込むだろう。WBAは、先の2チームと比較すると、選手のレベルが低い。試合を見ていて悲しくなるほど、個人の技術は低い。プレミアのレベルで戦えるのは、ゲラ(ハンガリー代表、MF)、グリーニング(MF)とカヌー(ナイジェリア代表、FW)くらい。まして、上手いと思わせるパスを出せるのは、中盤では稲本ぐらいしかいないのが現状。したがって上位チームと戦うと、ボールがキープできなくて、ロングボール主体になってしまう。中盤でボールを回す余裕がないので、稲本の良さも活きてこない。守備に回ることが多く、彼の攻撃に転じた時の突破力を見せるチャンスが少ない。 稲本がW杯で再び活躍し、来シーズンは降格争いではなく、プレミアの中堅クラブでプレイする姿を見てみたい。 |







