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折山淑美●文 text by Toshimi Oriyama
築田 純/アフロスポーツ●撮影 photo by Jun Tsukida/AFLOSPORT

第94号(2007年12月27日)【スピードスケート】進化する世界と戦う日本チーム〜全日本スプリントスピードスケート選手権

12月22、23日の全日本スプリント、男子は表彰台独占で女子は優勝。スケート部員4人がすべて総合の表彰台に上がる快挙を果たした日本電産三協勢の快進撃で、スピードスケート新年を迎えることになった。中でも昨年と違う逞しさを見せたのが、22歳のエース・加藤条治(写真中央)だ。

高3の02年12月に、初出場のW杯でいきなり3位になり、彗星のごとく登場した彼は、05年世界距離別選手権500mで優勝して一躍06年トリノ五輪の優勝候補になった。世界記録保持者となって臨んだトリノ五輪では、レース直前にスケートのエッジを欠くアクシデントもあって6位に止まり、昨シーズンもW杯勝利ゼロに終わっていた。

だが07年には単身でアメリカへ渡り、5カ月間アメリカチームに飛び込んでトレーニングを積んできた効果は大きい。

「昨シーズンは練習状況から見ても勝てないのはわかっていたけど、負けたのは悔しいし、先輩からもすごい滑りを見せつけられたので……。アメリカでは自分でやらなければ誰も気にしてくれないという状態ですから。自立したというのが一番大きいと思います」

こう話していたシーズン開幕戦の全日本距離別選手権では、追い込んだ練習をしてきた上に時差ボケもあり「自分でも滑っててダサいと思ってました」という滑りながら、500mでは圧勝と、勢いを取り戻していた。

さらに、11月9日からのW杯ソルトレーク大会では左足の付け根を痛め、全治3週間と診断された。だが、翌週のカルガリー大会2日目には34秒81で滑ってBグループ1位に。34秒03の世界新記録を出したばかりのウォザースプーン(カナダ)が欠場した12月9日のオランダ・ヘレンベーン大会では2位になる早い復活。全日本スプリントでは、これまで苦手にしていた1000mでも2位と4位に入り、初の総合優勝を果たしたのだ。

「500mと1000mの差があまりにもあり過ぎて情けないなと思っていたんで」

という加藤は、アメリカで初めて1000mを意識した練習をしてきた。前半から思い切って突っ込めるようになり、結果を出せるようになった。

「これまでそれなりに活躍してたと思うけど、この大会前に歴代優勝者の名前を見たらその中に自分の名前がないのが悔しくなったんです。これで名前が残ることになってうれしいですね。500mでも今は最後のコーナーで足が止まってしまい、ラスト100mもダラダラ落ちていくのが現状なので、1000mが滑りきれるようになれば、最後のコーナーで落ちずに乗っていけると思います」

そう語る表情には、以前以上に余裕が溢れるようになっている。だが彼にとって、好調だった以前の滑りを取り戻すだけでなく、さらに進化することは急務でもある。1シーズン休んでいたウォザースプーンが、低く鋭いスタートダッシュを身につけて復活し、いきなり世界新記録を叩き出したからだ。加藤は「例えれば小学生と僕くらいの差」を感じるという。

この大会、日本記録を持っている1000mで2勝し、総合でも2位になった長島圭一郎(写真左)はこう言う。

「日本が勝っている頃に武器にしていたスタートからの滑りを、外国選手もできるようになっているんです。速いスピードで滑り出したら、体の大きい彼らは一歩が大きいので敵いませんね。僕らも何か新しいものを見つけ出していかなければ勝てないと思います」

ただ加藤は「これで33秒7台でも出されたらウワーッとなったけど、まだ範囲内だと思います」と、追いつける可能性も口にする。彼自身、05年に34秒30の世界新を出してから、かつて清水宏保も口にしていた33秒台を視野に入れていたからだ。

進化する世界と戦わなくてはいけない日本チーム。22歳の加藤と25歳の長島が中心になるが、ベテランの清水宏保もまだ健在だ。シーズン開幕戦の全日本距離別の500mは6位に終わってW杯前半戦の代表からは外れたが、その後国内でじっくり調整。全日本スプリントも調子上昇の状態で臨んだが、初日の500mスタート10分前に、練習で自分のスケートのブレードで左アキレス腱付近を切ってしまうアクシデントに見舞われた。それでも500mは3位。翌日の500mに出場するためにそのあとの1000mを滑って病院へ直行して7針縫い、翌日の500mでも3位になると残る1000mは棄権した。

そんな状態でも500mはW杯後半戦の代表を確保する3位に入るしぶとさはさすが。これまではスタートでも外側から出していた足を、力強く体の中心部から出せるようになったのは調子が戻っている証拠でもある。敗れたとはいえ、まだまだ死んでいない姿を見せてくれた清水。彼の力と経験も、世界と戦う若い日本チームには必要不可欠な要素であるだけに、心強い復活だ。

一方女子も、昨季は不本意な結果に終わっていた23歳の吉井小百合が復活して2年ぶり3度目の優勝を果たした。本人は「完全優勝が目標だった」と1000mで2回とも2位に終わった結果を悔やむが、それを2日とも制したのはベテランの田畑真紀。しかも2日ともリンクレコードと自分の力を十二分に発揮しての結果だった。

女子もまた進化する世界と戦わなくてはいけない状況だ。岡崎朋美は腰痛で欠場したが、オールラウンダーの田畑が、若い吉井を支える存在になることはチームにとっても大きなプラス要因だ。

2010年バンクーバー五輪に向けて、世界の進化に遅れを取りたくない日本。3月6日から長野のエムウェーブで行なわれる世界距離別選手権へ向けての戦いに注目したい。


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