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松瀬学●文 text by Manabu Matsuse
井田新輔●写真 photo by Shinsuke Ida

第84号(2007年8月15日)【ラグビー】いざ、W杯へ! 勝利を感激を〜日本代表壮行試合

走る。
 オオハタが走る。

35年ぶりの秩父宮のナイター照明の下、大畑大介が快足を飛ばした。ビューティフルだ。右アキレス腱断裂から約7ヶ月経った。つらいリハビリ経験を知れば、ファンは涙のしずくのひとつでもこぼすだろう。

開始わずか3分。SO小野晃征からのキックパスを捕ると、左へウエイトをかけてから右へ切り、一気に右サイドを駆け抜けた。先制トライだ。ちょっと出来すぎじゃないのか。そう凡人は思う。大畑だって驚き、笑う。
「いや、やっぱり大畑大介は主役だな、と思いました。ファーストタッチでトライだもの。すべての神様が応援にきてくれたんでしょ」
 オオハタ節も絶好調である。神をも味方につけるとは。むろんホンネはちょっと違う。
「緊張した。緊張したけれど、楽しかった。桜のジャージでグラウンドに戻ってこられて、すごくうれしい。みんな、ありがとう」

8月10日にラグビー日本代表のワールドカップ(W杯)壮行試合が行なわれた。相手が元日本代表や韓国、中国、香港などの寄せ集めチーム『アジア・バーバリアンズ』。観客は1万余。69−10のスコアには意味はなく、要は内容、ジャパンの仕上がりぶりだった。

ジャパンはW杯開幕戦の豪州戦を想定したメンツを並べた。WTB大畑ほか、1番山本正人、2番山本貢、3番山村亮。7番佐々木隆道。ハーフ団が9番矢富勇毅、10番小野晃誠。FB有賀剛。つまりは若い選手が目に付く。特徴は個々がアジリティ(俊敏性)に長けているところか。12番オトら突破力もある。内から外へ押し流していく豪州のピラーディフェンスをアングルチェンジ、インサイドに切れ込んで崩していこうとの魂胆だろう。

そうだ。説明が遅れたけれど、JKジャパンは『2チーム制』を布いた。奇策か妙案か。中3日の過酷な日程を考え、初戦の豪州戦と続くフィジー戦のメンバーを15人、ごそっと入れ替えるのだった。フィジー戦用には主将の箕内拓郎やマキリ、オライリー、ロアマヌ、ロビンスらをあてる。こちらはブレイクダウン勝負の我慢タイプか。いわば豪州戦が『善戦健闘チーム』、フィジーが『必勝チーム』である。

話を壮行試合に戻せば、この内容で豪州と戦えば、「100点ゲーム」の惨敗となろう。95年W杯のニュージーランド戦の悪夢(17−145)の再現である。

組織でトライを取るカタチは、小野キックパス〜大畑トライと、ラインアウトからのモール攻撃ぐらいだった。オトが突進してラックをつくっても、ボールがすぐにはでない。

要所でのノックオン、パスミスも目立った。ディフェンスも球際が脆すぎる。これじゃ、豪州FWにぐちゃぐちゃにされ、CTBモートロックにトライの山を築かれてしまう。杞憂ならいいけれど……。

アジア・バーバリアンズで出場したジャパンの先輩、CTB元木由記雄は言った。
「ジャパンのセットプレイは安定しているんじゃないですか。ただ個人技のトライが多かった。ワールドカップではなかなか……。相手をだましたり、うまくつり出したりしながら攻めていかないとダメでしょ。もうちょっと、相手が“オ〜”と驚くものがないと」

いつも強気、ノー・エクスキューズ(言い訳なし)のジョン・カーワンヘッドコーチは会見でこう言った。
「これで自信を持って(欧州行きの)飛行機に乗れます」
本当か。しかし、『でも』と付け加え、
「ミスが多かった。多すぎました。ワールドカップでは命取りになってしまう。本番までに改善できるように練習していきます」

はっきり言って、チーム構築は遅れている。プレイの精度、サインプレイの徹底、意思統一など課題は山積である。2チームに固定したことで、どうスピードアップできるか。

翌11日の壮行会でJKは「1カ月で必要なものは」と聞かれて、ちょっと考えこんだ。
「ムサシです。ノー・ムサシマル。ミヤモトムサシ、知っていますか?」
宮本武蔵を知らないわけがない。JKは剣豪の「勝つためには相手の手の内を知れ」という言葉を引用したのだった。
「相手のことを完全に知り、相手の上をいく。頭を使い、対策に焦点を絞りたい」

箕内はこう決意を口にした。
「今回こそ、日本ラグビーの歴史に残る大会にしたい。勝利をもぎ取ってきます」

いまはもう信じるしかない。
 ジャパンよ、勝利を。感激を。
 いざ、ワールドカップへ!


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