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松瀬学●取材・文 text by Manabu Matsuse
井田新輔●写真 photo by Shinsuke Ida

第81号(2007年6月26日)【ラグビー】『奇跡は二度起こらず。攻撃、課題山積』〜日本代表×Jオールブラックス

『MAKE INPACT JAPAN AGAIN!』

W杯ロードの第3コーナーが終わる。パシフィックネーションズ杯(PNC)の最終戦、ジュニア・オールブラックス(JAB)との大一番前のミーティングで、冒頭の檄(げき)が編集ビデオの最後の画面におどった。

選手の士気を高めるために作られたビデオには、39年前の1968年、いまや伝説と化した大西ジャパンのJAB勝利の写真や、NZツアーのハイライト映像が収められていた。奇跡を起こした翌日の地元新聞の一面もあった。見出しが『JAPAN MADE INPACT』、ジャパンが衝撃を与えた、である。つまりは、檄は、再びJABを破り、世界に衝撃を与えようじゃないか、との意味だった。

相手のJABは世界トップクラスのNZ代表、オールブラックス予備軍である。2人のNZ代表が先発メンバーに入り、この試合はセレクションの色合いもあった。4戦圧勝で既にPNC優勝を決めてもいた。

それほどの強敵ゆえ、JK(ジョン・カーワン監督/写真)ジャパンの成長具合をチェックするにはもってこいだったのである。6月24日。秩父宮ラグビー場。観客1万3千余。小雨のぱらつくなか、「奇跡の再現」をねらう戦いははじまった。

たしかにジャパンの選手は体を張った。よくファイトした。はやい攻防を仕掛ける意識は共有され、なんといってもチームに一体感が生まれていた。

とくに前半のディフェンスはファンの胸をうつ。一対一のショルダーヒットだ。ワンラインのディフェンスだ。ブレイクダウンでの格闘だ。フランカーのグレン・マーシュの絡みの凄さには涙がでてくる。

反面、攻撃には不満がのこる。これまで練習してきたサインプレイ、たとえばワイドの攻めで相手ラインを広げさせてギャップの内をつこうとの意図はわかる。ただ一次攻撃で決まっても、それを二次、三次と連続して続けることができない。

スピード、判断が鈍い。前半9分、ラインアウトから左に回す。ひとり飛ばしを絡めたパスプレーで外に展開する。CTB今村雄太が大きくゲインする。ディフェンス2人、アタック3人のトライチャンスができた。ゴールに迫る。でも今村が持ち込んでタックルを食らった。チャンスはつぶれた。

試合後、今村は小声で言う。「自分で勝負するか、パスで外に回すか、迷ってしまった。最終的には自分で勝負しようと。もっと判断力を高めていかないといけない」

ここは相手を引き付けてパスではなく、早めにパスしてサポートではないか。奇跡を起こした昔の大西ジャパンの映像をみたことがある。バックスは間合いを生かし、早め早めにパスして人を動かし、最後に相手に接近して刺し違いでどんぴしゃのパスを送る。

間合いとテクニックの差か。ゲームキャプテンを務めた大野均は今昔のジャパンを比較した。「フィジカルは今が上ですけど、ハンドリングスキルでは昔にかなわない」と。

このほかにも、トライチャンスは幾つかあった。こぼれ球を拾い、マーシュが抜けた。WTB小野澤宏時がゴール前に迫った。でも周囲の反応が鈍く、サポートプレーヤーが出てこないのだった。

前週のサモア戦に続き、このJAB戦もジャパンはノートライにおわる。けがから順調な回復をみせるWTB大畑大介はこぼした。「ジャパンはちっちゃい傷をつくることができる。でもそれを大きな傷へ広げることができない。フィニッシュまで持っていかないといけない」。たぶん、自分なら:との苛立ちがあっただろう。

前半30分過ぎ、マーシュが反則でシンビン(10分間の一時退場)を食らった直後、7人で組んだマイボールのスクラムをターンオーバーされ、トライまでつながれた。10−3。後半はSO周辺をうまく突かれ、ついにはディフェンスが破綻する。結局、8トライを献上。やはりディフェンス、ディフェンスではFWの足が止まってしまうのだ。

結局、3−51だった。PNCはトンガに勝っただけで、1勝4敗の最下位におわった。

たしかにディフェンス力はアップした。選手個人もタフになった。でも攻撃力は伸び悩んでいる。スピード、連係プレーの精確性。セットプレイの安定。そして目立たないけれど、プレイ中の選手のコールとリスニング能力を高める必要がある。

課題を問えば、JKは日本語で「ガ・マ・ン(我慢)」と答えメディアの笑いを誘った。

「結果についてはポジティブにとらえている。問題は80分間、相手にプレッシャーをかけ続けることだ。1対1のタックルも修正していきたい。プレイの精度をもっと高めたい」

W杯まであと2カ月半。ポジションでみれば、SOとCTB陣のレベルアップが急務だ。

7月15日に再集合となる。W杯ロードの最終コーナーに移る。けがで戦列離脱の主将の箕内拓郎ほか、けがの大畑もSOアレジも復帰する。残された時間は刻々と少なくなっていく。繰り返すけれど、時間はないのだ。

JAB戦後、JKは背広を雨に濡らしながら、芝にへたりこんだ選手たちひとり一人と握手をして歩いた。顔をゆがめながら。

煙る雨の奥にはスタンドの真っ赤な垂れ幕が下がっていた。

<行こうぜ、カーワンと共に。
          自分を信じて!!>


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