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折山淑美●文 text by Toshimi Oriyama
太田康男●撮影 photo by Yasuo Ota
第69号(2006年11月7日)
【フィギュアスケート】06-07シーズン開幕〜世代交代への第一歩

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 トリノ五輪女王の荒川静香がプロに転向し、銀メダルのイリナ・スルツカヤ(ロシア)と銅メダルのサーシャ・コーエン(アメリカ)はグランプリシリーズを欠場。98年長野五輪から世界をリードしてきた選手たちの名前が消えた今季の女子フィギュアスケートは、世代交代への第一歩が始まったシーズンともいえる。その新たな時代を担っていくだろう代表が、昨季の世界選手権優勝者キミー・マイズナー(アメリカ・17歳)と、シニア初挑戦でグランプリファイナルを制覇した浅田真央(16歳)、世界ジュニアを制した金妍兒(キム・ユナ/韓国・16歳)と予想される。

 フィギュアスケート06-07年シーズンの開幕を告げる10月26日からのスケートアメリカは、浅田とマイズナーがいきなり対決する試合となった。

 だが、その新たなライバル対決の間隙を突いて好スタートを切ったのは、トリノ五輪で15位に終わっていた安藤美姫だった。

「私が五輪代表に選ばれて不満を持っていた方がたくさんいるということはわかっていました。それに、昨年は五輪という大事なシーズンだとわかりながらもケガなどで集中できず、ハードトレーニングを積むことができないままで五輪に臨んだことを反省しています。だからこそ今年は、その人たちがそう思ったことを覆すような演技をしたいと思ったし……」

 昨季より格段とシェイプアップされた体。ショートプログラムでは、激しい情熱を表現するようなストレートステップに観客席から拍手と歓声が沸き上がるほど。滑りもスムーズになり、昨季とはひと味違う姿を見せた。

「去年はジャンプの失敗に悩まされたことが多かったけど、今年は本当にリラックスできて、軽い感じで演技ができました。久しぶりにショートプログラムで3回転+3回転を逃げずに挑戦できたことが、自分でも成長したなと思うところです」

 今年はジャンプを基本から作り直そうと、子供のころに指導してもらっていた門奈裕子コーチの元に戻った。4回転ジャンプにこだわるのは止め、昔得意にしていた3回転+3回転のコンビネーションジャンプを完璧にできるようになることを今季の目標にした。さらに、荒川の振り付けを担当したニコライ・モロゾフ氏に振り付けを依頼し、ステップやスピンなどの技術を磨き、レベルを上げる努力も始めた。

 余裕を持って3種類のジャンプを決めたショートプログラムで安藤は、1週間前のキャンベル国際で出した自己最高得点を3点以上上回る66.74点を出して、浅田真央に次ぐ2位につけた。観客から歓声を浴びたステップだけでなく、プログラムコンポーネンツも5種類中4つで7点台と、新しい安藤美姫をアピールした。

 翌日のフリーでも安藤のジャンプは安定していた。3つのコンビネーションジャンプを含む7回のジャンプはほぼ完璧。スパイラルと3つのスピンでは最高のレベル4の評価で、フリー得点は125.85点。合計は192.59点と、トリノ五輪優勝の荒川を上回る高得点でシニアグランプリ初優勝を手にしたのだ。

「ジャンプの失敗がなかったというのは大きな進歩だと思います。でも、一昨年くらいまでだったら最初の3回転+3回転が決まったら『もう大丈夫』っていう自信が持てたんですけど、今シーズンは3回転+3回転が決まったからといって、次のジャンプをミスなくできるかといったらそうじゃないから。本当に最初から最後まで不安があって……。最後のダブルアクセルを下りた時にやっと気持ちがほぐれたっていう感じなんです」

 優勝したとはいえ、本人にとっては満足できない部分もあった。ショートプログラムは完璧に近い演技ができたが、フリーでは最後まで体力が持たずスピードが落ち、ステップではつまづく場面もあった。

「去年は辛い思いばかりで自分の納得いく演技ができなかったけど、今回は今のレベルからしたら本当にいい演技ができたなって、ホッとした気持ちですね。でも終わった時は頭の中にまず、『もっとトレーニングを重ねて最後までへばらないようにしていかなければ』というのが浮かんでましたね(笑)」

 初優勝を手放しで喜ばない冷静さ。それが今季の安藤の成長を示す部分だろう。

 一方、ショートプログラムトップからフリー終了後は3位に落ちた浅田真央だが、不安説が一気に浮上したわけではない。ショートプログラムではプログラムコンポーネンツがすべて7点台と成長の証を見せていた。

「ショートは大丈夫だけどまだフリーが……。プログラムをふたつか3つに分けてやると大丈夫だけど、通してやると疲れてしまって」

 5月中旬のジャパンオープンが終わってから振り付けの相談を始め、完成したのが6月に入ってから。いつもより遅い滑り出しのため、まだまだ完成していない状態だ。その不安とショートプログラムのトップ通過でフリーは最終組1番滑走というプレッシャーがあったため、最初のトリプルアクセルで失敗して波に乗れなかっただけだ。フリーの前の練習では丁寧な滑りをしていて、トリプルアクセルもきれいに決めていた。その上彼女の場合は次の試合が11月30日からのNHK杯と時間はある。そこまでにはプログラムも完成に近づいてくるはずだ。

 もうひとり、2位に終わったマイズナーもまだまだシーズンインしたばかりで余裕の表情。ショートプログラムでは58.82点の3位と出遅れたが、彼女は世界選手権で優勝した時もショートプログラムは60.17点。3回転+3回転ジャンプを2回決めたフリーでは129.70点という高得点を出して優勝している。それを考えれば、まずまずの滑り出し。まだジャンプでは着地が不安定だが、彼女の場合はあくまでも世界選手権連覇を狙っているのだろう。スローな動きのステップでもメリハリの効いた演技をする運動能力の高さは侮ることができない。

 いよいよ始まった今季のフィギュアスケートシーズン。18歳の安藤を筆頭とするこの3人に金妍兒を加えた10代選手の激しい争いが白熱しそうだ。

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