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山田一仁●文・撮影 text&photo by Kazuhito Yamada
第57号(2006年2月16日)
混沌としてきたプレミアの4位争い

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 2月の大一番、リヴァプール対アーセナル戦は、1対0でリヴァプールの勝利に終わった。これでプレミアは、上位が3つのグループに分かれてきた。

 首位、チェルシーから12ポイント離れての2位争いが、マンチェスター・ユナイテッド(以下マン・U)とリヴァプール。その差は3ポイント。そして、さらに6ポイント離れての4位争いが、トットナム、アーセナル、ウェストハム、ボルトン、ウィガン、マンチェスター・シティそしてブラックバーンあたりまで。

 アーセナルが、優勝戦線から脱落したと思ったら、今度はチャンピオンズリーグ出場権の4位も危うくなってきた。4位争いの中では、トットナムとボルトン、そしてここのところグッと躍進してきたウェスト・ハムの3チームがアーセナルを脅かす存在。

 とくに躍進著しいボルトンは、現在の監督アラダイスが99−00シーズン途中に就任してわずか2シーズンでプレミアに昇格。最初の2シーズンは16位、17位と降格ゾーンで何とか生き残ってきた。が、03−04シーズンに7位となると、昨シーズン6位でクラブ史上初のヨーロッパ進出。UEFAカップ出場権を得た。

 通常、初めてヨーロッパのカップ戦に出場するチームが陥るのが、持ち駒が豊富でないために、リーグ戦と欧州カップ戦を戦ううちに、チーム全体が疲労し、その結果リーグ戦の順位を大きく落としてしまうこと。今シーズンのミドルズブラが良い例だ。

 だが、アラダイスは、各国から不良債権の選手を安値で連れてきて、チームを強化する得意の戦法を活用。この作戦は、今シーズンとても上手くいっている。リヴァプールからのローンだったディウフ(セネガル代表)を完全移籍で獲得。ランス(フランス)から、やはりローン移籍だったファイエ(セネガル代表)が、シーズン中に完全移籍。

 日本代表の中田もこれらのひとりで、フィオレンティーナからローン移籍したのだが、今のところリーグ戦26試合中、先発8、途中出場3と残念ながらレギュラー獲得には至っていない。

 1月移籍で期待するのは、ブラックバーンで00−01シーズン23ゴールを挙げたジャンセン。ここのところずっと干されていたのだが、チャンスをいかして定位置を獲得できるか。

 一方、トットナムは、昨シーズン途中に辞任したサンティーニ監督に代わり、アシスタント・コーチ、マルティン・ヨルを監督に抜擢。今シーズン、チームの大改造に臨み、GKケラー、MFデービス、FWカヌーテらを放出。実力派のダーヴィッツ(ユヴェントス)、イ・ヨンピョ(PSV)、ジーナス(ニューカッスル)を獲得。かれらが確実にレギュラーで活躍し、現在4位と大当たり。FWはミド(エジプト代表)を中心に、デフォーとキーンを上手く使い分け、なおかつ競争意識を持たせている。

 リーグ優勝2回、FAカップ優勝8回の強豪も、最後のメジャー・タイトルは91年のリーグ優勝(リーグカップは99年に優勝)。プレミアの10位前後をさまよっていたチームをヨル監督が一気にチャンピオンズリーグを狙える位置に持ってきた。シーズン開幕当初の8月に対戦したモウリーニョ監督が、「今年のトットナムは強い」と評価したのは、正に真実だった。

 ボルトンとトットナム、両チームの共通点は、トップ4(チェルシー、マン・U、リヴァプール、アーセナル)を相手にしても守りに入らないことだ。自分たちのサッカーで果敢に攻める。ロングボールもありのダイナミックなサッカーをしている。とくに両クラブの左サイドバックのイ・ヨンピョ(トットナム)、ガードナー(ボルトン)のオーバーラップはチーム攻撃の重要なオプション。

 また、トットナムでは、キャリックが舵取り役のボランチとして、玄人好みの渋い役柄を演じている。ダーヴィッツ、ジーナスと1月移籍でチャールトンから獲得したマーフィーを加えた中盤は、トップ4と比べても見劣りしないレベルになった。

 ボルトンは中盤を5人と厚くしながらも、中盤のパス回しを避け、大きく展開することを心がけている。アーセナルとの相性は、この数シーズン抜群にいい。

 この2チームのどちらが4位に滑り込めるか? ボルトン、トットナム共にトップ4のうち3チームとの対戦が残っている。トットナムは、チェルシー、マン・U、アーセナルと、そしてボルトンは、マン・U、リヴァプール、チェルシーとの3連戦が4月にある。ボルトンにとっての山場は、この3連戦。ここで五分以上の戦績を残せれば、4月末に控える、トットナムとの直接対決で、決着がつくだろう。

 ボルトンが現在暫定7位ながら、他チームより2試合消化が少ないことを考えると、4位獲得は大いにチャンスがある。アラダイス監督自身も、「足りない2試合を戦ってなおかつ4位争いのポジションにいれば、われわれにとって大いにチャンスがある」と意欲的だ。

 アラダイス監督自身は、今シーズンの躍進に、ドイツW杯後に辞めるだろうエリックソン監督の後釜として、イングランド監督候補のひとりとして注目を浴びている。その巨体から「ビッグ・サム」のニックネームを頂戴しているアラダイス、そしてヨル。どちらがシーズンを、笑顔で終えることができるか。そして、ひとりが微笑んだ時、アーセナルのベンゲルは、来シーズンの居場所を心配しなければならない運命にある。
プロフィール
山田一仁

ロンドン在住のカメラマン。プレミアリーグだけでなく、ヨーロッパ各国リーグの取材も精力的にこなしている。年に何回もロンドンと日本を往復し、また、ロシアにも活動拠点を置くなど、その活動範囲は非常に広い。

website>>> http://homepage3.nifty.com/kazphoto/

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