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松瀬学●文 text by Manabu Matsuse
井田新輔●撮影 photo by Shinsuke Ida

第88号(2007年11月6日)【ラグビー】W杯勝利の道は大学のレベルアップから

ラグビーのワールドカップ(W杯)が終わった。

ファンの興味は国内のゲームに移る。たしかにトップリーグも大学のリーグも面白い。興奮する。でも今季ぐらいはW杯で勝つために国内の試合はどうあるべきか、そんな視点を加味するのも悪くない。

W杯で決勝トーナメントに進めなかったジャパンの課題は何だったのか。チームとしての戦い方はともかく、問題はやはり個々の体力不足である。フィジカルの強さであり、キック力など基本技の未熟さである。ひとことで言えば、「経験値が低い」のだった。

つまりはより厳しい試合を数多く経験する必要がある。それは特に大学だろう。日本と海外列強を比べた場合、この大学四年間で選手の差がぐんと開く。国よっては、プロリーグでプレイする。

日本ラグビーフットボール協会の浜本剛志・強化担当理事は言う。

「このユース世代に海外の連中は大きく成長する。基本的には体幹の強さが一番伸びる頃でしょ。一人ひとりの腕力、コンタクト力、強さ……。日本の大学ももっと激しく、厳しい試合を増やさなければいけない。レベルを一段アップしないとダメでしょ」

例えば伝統の慶応対明治戦(11月3日・秩父宮ラグビー場)はどうだったか。

秋晴れの空が広がる。両校OBを含め、一万を超すファンがスタンドに詰め掛けた。試合はスリリングな展開となり、29−29で引き分けた。両チーム穴だらけ、ミス続発の雑なゲーム運びだったけれど、勝負としてはとても面白かった。学生らしく、気持ちのこもった試合だった。

ノーサイドの笛が鳴ると、明大も慶大も芝に崩れ落ちた。ともにドローを嘆き、そして悔しがった。

慶大の林雅人・新監督は顔をゆがめる。

「勝つ自信はあったのに……。お互いの長所は水と油で……。その持ち味は出したけれど、精度のミスが痛かった」

たしかにお互いの持ち味は出し切った。明大は自慢の強力FWがスクラム、ラインアウトで優位に立ち、モールでもごりごり押し込んだ。

開始直後。ゴール直前で慶大ボールのスクラムを奪取し、左隅に先制トライをもぎとった。その後はラインアウトからのモールをうまく押し、トライを重ねる。前半23分には17−0と大量リードした。

ここから慶大が反撃に転じる。魂のタックルでFWの突進を止め、タレントぞろいのバックスを走らせた。CTB中浜聡志、WTB山田章仁、FB小田龍司は瞬間のスピードがある。明大のずさんなディフェンスもあったけれど、3連続トライで追いついた。

17−17で折り返し、後半も明大がFW勝負で圧倒し、まず2トライを奪取する。その後、慶大がバックスのスピードで2トライを返した。「勝ちきれなかった」と明大の藤田剛ヘッドコーチは嘆く。「詰めがまだ甘かった。途中で、(集中力が)抜けていたんじゃないかな。でもこのチームは進化していくと感じた」。

大学のトップクラスの対戦としてみれば、接点の攻防、蹴り合いなどに不満が残る。ハンドリングミス、キックミスのなんと多いことか。もっと、固まりとなったぶつかり合いをしなければ、選手の体力、基本スキルはあまり伸びないだろう。

W杯につながる試合にするためには、と聞けば、林監督はちょっと考え込んだ。

「ジャパンもディフェンスはできるようになった。もっと組織だったアタックをやらないとダメでしょ。力勝ちしようとしないこと。ボールを動かしていくプランを持つことです。俊敏性もそうだし、アングルチェンジなどのランニングスキルもそうだし、1対1の勝負をさせて、大学レベルから個々の能力を極めていくべきでしょう」

  『W杯勝利のカギは大学ラグビーにあり』、である。特に指導者がもっと意識し、リーグのレベルを引き上げ、切磋琢磨していかないといけないのである。


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