| 松瀬学●取材・文 text by Manabu Matsuse 井田新輔●撮影 photo by shinsuke Ida |
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| 第58号(2006年5月26日) | |
【ラグビー】大畑大介、世界新の65トライ! 次はW杯!
うんうん、いいものだ。約5千人の観客から総立ちの拍手をもらう。チームメイトの手で宙に舞う。「(サッカーの)ワールドカップ前にトライを決めたかった。だって、せっかくの記録やのに、新聞の扱い、ちっちゃかったらさみしいじゃないですか」。新庄張りのスターは笑うのだ。 5月14日だった。場所は地元の大阪・花園ラグビー場、相手がグルジアである。世界記録まであと「2」で迎えた試合だった。周囲の期待が高まる。緊張感がつのる。「今までで一番きつい試合だった」は本音だろう。 チームメイトもエースを後押しする。前半36分、キックを追って左隅にボールを押さえる。王手だ。後半19分にFWがモールを押し込んで、最後は自分が押さえた。 これで世界記録に並んだ。ロックの大野均(東芝府中)から、冗談半分の抗議をうけた。「モールのトライぐらい、FWにさせてくださいよ」と。 むろん、大畑としても、このまま終わるわけにはいかない。メディアの露出を意識するオトコは「絵」にこだわった。「モールのトライは絵的によろしくないでしょ」。 ロスタイムだった。敵ゴール前のラックからサイドを突いたSH伊藤護(東芝府中)からパスを受けると、大畑は宙を滑った。 とうとう65本目のトライである。試合も32−7で快勝した。歓喜がはじける。桜の「14」のジャージには安堵感が広がる。 「途中で足がつってきたけど、なんとかもってくれました。これもぼくのホシの強さですか。ははは。いや〜、疲れた。これでやっと、自分のプレイができます」 これで元豪州代表WTBのデビッド・キャンピージの記録を超えた。「まさか日本人に抜かれるとは思ってなかったでしょ。申し訳ない」。そりゃ、トライ数を世界と比べるのには無理がある。南半球や欧州のラグビー強国からみれば、日本が数多く対戦したアジアの国々は圧倒的にレベルが落ちるからだ。 まあ、でもいいじゃないか。妻の真理さん、長女の穂乃佳ちゃんも大喜びだ。ちょうど、母の日。「おかん、ありがと」と言われた母・妙子さんも涙ぐんだ。
覚えていますか、と聞くと、「もちろん」とはにかんだ。「まさか、10年後にこんなになっているとは思ってなかった。自分なんて、ちっちゃくて、大したプレイヤーじゃなかったのに……。ウイングなんて、周りの人にいかされてナンボのプレイヤーじゃないですか」 1999年W杯では英国カーディフの7万観衆の中、強豪ウェールズ相手にトライを奪った。見ているこちらが興奮した。目を閉じれば、今でもスタンドのどよめきが聞こえる。テストマッチ55試合で快足をとばし、トライを積み重ねた。 むろんラグビーは15人のチーム競技である。トライしたボールにはFW、バックスの汗のしずくが付いている。つまり、「ワン・フォア・オール、オール・フォア・ワン」の精神である。トライはチームメイトの信頼関係のタマモノなのだ。 「55通りのジャパンのメンバーと刻んできた記録なので、その人たちにすごく、感謝しています。この記録を一緒に喜びたい」 そういえば、日本協会から世界記録ボーナスの百万円をもらった。使い道を聞くと、愉快そうに笑った。「みんなのビール代に消えるんちゃいますか」 トライは感性である。嗅覚である。30歳。外見や言動から誤解されがちだが、実は一本筋が通ったオトコである。 子どものころは泣き虫だったのに、ラグビーを通し、自立したタフなオトコに成長した。『世界のオーハタ』になった。 「せっかく記録作ったんだから、誰からも抜かれないよう、100トライ目指したい。二度のワールドカップでは結果を残せていないので、次こそ活躍したい」 座右の銘は「成せば成る」。W杯はなにもサッカーだけではない。ラグビーのそれは来年秋、フランスで開かれる。 |








