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山田一仁●文・撮影 text&photo by Kazuhito Yamada
第56号(2006年2月1日)
窮地のベンゲル監督

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 ベンゲル、アーセナルが危うい! 

 先週1月24日にカーリングカップ(リーグカップ)の準決勝で、今季チャンピオンシップから昇格したウィガンに、延長終了寸前に得点され、足元をすくわれた。

 そして、週末。今度はアーセナル得意のFAカップで、相性のよくないボルトンに0−1と惜敗。これで、アーセナルは、僅か5日間で2つのカップ戦から姿を消すことになった。

 本来、ベンゲルはリーグカップの存在価値にさえ、疑問を投げかけてきた。優勝してもUEFAカップへの出場権しか得られない大会を、彼は若手の成長の舞台と位置づけ、常に主力は温存してきた。

 だが今シーズン、トップ4の指定席が危うくなってきたと見ると、準決勝のウィガンとの第2戦では、キャンベル、ベルカンプ、アンリなどの主力を投入し、背水の陣で望んだ。 これも、今シーズン、チャンピオンズリーグ出場権の4位以内に入れなかった場合の、滑り止めとしてUEFAカップの出場権を獲得しにいった、というよりは、少なくともタイトルをひとつは取らないと、自分の首が危ういことを考えたはずだ。

 私が9月に予想したプレミアシップの4強の順位は、その予想に近づいている。1位チェルシー、2位マンチュエスター・ユナイテッド(以下マン・U)、3位リヴァプール、4位がトッテナムで、アーセナルは5位。ただし、リヴァプールの消化試合数が2試合少ないことを考えると、リヴァプールが2位にあがってくる可能性は大。

 「マン・Uとアーセナルのどちらかは、タイトルなしに終わる可能性が高い。そして、タイトルと無縁に終わった方の監督の首が危ない。両者がその状況に陥る可能性も低くはないのだ。」と予測したことが、現実味を帯びてきた。一体、アーセナルはどうしてしまったのだろう。ヴィエイラが抜けた穴が大きいか? アシュリー・コールの怪我離脱の影響か? 若手主体で、世代交代に失敗したか?

 わずか2シーズン前に無敗でリーグ優勝したクラブに、何が起きているのだろうか? 実は、現在の問題点の原点は、すでに優勝したシーズンに潜んでいたと、私は考える。無敗優勝という、今後しばらくの間は破られないだろう記録に、多くの人は目を奪われた。だが、チェルシーは昨シーズン1敗はしたが、勝ち点94という新記録で優勝。

 私が言いたいのは、アーセナルが無敗で終えたシーズンも、内容を良く見れば、もっと勝利数が多く、引き分け数が少なくできたはずだ。あれだけの強いチームでありながら、引き分け数が多すぎた。圧倒的な力を持ちながら、引き分けてしまった。その時すでに見え隠れてしていたこの問題は、大して重要視されずに今シーズンを迎えることになる。勝てる試合を引き分けてしまった。これこそが、現在2位以下を10ポイント以上引き離して首位に立つ王者チェルシーとの違いだろう。

 昨シーズンは、無敗記録をマン・Uにストップされてから失速。02-03シーズンには、首位を独走も、シーズン終盤ボルトンと引き分けに終わってから、勝てなくなり、マン・Uに逆転優勝をさらわれる。アーセナルのフランス人選手を主力に持ち、フランス人の監督で、フランス人特有の勝負弱さという欠点が、クローズアップされた。

 では、戦力的な問題はどうか? 若手のMFファブレガス、フラミニ、FWファン・ペルシ、DFセンデロスなどいい素材は育っている。世代交代に早めに着手しているのだが、問題点は、次の3つ。
 1.アンリの相棒が育っていない。ファン・ペルシとレジェスはどちらかといえば、サイド・アタッカーとして優れている。2トップでアンリのパートナーとして使う場合に、もうひとつ怖さがない。
 2.元来、守備が今ひとつだったところに、アシュリー・コールが離脱。その穴にシガンを使っているようでは、相手に弱みを見せているも同然。DF陣に怪我人が出た場合のバックアップのレベルが低い。
 3.現在、リヨンで活躍しているヴィルトールを放出したツケが大きい。

 明るい話題といえば、サウサンプトンから24億円で1月の移籍期間にやってきたセオ・ウィルコット。僅か、16才ながらチェルシー、マン・Uも狙っていた逸材。プレミアで活躍すれば、ワールドカップ・ドイツ大会のイングランド代表も夢ではないというもっぱらの評判。

 そして、もうひとつ。バルセロナへの移籍が噂されているアンリが、やっと契約更新の話をスタートさせようとしている。だが、来季チャンピオンズリーグに出場できなくなった場合、アーセナルのユニホームを着ている保障はない。

 これで、ベンゲルに残されたタイトルは、チャンピオンズリーグのみ。だが、過去9年半のベンゲル体制で、最高の成績はベスト8。おそらく、今季はベスト16でレアル・マドリードを破ることは難しい。現状では、ノンタイトルが濃厚となってきた。

 最後の望みは、来シーズンのチャンピオンズリーグ出場権。だが、現在5位のリーグ戦は、トッテナム、ボルトンそしてウィガンと4位争いを演じている。勢いはトッテナム、ボルトンにある。

 リーグ4位以内に滑り込めない場合は、ワールドカップ終了後の06-07シーズン、新装オープンとなるアーセナルのスタジアムのベンチに、ベンゲルの姿を見ることは、残念ながら難しいだろう。
プロフィール
山田一仁

ロンドン在住のカメラマン。プレミアリーグだけでなく、ヨーロッパ各国リーグの取材も精力的にこなしている。年に何回もロンドンと日本を往復し、また、ロシアにも活動拠点を置くなど、その活動範囲は非常に広い。

website>>> http://homepage3.nifty.com/kazphoto/

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