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横谷和明●取材・文 text by Kazuaki Yokoya
倉持 壮●撮影 photo by So Kuramochi

第99号(2008年4月1日)【JBL】新たな黄金時代の幕開け〜プレイオフ2007-2008

今季から、「日本バスケットボールリーグ」として新たにスタートを切ったJBL(昨シーズンまでのリーグの名称はスーパーリーグ)。3戦先勝方式のプレイオフ・ファイナルを制し、記念すべき初代王者に輝いたのは、最後に自分たちのバスケットを貫いたアイシン・シーホースだった。

「今年は優勝できるメンバーが揃ったので、シーズン最初から勝つバスケットをしてきた」と話すアイシンの鈴木貴美一ヘッドコーチ(HC)。身体能力に優れた司令塔PGの柏木真介、日本国籍を取得したセンターの桜木ジェイアールら既存のメンバーに加えて、205cmの日本代表フォワード、竹内公輔が新たに加わった今季は、高さと堅いディフェンス力を武器にファイナルまで圧倒的な強さを見せつけてきた。

レギュラーシーズンを1位で通過し、2戦先勝方式のセミファイナルも三菱電機に2連勝。トヨタとのファイナル・第1戦でも81-65で勝利を収め、「ディフェンスではミスが3本しかなかった」というほぼ完璧な試合内容で第2戦を迎えた。

だが完勝の裏で、鈴木HCはあまりに順調すぎる滑り出しを危惧していた。そして第2戦以降、その不安が的中してしまう。
「1戦目の内容があまりに良すぎたために、2戦目の試合の入り方を心配していたが、案の定悪すぎた。ゲームを受けてしまった」

2戦目を76-82の接戦で落としたアイシンは、第3戦でも72-86で敗れてトヨタに王手をかけられてしまう。とくに第3戦はトヨタが得意とする速攻を中心とした早い展開のバスケットに翻弄され、「あれだけ速攻を出されてしまっては勝ち目がない」と鈴木HCが完敗を認めるほどであった。

優勝に向けてもう1敗もできなくなったアイシンだが、第3戦から第4戦にかけての休息日がプラスに働く。

「シーズン中にやってきたことを練習でもう1回再確認した(鈴木HC)」ことで、自分たちのバスケットを取り戻すことに成功する。アイシンのバスケットとは粘り強いディフェンスで主導権を握り、ゲームをコントロールしながらチャンスがあれば速攻を仕掛けていくスタイル。第4戦ではそのスタイルを貫き、88-69で完勝。第2、3戦で抑えられていた得点源の桜木も25点、13リバウンドと復調し、対戦成績を五分に戻した。

勝負のかかった第5戦でも、勢いに乗るアイシンは3Qまでに15点のリードを奪う。しかし昨季優勝したトヨタもディフェンディングチャンピオンの意地を見せ、4Q開始直後から猛攻をしかけて残り5分の段階で1点差までつめよる。しかしファウルで得たフリースローを確実に決めて得点を重ねたアイシンが、追いすがるトヨタを突き放して93-79で勝利。

「追い込まれた状態の中で、選手はこの2試合本当によく戦った。若い選手が成長し、ベテランは見えないところでも仕事をしてくれた。チーム全員でつかんだ優勝」と鈴木HCは選手を讃えた。

一方、あと一歩のところでスーパーリーグ時代から続く3連覇を逃したトヨタのトーステン・ロイブルHCは、「ルイス・キャンベル、高橋マイケルといった主力選手がファイナル終盤に負傷してしまったことが敗因のひとつ。最後の2戦はミスが多く、簡単に得点を許してしまう場面があった。4戦目に優勝を決められなかったことで、逆にアイシンを勢いに乗せてしまった」と悔しそうな表情を見せていた。

アイシン逆転優勝の立役者と言えば、ポイントガードの柏木(写真)だろう。「ファイナルに出場することが初めてだったので、最後の2戦は正直、精神的にキツかった」と話すが、優れた身体能力、スピードを活かし、鋭いドライブからの得点や効果的な3ポイントでチームを勢いづけていた。

勝負どころを見極め、自ら得点を獲りに行くその姿は、今季開幕当初から「ここぞ、というときにシュートを決めたい」と言い続けていた柏木の集大成のようなプレイであった。

ファイナルMVPの発表で自らの名前がコールされると、涙を手で拭いながら表彰式へと向かった柏木。「まさか自分が獲れるとは思っていなかった。絶対に優勝するんだという気持ちしかなかった」と振り返るが、レギュラーシーズン、ファイナルとふたつのMVPを獲得した柏木は、これで名実ともに日本一のポイントガードになったと言えるだろう。

そして、アイシンの持ち味である強固なディフェンスは、今回のファイナルでも健在だった。勝利した3戦はいずれもトヨタの得点を79点以下に抑え、ゲームのテンポを落としてトヨタが得意とする速い展開のバスケットを封じ込めていた。

鈴木HCは「トヨタに効果的なのはコントロールすること。そして、ローポストからのプレイをできるだけ抑えること。それには(竹内)公輔くんの存在が大きかった」と明かす。その竹内はファイナルでブロックショットを9本決めるなど、ゴール下のディフェンスでチームに貢献。

「ウチには点を獲れる選手がたくさんいる。だから自分の仕事であるリバウンドとブロックをしっかりやろうと思っていました」と話し、シーズン前の公約どおり見事に新人王を獲得する働きを見せた(双子の弟である譲次も新人王を受賞)。

昨年9月のリーグカップ、1月の全日本総合バスケットボール選手権大会に続く、3冠を達成したアイシン。昨年までポイントガードとしてチームを牽引し、今季は柏木のバックアップとして存在感を示したベテランの佐古賢一はこう語る。

「来季どのようなストーリーを築いていくかによって、これからアイシンの新しい黄金時代が始まると思うんです。そのためにもチャンピオンチームのプライドを持って、より高いレベルのバスケットをしていきたい」

来季はオン・ザ・コート1となり、外国人選手がひとりとなるため、日本人選手の活躍が重要なポイントになる。柏木、竹内という伸び盛りの若手に加え、経験豊富な佐古や桜木がチームを支えるアイシン。今後、新・黄金時代を築く可能性を充分に秘めていると言えよう。


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