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山田一仁●文・撮影 text&photo by Kazuhito Yamada
第55号(2006年1月13日)
本大会でのイングランド代表の展望〜エリクソンの手腕

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 昨年12月9日のドイツW杯抽選会で、イングランドはパラグアイ、トリニダード・トバゴそしてスウェーデンとB組に入った。エリクソン監督が、戦いたくない3カ国に挙げていたオランダ、オーストラリアそしてアメリカは運良く回避できた。

 これらの3カ国との対戦を逃れて、「楽なグループに入った。イングランド優勝」と持ち上げた新聞もあるが、それは甘い。

 エリクソン監督の母国スウェーデンとは、この20年間で10戦し、一度も勝利を挙げていない。内容は、0勝4敗6分け。しかも、敵地スウェーデンでの試合になると、5戦、4敗1分け。ホームで戦った5戦は全て引き分け。

 パラグアイには過去2度対戦し、2002年の親善試合に4対0。1986年のW杯メキシコ大会で3対0。トリニダード・トバゴとは近年対戦がない。

 この組はスウェーデンとイングランドの一騎打ちに近い。だが、ユーロ2004でのギリシャ、チャンピオンズリーグ03−04のモナコ対ポルトの決勝。2002日韓W杯での韓国、トルコのベスト4進出など、どのチームが強豪を食ってもおかしくない状況は、最近の特徴だ。

 ではイングランドはどこまで行けるか。スウェーデンとの戦いをグループリーグ最終戦で迎えるイングランドが、グループリーグを1位通過すると、Aグループの2位とベスト16で、準々決勝か準決勝のいずれかでブラジルと対戦。もし、2位通過した場合にはベスト16でドイツと当たり、準々決勝ではおそらくアルゼンチンかオランダ。それを乗り越えても準決勝はフランスがイタリア。道のりはやはり険しい。

 準々決勝進出までが妥当。運が悪いとベスト16止まり。

 イングランドの最近の布陣をみると、4―4―2は大前提。問題となるのは、中盤の底。ボランチを誰にするかだ。昨年8月のデンマークとの親善試合で1対4と完敗した際の布陣は中盤をダイヤモンド型にし、右にジョー・コール、左にジェラード、底にベッカム、その前にランパード。結果は1対4の完敗。さらにW杯予選の北アイルランド戦にも負けて、ベッカムを底にしたダイヤモンド型のアイデアはなくなった。

 イングランドがドイツで成功するためのキープレイヤーを挙げるとすれば、ランパード、そしてクラウチとジョー・コール。現在のイングランド代表のゲームを仕切っているのは、ランパードだ。03−04シーズン、ラニエリ監督の下、最も成長した選手としてチェルシー1年目をチャンピオンズリーグ準決勝進出、プレミアリーグ2位で終えた。

 昨シーズンは、ユーロ2004で代表のレギュラーの座を掴み、チェルシーではシーズン13ゴールを挙げ、チームの得点王。今シーズン、欧州最優秀選手選考では、チャンピオンズリーグ優勝のジェラードを押さえて2位に入った。現時点で、プレミアリーグ21試合、13得点。MFでありながら超一流のFW並みの得点力。昇り龍の勢いだ。

 ジョー・コールは、ウェストハムのユース時代からランパードよりもその才能を認められていた。だが、チェルシーに移籍した03−04シーズンは、35試合で僅かに1ゴール。モウリーニョ体制になってからは、その身勝手なプレイを注意され、チームプレイが必要なことを諭された。

 その効果が現われ始めたのは、昨シーズンの後半から。今までは、ボールを奪われても、追いかけなかった彼が、一旦ボールを失うとタックルを仕掛けてでもボールを奪い返すようになった。そのハングリーな精神が、彼を現在輝かせている。

 クラブでは大活躍のジェラード(リヴァプール)も、本来のポジションではない左サイドでは、この数年いまひとつ。ジョー・コールがこのポジションにレギュラーとして入ってくる可能性もある。

 そして約2メートルの長身FWクラウチ。01−02シーズは日本代表の川口と共にポーツマスでプレイしていた。昨シーズン、サウサンプトンで12ゴールを決め大ブレイク。イングランド代表に呼ばれるきっかけとなった。そして、今シーズンはベニテス監督が惚れ込んで、欧州チャンピオンのリヴァプールへ移籍。12月に初ゴールを決めると、その後8試合で4ゴールと調子が出てきた。

 ただ、W杯ではこのふたりが先発となるかは微妙。FWはオーウェンにルーニー、またはクラウチ。中盤はベッカム、ランパード、ジェラードが確定で、守備的に行くか攻撃的に行くかで、キングかジョー・コールかの選択となる。

 しかし、相手に先行されたり、前半で得点がない場合は、このふたりが真っ先に交代で入ってくる可能性は高いだろう。

 昨年11月のアルゼンチンとの親善試合では、1対2の劣勢から3対2と逆転。そのきっかけとなったのは、左サイドに入ったジョー・コールとトップに入ったクラウチだった。

 ジョー・コールが突破力を活かしてチャンスメーカーの役割を果たす。さらにクラウチを入れることにより、ロングフィードを自分たちのボールにできる。また、この試合では、相手がクラウチを警戒するあまり、パートナーとなるオーウェンの得点機会ができた。もちろん、逆転したのはアルゼンチンが主力を交代させた後ということも覚えておいた方がいいが。

 私が考えるベスト布陣は、GK:ロビンソン、DF:右からキャラガー、ファーディナンド、テリー、アシュリー・コール、MF:ベッカム、ランパード、ジェラード、ジョー・コールのフラットな中盤。ジェラードとランパードを真ん中に置き、両サイドは攻撃的に、中央は守備的な役割を持たせる。その方がジェラードの良さが活かされる。FW:オーウェン、ルーニー(クラウチ)。

 エリクソン監督は、キャプテンであるベッカムに大きく頼っているが、すでにイングランドのマスコミも、ベッカムがキャプテンとして先発に値する選手であるかに疑問符を付け始めている。相手に先行された場合は、エリクソンに思い切った決断が必要になる。

 ベンチでは、ショーン・ライト=フィリップスが、スーパーサブの役割を果たすだろう。ベッカムに代えてライト=フィリップス。エリクソンがここまで思い切れたとき、イングランド代表はもうひとつ上のレベルに行ける可能性が出てくる。そして、さらにクラウチを入れて、4―3―3あるいは3―4―3で得点を狙いにきたら、イングランドが死に物狂いになったことを示す。

 そこまでイングランドが、エリクソンが決断できたら、ドイツ、アルゼンチン、オランダ、フランス、イタリアを、あるいはブラジルを乗り越え、決勝の舞台に登場する可能性が出てくるだろう。

 エリクソン監督の決断と、お手並み拝見といこう。
プロフィール
山田一仁

ロンドン在住のカメラマン。プレミアリーグだけでなく、ヨーロッパ各国リーグの取材も精力的にこなしている。年に何回もロンドンと日本を往復し、また、ロシアにも活動拠点を置くなど、その活動範囲は非常に広い。

website>>> http://homepage3.nifty.com/kazphoto/

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