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西村章●取材・文 text by Akira Nishimura
竹内秀信●撮影 photo by Hidenobu Takeuchi

第64号(2007年11月09日)【MotoGP】ペドロサの地元優勝で、07シーズン閉幕〜そして08年へ

史上最多のスケジュール、年間18戦の掉尾を飾るバレンシアGPは、ダニ・ペドロサのホームグランプリ勝利、そして大逆転のランキング2位浮上という劇的なエンディングで幕を閉じた。

地元スペインのファンたちの狂喜乱舞ぶりは、13万2500人という決勝日の観客数とレース後に打ち鳴らされた爆竹の大爆発を見れば、それ以上の説明の要はないだろう。

第17戦を終えた段階でバレンティーノ・ロッシとペドロサの点差は24ポイント。レース前には、よほどの奇跡でもないかぎり、このギャップは埋まらないように思えた。しかし、その奇跡が起こった。

土曜午後の予選開始早々、ロッシが1コーナー出口で転倒、小指等右手3箇所を骨折、決勝は最後尾の6列目17番グリッドからスタートすることになった。

一方のペドロサは4戦連続となるPP獲得。骨折の痛みをこらえて決勝に臨んだロッシは、1ポイントでも獲得すればランキング2位を安泰にできる計算で、じっさい、レース中盤には14番手(2ポイント)まで浮上した。ところが、そこへマシントラブルが発生。悪夢のようなリタイアを喫する結果となった。

125cc、250ccクラスに続き、最高峰でも優勝を飾り、バレンシア完全制覇を達成したペドロサは、レースが終わるまで、自分のランキングが2位に浮上したことを知らなかったという。

「ウィニングラップを終えてパルクフェルメへ戻ってくるまで、2位になったとは思ってもいなかった。可能性はとても低いことがわかっていたし、期待もしていなかったから」

レースの翌々日に発売されたスペインの二大バイク週刊誌「Solo Moto」「Motociclismo」の両誌は、当然のようにペドロサが表紙を飾った。ウィニングラップの写真で<優勝、そしてランキング2位>と謳いあげる「Motociclismo」、一方の「SoloMoto」は満面の笑みで観客に手を振るペドロサと痛む右手を抱えて顔をしかめるロッシの写真を並べ、<未来と過去>と挑発的なコピーを配してファンのナショナリズムを煽りまくった。

ロードレース人気が年々過熱するスペインの、これぞまさに面目躍如である。

そんな熱に浮かされた決勝日から一夜明け、月曜日のバレンシアサーキットでは欧州のバイク雑誌を対象に、毎年恒例のジャーナリスト試乗会が開催された。各誌の契約ライダーや、あるいはケビン・シュワンツ、ランディ・マモラといったかつての名選手たちが07年仕様の各ワークスマシンをそれぞれ試乗する。日本からも辻本聡、八代俊二といった顔ぶれが試乗に参加した。

この日の現場にいる関係者といえば、試乗用マシンを準備、調整する5ワークスのスタッフや、ジャーナリスト、フォトグラファーたちくらいのもので、サーキットは昨日までの喧噪が嘘のようにひっそりと静まりかえっている。数分ごとにテストライダーたちがコースを周回するマシンの排気音も、かえって一帯の静寂を際だたせる印象すらあるほどだ。

パドックでは、すでにレースを終えたチームのトレーラーやホスピタリティが撤収準備を行ない、そこら中にある巨大なごみ箱は、どれも中身が山盛りで回収をひたすら待っている。

静謐ななかにも雑然とした、そんな風景の中で仕事の続きを片付けていると、長いようで短く慌ただしかったシーズンもようやくこれで終わったのだな、ということが、少しずつ実感できるようになってくる。

試乗会は、そんなのんびりした雰囲気の中で火曜の午前いっぱいまで行なわれた。

そして、昼休みを挟んで午後2時からは、これも毎年の恒例だが、翌年に向けたレース事後テストが早速幕を開けた。今季と同じ体制で来シーズンも走る選手はもちろん、新たに別のチームへ移籍した選手や小排気量クラスからステップアップしてくる選手たちもテスト用のツナギを着込んで、全員が新体制でのテストを開始する。

ブランニューマシンをシェイクダウンするチームや、ニューパーツを投入してさらにポテンシャルアップを狙うチーム等々、どこのピットを覗いても来シーズンに向けた緊張感に満ちている。

ジャーナリストやフォトグラファーがライダーやマシンの様子を観察しようとピット前に群がり、チーム側はそれを阻止すべく、ライダーがコースから戻ってピットインするやいなや、即座にシャッターを下ろしてしまう。

ほんの数時間前までの、のんびりした風情は一気に消し飛んで、もはや長閑さの欠片もみられない。

07年シーズンが終了したかと思う間もなく、すでに08シーズンが始まってしまった。近年のロードレースの世界では、くたびれることすらも贅沢の部類になってしまったのかもしれない。


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