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西村章●取材・文 text by Akira Nishimura
竹内秀信●撮影 photo by Hidenobu Takeuchi

第67号(2008年4月17日)【MotoGP】ロッシのチームメイト、ホルヘ・ロレンソの躍進〜ポルトガルGP

いやあ、驚いた。何が驚いたって、ホルヘ・ロレンソ(ヤマハ)のこの大活躍である。

今季から最高峰クラスMotoGPに昇格した弱冠20歳。開幕3戦連続ポールポジション、という記録だけでもたいしたものなのに、第3戦ポルトガルGPではレース中盤に後続を引き離して優勝を飾り、これで3連続表彰台(2位−3位−優勝)。さらにはランキングトップにまで躍り出てしまった。

昇格早々まさかここまで大活躍しようとは、おそらく本人以外の誰も想像していなかったにちがいない。

ロレンソは、昨年と一昨年に250ccクラスを連覇していることからもわかるとおり、小排気量時代から圧倒的な速さを持ち、思い切りのよい勝負度胸も備えた選手だ。しかし、その勝負度胸以上に有名なのが、根拠のないめったやたらな自信というか、傍若無人な向こう気の強さだ。

グランプリデビューは2002年の125ccクラス、年齢制限の関係で15歳の誕生日を迎えた直後のスペインGPからという変則的な参戦で、それだけ鳴り物入りの登場だったともいえるわけだが、このときのチームメイトが、じつは当時毎年チャンピオン争いを演じていた宇井陽一だった。

チームのエースは当然宇井なのだが、その宇井が「なんか知らないけど、子供のくせにやたら態度がでかいんだよ」と苦笑していたのは、今から思えば象徴的だ。

250ccにステップアップすると、ロレンソは同じスペイン人で年齢も近いダニ・ペドロサをライバル視するようになり、最高峰昇格が決まってからは、ペドロサへの<口撃>もますます激しさを増しはじめた。

一方のペドロサは、そんな誹謗中傷もどこ吹く風といった様子で相手にせず、それがますますロレンソをカリカリさせている、という格好だ。たとえていえば、『スラムダンク』の桜木花道にも似た「俺様No1」野郎のロレンソに対して、沈着冷静な流川君のようなペドロサ、とでもいえば、両者の関係がおわかりいただけるだろうか。

第2戦スペインGPの際には、観戦に訪れた国王フアン・カルロス1世から、レース後にトロフィーを授与された感想を訊ねられた際に、ペドロサは「とても栄誉に感じています」と答えていたのに対して、ロレンソは「国王はレース好きなんだから、サーキットにやってくるのは当然で、特に驚くようなことじゃないだろ」と平然と答えている。何に対しても物怖じしなさすぎる彼の性格を、非常によく表すエピソードだ。

さらにもうひとつ、ロレンソの立ち位置をますます微妙で面白いものにしてしまっていることがある。現在のチームメイト、バレンティーノ・ロッシとの関係だ。

ロレンソは以前から、自身のヒーローを訊ねられた際に、必ずマックス・ビアッジの名を挙げていた。ロッシにとって、これが面白いわけがない。ロッシとビアッジといえば、積年のいざこざや確執は世界的に有名な話だ。

ロッシの心中を察するにおそらく「オレの面前で何てことを言ってやがるんだ、この野郎は」とでもいったところだろう。さすがにロレンソもこのままではまずいと思ったのか、ヤマハからの最高峰クラス参戦が公表された昨年夏頃になると、わずかにそのトーンを変化させて「バレンティーノ・ロッシは世界で最も偉大なライダーだから、もちろん自分が最も尊敬しているライダーだ」といったようなコメントを発するようになった。

それでも、いまだにロッシとの間に冷たいすきま風が吹いているのは、関係者なら誰もが知っている公然の秘密、である。

とはいうものの、開幕早々の大活躍でこれだけの結果を出してしまえば、その生意気さも愛嬌にすら見えてくる。キャラが立ちまくったやんちゃな<俺様>ロレンソが結果を出せば出すほどGPファンからの注目も高くなり、今では、ロッシやペドロサともまた違う独特の人気を集めるまでになっている。

日本のゴールデンウィーク期間中に開催される次戦中国GPは、レースそのものに加えて、ロッシ、ペドロサ、ロレンソというこの3名の織りなす微妙な人間関係にも注目すれば、いっそう楽しく観戦できること請け合いである。

そうそう。中国GPといえば、例のチベット問題に関連してロッシがボイコットを提言している、というような無責任な誤報をどこかの大手スポーツ紙が掲載して日本のファンの間でもちょっとした話題になったようであるが、そもそも現場で自分が取材したわけでもなくよく知りもしないことを、いかにも見てきたような調子で書くもんだから、結果、大恥をかいてしまうんである。記事はちゃんと取材してから書いたほうがいいと思うぞ。やれやれ。


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